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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
34/64

落ちる



「いやはや。さすがでございますお客様方。まだ試作中の試作であるアンドロイドをこうもあっさりと……」


 ケオズが手をパチパチと叩きながら御登場。と同時に殴ろうかと思ったがやめておいた。

 少なくともロピアルズの人間なのだ。簡単に避けられてしまう恐れがある。

 普通、そういう問題ではないのだが……。


「では、次に行きましょう」

「次!?」

「おっと口が滑りました」


 くっくっくっと笑いながら答えるケオズ。これは明らかに次も戦わせる気だ……。


「へぇ。次はどんな奴だ?」

「本来なればお客様方自身でいろんなことを実験したかったのですが……。カナ様の御命令もありますし、せいぜい対戦ぐらいしかできないことが、我々にとっては残念でならないんですがねぇ」


 じ、実験……?

 一体何をされるというのか……ボクは背筋を寒くさせた。


 そういえば先ほどからケオズ以外の誰とも会っていない。ケオズがあの羽根を渡した人以外。

 どこに隠れているのだろうか?

 気配も何もないし、ある意味不気味だ。


「……次はあの部屋?」


 また先ほどの様に大きな扉が見えてきた。


「いえ、あれはまた別ですね。あそこは企業秘密で御座います」

「つまりぶち壊して無理やり入れってことか?」

「くっくっく。その時は混沌である私が相手しましょう」


 本当なのか冗談なのか、分からないキリの言葉を冗談交じりに返したケオズ。

 研究者なのに戦えるのだろうかと思う。いや、ここは魔法を研究しているのだ。戦えないことは決してないだろう。



「さて……では皆様」



 そして立ち止まったケオズ。

 ボク等はそれに反応して慌てて足を止めた瞬間だった。




「ご自由にこのRMKをおまわりください」




 足元の通路が突如として開いた。




『!?』


 ボク達はとっさに飛ぶ魔法を使おうとしたが……。


「え!?」

「魔法が使えないですわ!?」


 マナとレナが使えないと叫ぶ中でボク達もそれを実感した。


「大丈夫ですよ。この通路とこの施設の壁は魔法を一切通さないだけですから。下に落ちた後はちゃんと使えます」


 ケオズの声と同時に自由落下をしていくボク達。

 結構高く、下が見えない。


「くっくっく。では、出口で会いましょう! お客様方!」


 ケオズがそう叫ぶと、今度は開いた扉のような、落とし穴の蓋が閉まっていった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ど、どうしましょう! まだ魔法が使えませんよ!?」


 先ほどからルナに呼びかけ、何度も魔法を使おうとも、すべてが無にされ、発動なんて全くされない。

 いまだに落ちているので、下がコンクリだったりしたらただでは済まない。


「ど、どうにかできませんの!?」

「ウチの〈炎翼〉も発動されない!」

「……無念」


 白夜がこう言う時でもふざけているかのように落ち着きながら言う。


「白夜さん武士みたいなこと言ってないで何かできないの?」

「……そういうソウナだって落ち着いている。……落ちているから?」

「「「「…………」」」」


 ソウナの場合は仕方ない。ディスがいるのだから。

 ボクの頭の中は白夜の言葉を完全に無視した。


「それよりも……棺と弦がいなくねぇか?」


 キリが話を逸らそうとすると、白夜が表情を変えずに答えた。


「……二人だけ開いた穴よりも後ろにいた」


 あの二人は助かったということか……ってボクのそんなことを言っている場合じゃない!

 何とか壁を斬り裂きながらなら落下のスピードが軽減できるかと思い、ボクは壁側による。

 ボクの行動を見て、みんなも壁側による。


「はっ!」


 ガァンッ! と刀を壁に突き立てるも、簡単に弾かれ、意味が無かった。


「チッ! リクの刀で無理なら俺達がやる意味ねぇな。これ、どうすんだ?」


 いまだに落ちている最中。

 不意にカレンが叫んだ。


「下が見えてきたぞ!」


 すごい勢いで下に迫っていくボク達。そして……。


「ああ……。何とか死なずには済むな」

「うん。だけど……」


 ボク達は肺に空気を一杯詰めて、目を瞑った。










 ――ド、ボォォォオオオオオン!!










