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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
31/64

てい



「うぅん……。朝……か……」


 そう思ってベッドの中から抜け出すボク。

 窓にかかっているカーテンを開ける。


「ん……」


 入ってくる日差しが眩しく、手で影を作る。

 その後に櫛を持って長い髪を……って、え?


「あれ? 今ボク、指輪つけてないはず……」


 そう思って自分の手を見る。なのに指輪がついていて、しかも胸もある。そのことにおかしいと思いつつ、何気なくベッドに視線を移すと……。


「おはよ♪ リクちゃん♪ ……って、あら? どうして私の襟首を持つのかしら?」


 そして……。


「てい」


 窓を完全に開いて外に投げ捨てた。そして窓を閉める。星が見えたがボクは何も気にせず指輪を遠慮なく外した。


「もう♪ 何するのよリクちゃん♪」

「……今さっき投げたハズですが?」


 確かに星になった母さんが見えたはずだ。

 なのに、もう後ろにいるとはどういうことなのだろうか……?


「そんなことよりもリクちゃん♪」

「?」

「とうとうあの姿にも抵抗が無くなっちゃったのねぇ♪ 私は娘ができて嬉しいわ♪ 寝起きに驚いてうろたえる姿が見たかったのだけどそれはもう諦めるわ♪」


 …………おそらく……『女の子の体に抵抗が無くなったことに母さんは嬉しいわ♪』と言いたいのだろう。後者はそのままだと思われる。

 ボクは母さんのその言葉に、拳を握りしめて、プルプルと振るわせた。


 誰が……誰が……。


「誰がこんな姿にしたと思っているんですかぁ!! 向こうにいる時のお風呂どうしたと思っているんです!? 目にタオル巻きつけて絶対に見えないように体洗っていたんですよ!? その際にタオルが外れてしまって……そこから記憶が無かった日なんて何回もあったんですよ!? そのつど、ソウナさんに助けてもらっていたんですから! いつ戻れるかもわからないのに、いつまでもなれるなという方が無理ですけど、さすがに体を見ることにはまだ抵抗ありますよ!!」


