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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
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軍事会にて2

視点雑賀ですよぉ



「あれ、寝虚ちゃんどうかしたの? こんな夜更けに……珍しいね」


 一緒に散歩に行って帰ってきたのが五時間前。もうすでに午後10時を過ぎていて、寝虚はいつもならとっくに寝ている時間だった。


「ううん~。何だか、嫌な予感がするのぉ」

「嫌な予感?」


 ベテランの予感というのは大体が当たりだ。

 カナから寝虚がベテランだというからこそ、俺は寝虚のその言葉に反応した。


「ねぇ雑賀ぁ。最近、おかしな事件があるって聞いたんだけどぉ」

「ああ、あるが……それがどうかしたのかな?」


 寝虚が俺を見上げて、眠たそうな半目で言ってきた。俺はなるべく寝虚の言うことは許可しようと思っていたが……。


「寝虚、動いちゃだめぇ?」

「それくらいかまわ……? 何だって?」


 寝虚が動くと聞いて、戸惑ってしまった。

 動くとはつまり……捜査に協力するということで……。


「寝虚ちゃんまだ子供だし……そういうことは俺達に任せてもらえれば……」

「いやぁ。寝虚、動くって決めたのぉ」


 寝虚は決めたと言うと、俺の膝の上から降りてまた俺を見上げた。


「だめぇ?」


 そう寝虚が言う中で、俺は頭の中でいろんな事を考えていた。

 まだ小学生ぐらいの年だとはいえ、軍事会に入っている寝虚。だが、捜査に協力してくれるとしても彼女が足を引っ張る可能性もある。

 なにより、彼女の潜在能力を知らないという点があることで、俺は彼女が動くことに疑問を抱かざるを得ないのだ。

 そこで、俺はある一つの提案を思いついた。


「じゃあ寝虚ちゃん」

「ほわぁ……?」


 丁度あくびをしたときに俺が言ったので寝虚は返事ができず、そのまま首を傾げた。


「俺と妃鈴二人を寝虚ちゃんが倒せたら、動いてもいいことにしよう」

「ほんとぉ? じゃあじゃあ、今から倒すぅ」


 両手をあげて、バンザイをする寝虚。やはりこの子が軍事会に入るほどの力を持つとは到底思えない。


「ここじゃなくてね。下の階にある、訓練場でやろうか」

「わかったぁ。じゃあ、妃鈴を早く呼んでぇ。寝虚、先に訓練場にいってるねぇ?」


 そう言ってトテテテと、走り去っていく寝虚。

 やれやれと思いながらも、俺はパトロールに出ているはずの妃鈴の携帯に連絡をする。


『天童さん? 一体どうしたんですか? 書類は片付きましたか? というよりも、仕事はしていますか?』


 開口一番の言葉が俺の仕事の心配だとは……。

 そのことに落胆というか、仕事に関して信用されていないことを残念に思いながらも、俺は妃鈴に言葉を返した。


「いや、それどころじゃなくてな……」

『仕事と襲撃以外の事であれば、私は即座に天童さんの後頭部を盾で殴ります』


 …………盾は殴るものじゃないと思うのは俺だけか……?

 いや、妃鈴はそうでもしないと銃が使えない時は攻撃できないということになってしまうんだけどな……。

 そして、俺は仕事と、襲撃以外のことではないと考えた。


「寝虚ちゃんがな?」

『待っていてください。今すぐに殴りに行きますから』

「ちょ、それどういう意味だ!?」


 電話越しに殺気をとばしてきた妃鈴にすぐさま言葉を返す。このままでは俺の命が危ない!?