「ぷはっ。はぁ……はぁ……」


 ボクはいち早く水面に上がる。

 ボクはお尻の部分から水の中に入ったので、お尻の部分がヒリヒリとする。かなり痛い。


「ぷはっ。…………。最悪ですわ……」

「まぁ……死なずに済んだだけマシだと思おうぜ」


 レナが不服な顔をして出てくると、キリがレナを慰める。

 それでも納得いかないのか、頬を膨らませている。


「……お腹から落ちた……」

「大丈夫か? 白夜先輩」

「……大丈夫じゃない。……かなり痛い……」

「私が後で治癒魔法をかけてあげるわよ?」

「……ソウナ、お願い……」


 次々と水面に上がっていく人達の中で……。


「あれ? マナちゃんは?」

「そんやぁいねぇな……」


 もしかして……溺れて!?

 そう思った瞬間、上から火の粉が降ってきた。


「ウチはここだよ~? 水面に着く瞬間に〈炎翼〉を使って水に濡れずに済んだの~」


 マナはボク達の上を飛んでいた。


「え? 水面に着く瞬間って魔法、使えたの?」


 ソウナが驚いたようにマナを見る。

 ボクは確かめようと、魔法を使おうとして……やめた。

 簡単にできそうなのは氷魔法だ。こんな所で使ったらみんな凍えてしまう。

 だからボクは岸を探す。


「……みんなこっち。……通路が続いてる」


 白夜が手招きする方に、ボク達は泳いでいく。

 ボクは先にレナやカレンに上がらせる。キリは自力で一人で上がり、ボクは白夜の手を借りて岸に上がった。

 服が濡れてかなり嫌な感触がするが、仕方が無いと思い、ボクは服をまとめて絞りあげた。

 脱ぐわけにはいかないので残念ながらあまり気持ち悪い感触が無くなったとは言えない。


「だけどこのままだと風邪ひくな……。レナ、頼むわ」

「仕方ありませんわね……。〈水流〉」


 レナが魔法を使うと、ボク達の濡れた服から水がどんどんと出ていった。その水は全部、元の場所に戻っていった。


「便利だな、その魔法……」

「これは本来、水を操って攻撃する魔法ですわ。その魔法を応用しただけにすぎませんわ」


 攻撃魔法を補助魔法のように使う事が出来るだなんて、そんな発想は考えもしなかった。

 他の攻撃魔法も補助魔法のように使える魔法があるのだろうかと少し考えてしまう。


「さて……それじゃあ、ケオズのお言葉に甘えて、冒険と行こうか」


 キリが嬉々として暗い通路を進んで行く。


「えっと。ウチ、火で照らしてった方がいい~?」

「魔力が勿体ないですわ」


 確かに。マナは魔力をそこまで持っていないのだから、いざという時に使えないと困る。

 では、このくらい通路を一体どうやって進めばいいのだろうか?


「何やってんだ? お前ら」

「仙ちゃんみたいに全員が全員。夜目ではありませんのよ?」

「いや。俺も夜目じゃねぇけどな」


 キリが足を止めながら答える。

 しかし、この状況、一体どうすればいいのか……。


 そう考えていると――パチ。


『!?』


 驚いて音のした方を見る。


「照明のスイッチって書いてあったから押したのだけど……。ダメだったかしら?」


 そこにはソウナがスイッチを前にしてこちらを向いていた。その顔は少し微笑んでいた。


「いえ。ソウナさん、そんなのどうやって見つけたんですか?」

「あのケオズさん。なんやかんやで優しそうだし、カナさんにあまり厳しいことはさせないという事が言われていたんだったら、どこかに照明があってもおかしくはないかなと思って」

「なるほど。それは盲点だったな。暗闇だと難易度は格段に上がるしな」


 ソウナの説明に、キリが納得して、そして説明に付け足しもした。

 そう考えるとこの先もそうなっている事がありそうだ。


 しかし……この先に何があるというのだろうか……。

 何があろうと、結局は悪い予感しかしないのだが。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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