 ボクはのんきにする母さんに激怒する。だが母さんはどこ吹く風で完全に無視していた。

 もっとも、女の姿で入ったのは向こうの世界に寝泊まりしたときだけである。つまり三日ぐらいしか記憶がなかっただけだ。


「まぁとにかく♪ 朝ごはんができたから降りてきなさい♪」


 そう言って母さんはボクの部屋から出て行った。

 それを確認してから、ボクは魔力を使い、母さんがどこにいるのかも確認する。

 とはいってもやはり確認したりするのはまだボクにはできないのでルナに任せる。


『うむ。カナは今キッチンにいるぞ?』


 それなら問題はないか。そう思ってボクは櫛で髪を梳き始める。それが終わると、棚から服を取りだして、ベッドに並べる。

 そしてボクはパジャマのボタンに手を――止めた。


「ユウ、何やってるの?」

「あ、あああれぇ? 気配とか……魔力とか……全部消したはずなのに……」


 扉の前から驚いて、慌てた声がする。

 ユウの考えそうなことだ。ボクが着替えている最中に「ご飯だよぉ♪」とか言ってワザと入ってくるに決まっている。

 そしてそれがわかったからこそ、ボクは扉の前にスタンバイしているであろうユウに声をかけたのだ。

 ユウは消したと言っていたが、残念ながらボクは気配とか魔力とはなんにも考えていなかった。


「早く下に行けば? 母さんがご飯出来たって言ってたよ?」

「う、うん。わかった……」


 しょんぼりとした声がしたかと思うと、ユウは扉から離れて下の階に向かった。


「はぁ。やっと安心して着替えれるね」

『妾とかシラとかツキは居るのだが……』

「中にいる限りボクの視界しかわかんないんでしょ?」

『…………うむ。まぁ今起きているのは妾だけじゃがな』


 それぐらい承知している。

 ルナは早起きなのだが、シラとツキはそうではない。シラは、夏だからか、あまり真昼間には起きない。ツキは月の女神であるため、夜行性で夜によく起きている。

 二人とも戦闘になれば起きて来てくれるので問題はない。

 ボクはなるべく自分の体を見ずに――ルナがボクの体を見ようとはしないと思われるが――パジャマを脱ぎ、服に袖を――。





「リク君? カナさんがいつまでかか――」





 ドアを不意に開け、中を覗いて固まったままになってしまったのはソウナ。

 ボクはまだ上の服しか来ておらず、下はまだズボンをはいている最中だった。

 完全にこの可能性を忘れていた……。母さんがソウナを呼びに行かせるなんてこと、絶対にやりそうなことではないか……。


「ご……ごめんなさい!」


 バタンッ!! と扉を強く締めて、ドタドタと騒がしい音を鳴らして降りて行くのを確認すると……。


『リク。これからはノックをするよう、呼びかけたらどうじゃ?』

「…………うん。そうする……」


 ルナの提案に、ボクは力なく頷いた……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「黒く燃える羽根?」


 ボクが昨日起きたことを母さんに話すと、母さんが羽根にハテナを浮かべた。


「これなんだけど……」


 そう言ってボクは黒く燃える羽根を取りだして母さんに渡す。

 それを唸りながらしばらく見ていると「見たこと無いわねぇ」って言ってボクに返してきた。

 母さんでもわからないのか……。

 ボクは少し落ち込みながら、肩を落とす。


「それにしても、この町が悪魔に……。大火事が起きた事は聞いたけどまさか悪魔の仕業だなんて♪ そして丁度リクちゃんがいた……。まるで行くとこ行くとこに事件が起きるコ○ン君みたいね♪」


 あの名探偵みたいには絶対になりたくない。

 ボクが欲しいのは平穏な日常だけなのだ……。

 どうしてこうも立て続けに事件が起こるのか。ボクが何をしたというのだろうか……。


「じゃあ黒く燃える羽根は魔法研究会に出して鑑定してもらうから持ってってくれないかしら?」

「……え? ボクが?」


 それだったら隣で珍しく黙々と食べているユウに行かせた方がいいのではないだろうか?

 そう思って視線をユウにやるけど、ユウは気づいて笑顔を見せるだけだった。

 ため息をつきながら母さんに向き合う。


「ちょっとお兄ちゃん!? ユウに何か言うことあるんじゃないの!?」

「ううん。大丈夫。さっきの笑顔でユウも行く気はないことが分かったから」

「がーん!」


 ショックを受けるユウだが、口で言わなくてもいいと思う。


「ということは……リク君。魔法研究会に行くということなの? 場所わかる?」

「だからユウに行かせようと思ったんですけど……ユウは絶対に行きそうもないですし……」

「そんなことないよ! お兄ちゃんの案内くらい、いくらでもやってあげるよ♪」


 屈託のない笑顔でそう言ってくるが……。


「つまり一人(、、)では行かないってことだよね?」


 サッとすぐに顔を逸らすユウ。


 これは絶対に何かある……。

 一人で行きたくない理由が絶対にあるということだ。


「それだったらリク君。私も行ってはダメかしら?」

「え? どうしてです?」


 ボクがそう聞き返すと、ソウナがわかりやすく説明してくれた。


「ヒスティマでは……というよりもライコウではね? 一番魔法の研究が進んでいるのがロピアルズ魔法研究会、通称(ロピアルズ)(魔法)(研究会)なのよ」

「ちなみにRMKにしたのは私がつけたのよ♪ 面倒だったからローマ字にしたわ♪」


 なるほど……。そんなに所なのにユウとかは行きたくない……。一体どうして……。


「だから私は一度は見て起きたのだけど……。ダメかしら?」


 見学がしたいとソウナは言う。するとユウは……。


「わかった! わかったよぉ……。案内するからお願いだからもっと大人数(、、、)にして!」

「へ?」

「ユウちゃん? それはどういう……」


 やっぱり意味がわからない。

 どうして大人数にしなくてはいけないのだろうか……。別に三人でもいいのではないか?


「お願い!」


 両手を合わせて必死に懇願するユウ。

 大人数にしなくてはいけない場所とは一体どういうところなのだろうか……。

 ボクが少し怖いと思いつつも、ユウのそのお願いに答えたのだった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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