『仕事と襲撃以外と私は言いました。寝虚ちゃんは関係ないハズです』

「いや、それが……というか最後まで聞いてくれ!」

『はぁ……仕方が無いですね……。少々お待ち下さい』


 そう言って妃鈴は電話と切った。そして数十秒後、軍事会の仕事場の扉が開いた。


「寝虚ちゃんがどうかしたのですか?」

「いや、それよりもどうやってこの数十秒の間に戻ってこれたんだ……?」


 そっちの方が俺にとっては謎だった。もしかして、丁度戻ってきていたところだったのだろうか。いや、まだパトロールの時間なはずだ……。


「私の事はどうでもいいのです。早くしてください」

「ああ。寝虚ちゃんがな、このおかしな事件の捜査に協力したいって言ってきたんだ」

「それは……。まさか許可をしたんですか?」


 妃鈴の目が俺を睨む。


「いや、さすがの俺も許可をしようとしたら戸惑ったさ」

「…………」


 今度は俺を見る目がジト目になった。


「だから、寝虚ちゃんが俺と妃鈴同時相手に勝ったらいいぞって言ったら喜んで訓練場に向かっちゃってさ……」

「天童さんは女の人にホントに甘いですね……。それが幼女でも敵でも」


 言い返す言葉が無い……。

 だが、女の子を大切にするのは当然のことだと思われる。


「私には優しくしてくれたこと一つも無いのに……。誰のために頑張ってると思って……」

「? 妃鈴、何か言ったか?」

「な、なんでもありません! 気にしないでください!」


 は? と口を開けたままになってしまった。


「と、とにかく! そう言う話なら今すぐに訓練場に行きましょう。あまり痛くないような攻撃をして、諦めていただきましょう」

「そうだな」


 妃鈴が少し歩くスピードを上げて扉から出て行ったので、俺もその後を着いて行った。


 歩くこと数分で訓練場についた俺と妃鈴は、揃って口を開けてしまった。

 なぜか? それは、訓練場だと思われる場所がなぜかベッドルーム。つまり寝室のようになっていたからだった。寝虚を探そうと思ったが、その必要はなかった。

 寝虚はその寝室のベッドで寝ていたからだ。

 だが、俺と妃鈴がその寝室に入ってくると、寝虚はあくびをして目をこすり、起きてきたのだ。


「あぁ。雑賀遅いよぉ。寝虚やること無かったから寝室に改造して寝ちゃってたんだよぉ?」


 寝ちゃってたんだよぉ、じゃないだろ……。これは……。

 暇で出来るようなことではない。一体彼女はどんな魔法を……?

 造形をこうも簡単に変えてしまえる様な魔法は、大人でもそう簡単にはいかない。

 軍事会なだけはあるということか……?


「じゃあじゃあ、すぐに初めよぉ」

「あ、ああ……」


 いまだに戸惑う俺と妃鈴を置いてけぼりにして、寝虚はその手に一つ、クマのぬいぐるみを顕現した。


「我が名は雑賀――」「我が名は妃鈴――」


 いつまでも混乱しているのはらしくない。

 俺と妃鈴はそう考えて武器を顕現。


「あれぇ? 雑賀と妃鈴はロストじゃないんだぁ。軍事会に(、、、、)入ってきた(、、、、、)からどんな(、、、、、)ロスト(、、、)なのかなぁって思ってたんだけどなぁ」


 ロスト? 軍事会に入る?

 それはつまり……。


「俺と妃鈴以外は全員ロスト使いって事か……?」

「あれぇ? 知らなかったのぉ?」


 一言も聞いていない。それはわざとなのだろうか。それとも……いや。カナが伝えてきたのだからわざとなのだろう。


「でもすごいんだよぉ? ロストじゃないのに軍事会に入れるなんてぇ。二人コンビでも軍事会に入ったことのある人なんて寝虚しらないもぉん」


 それは寝虚がまだ幼いからだと思われるが……。


「天童さん。手加減というものが、できそうにありませんね……」

「したらむしろ、俺達に命の危険がありそうだな……」


 寝虚のロストを知らない。そしてロストにどういう種類があるか知らない俺達には、勝つことができないかもしれないと思われる。

 だが、勝算はゼロではない。それならばと思い……。

 俺と妃鈴は寝虚に戦いを挑んだ。



 その結果と言う訳ではないが……。


「わぁい。これで寝虚、動いていいよねぇ?」

「あ、ああ。そうだな」

「一体、何が……」


 全力で戦った。だが、寝虚には何一つ効かず、たった数十分で勝敗が決められた……。


 この後で、カナに聞いたところ……。


「ええ。軍事会はあなたたち二人以外ロスト使いよ? だから人数もいないのだけど……。え? 寝虚ちゃんと戦った? ふふふ♪ 寝虚ちゃんにあなたたちが勝てるハズ無いじゃない♪ あの子、ロピアルズでの実力(、、)ベスト(、、、)10(、、)に入るわよ? 数十分持った方がすごいと思うわ♪ そんなことよりも、あの【眠り姫】である寝虚ちゃんが動くのねぇ……。これは少し面白くなりそうね♪」


 と笑って答えていた……。


 寝虚の二つ名、【眠り姫】というのか……。


「天童さん。注目すべきところはそこでは無いと思います」


 妃鈴の冷たい言葉に、俺は少し落ち込んだ。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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