vs機械(?)
歩くこと数分。他の人達と話していたのだからそこまで長くとは感じなかった。入ったのは大きな部屋。しかも周りには何かありそうな雰囲気を漂わせている。
「さてさて……着きました。シーヘル様とユウ様はこちらに……」
ケオズがシーヘルとユウをさらに奥の部屋に押し込む。
「……なるべく手柔らかにやらないと貴様の首は龍に食われる物と知れ」
「おぉ。怖い怖い。大丈夫ですよ。我々は殺しはしませんし、人格を無くすこともしません。それはロピアルズに入っていれば当然の処置だと思われますが。何をするかは、我々も勝手でしょう?」
「……チッ。だが、カナ様から言伝は聞いているはずだ」
「ええ、まぁ。安心してください。私共も、そのくらいは承知で御座いますよ。学生に何も死闘をやらせる気は我々もありません」
何やら部屋に入る前に二言三言話していたが、それがわからないままシーヘルとユウは奥に入っていった。
その後、ケオズは壁に寄って、壁を押して……って、え?
「さてさて……お待たせしました皆様」
「お待たせもクソもねぇよ。何だよ、その後ろに居んのはよぉ」
キリと白夜以外が口をパクパクとさせていた……。
なんせそのケオズの後ろにいるのは――。
「我々が作り上げた、アンドロイドで御座いますが? 正確には、まだ作り途中ですが」
「あ、アンドロイド……?」
「にしては大きすぎませんこと?」
レナがその大きさの疑問を口にした。
なぜなら、そのアンドロイドは大人の四倍はあろうかと思われる高さだったからだ。
「ふむ。先ほども申した通り、まだ発展途上なので大きさ、強さ、自我などはある神話に出てくる『電光王国』の足元にも及びませんがねぇ」
「電光王国~?」
はじめて聞く名に、マナが首を傾げる。
ボクも知らない。そんなのが出てくる神話なんて無かったような気がするのだが……。
「ああ。今のは忘れてください。所詮、知っているのは私とカナ様、後は真陽様にルーガ様ですから」
「……それなら私も知っている」
この時、初めて白夜が反応した。
「おや。知っていましたか? あと、何も喋らなかったのでてっきり話せないものとばかり……」
「……大丈夫。……いつものこと」
「しかし……どうして知っているのですかねぇ?」
「……古書、持ってる」
「何ですって?」
ケオズの雰囲気が変わった。それは誰の目から見ても明らかだった。
「貸していただくことは……」
「……無理」
白夜が一言で断った。そういえばボクがはじめて学校に来て二日目に見してくれるって言ってた。
あれ、ボクにはいいのかな……?
「そうですか……。仕方ないですねぇ。じゃあ、本題に入りましょうか」
ケオズは後ろを向き、アンドロイドに簡単な魔法を放った。
すると、アンドロイドの目が光り……動き出した。
「へっ。こんな所に来てロボと対戦かよ。潰しちまっていいんだろうなぁ?」
キリが拳を構える。するとケオズは振り向いた。その顔は笑っていた。
「結構! 破壊できるものなら破壊してみなさい! そのために私はここの部屋に入れたのだ!」
両手を広げ、そう叫んだケオズは――。
「コウゲキ、シマス」
――アンドロイドの攻撃で壁に吹き飛んだ。
「ええぇぇ!?」
「なんでケオズさんを攻撃したの!?」
ボクとマナが驚いて声をあげると、タフなのか、ケオズは何事もなかったかのように立ち上がった。
「なぜ私が……ハッ! そういえばまだ味方認識機能をつけていなかった!」
「いや、そこは初めにつけましょうよ!! 危ないですよ!? 早く止めてください!!」
「そういえばまだ停止機能をつけていなかったような……」
「ダメじゃないですか!! どうやって止めろっていうんですか!?」
「ふむ。やむおえない。お客様方、あれ、破壊しちゃってください」
「破壊しちゃってじゃないですよね!? えぇ!? それ、狙ってたんですか!?」
「いえいえ。単なるド忘れです」
「こんなのにド忘れも何もある訳ないでしょう!?」
ケオズに全くの反省色が無かった。
「それでは、皆様。御健闘をお祈りしております」
それを言うとケオズはすたこらさっさとこの部屋から出て行ってしまった。
「逃げた!?」
しかもカチャと鍵をかける音を鳴らせて……。
「リク君。今は漫才をしている時じゃないのよ?」
「ソウナさんはあれが漫才だというんですか!?」
「安心してくださいまし。機械程度。どうとでもなりますわ」
「そうですよね……。こっちには何人もいるんですもんね……」
ボクがホッと一息つくと、レナが続けて。
「アンドロイドがロピアルズ製でなければ」
「今目の前にいるのがロピアルズ製ですよ!? かなり不安になる言葉なんですけど!?」
ソウナはディスを構えて、レナはウィンディーネを側に寄らせる。マナもすでにファイアーバードを肩にとまらせている。
キリは完全に戦闘モードだし、カレンもダガーを数十個展開している。
「ふん。俺に機械風情が向かってきたことを後悔させてやる」
「棺。その格好ではあまり似合わないぞ?」
全員が全員して戦闘モードだった。いや、ただ一人……。
「……頑張って」
後ろで座布団を敷いてお茶を飲んでいるガンランスを横に置いた少女がいた。完全にくつろいでいる。
「白夜さんも戦ってくださいよ!」
「……私も?」
「まるで自分が戦う理由が思いつかないとでも言いたげですね!」
「……(コ――」
「頷いちゃダメでしょ!?」
「……じゃあ……私がたた――」
「言わせませんよ!? 絶対にボクが言ったことを少しマネしようとか思ったんでしょ!?」
「……リクちゃん。……どうすれば?」
「戦ってくださいよ!」
「……戦ったら影になってしまう病……」
「そんな病気ありません!!」
「……ヒスティマでは流行っている。……感染の心配はない」
「そりゃあ白夜さん独自の仮病ですもんね!」
「……仮病だとは決まっていない」
「それじゃあ何だというんです?」
「…………」
「決めていなかったんですね! そして仮病ですよね! やっぱり!」
「……仕方ない。……戦う」
やっとやる気を出してくれた白夜はガンランスを持つ。
そしてアンドロイドの方を向いて――。
「お? 何だリク。もう終わったぞ」
――ゴミ捨て場の様に粉々になった機械クズの上に、キリが立っていた。
「あ、あれ? いかにも強そうな雰囲気漂わせていましたよね?」
「ああ。攻撃は怖かったが防御とかスピードとかかなりしょぼかったからな」
ええぇ……。
一生懸命白夜を説得させて、そしてやっと白夜が動いてくれたと思ったのだが……って待って。
「もしかして白夜さん。このこと狙って……」
白夜の方に向きながら言うと、白夜はボクから顔を逸らした。
「……気のせい」
「絶対に気のせいじゃない! 狙ってましたよね!?」
「……さすがリクちゃん。……相手の思考を読む程度の能力」
「そんな能力ありません!!」
いや、ないと思いたい……。
ボクの切ない願いだった……。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




