ゲームセンター
「これで大体は回りましたけど、どうでしたか?」
後はゲームセンターで時間を潰すぐらいだろう。そこまで大きくは無いが。
ボクはキリに訊いてみると、キリは楽しそうに返してくれた。
「そうだな。一番わかったことはリクの愛され度か」
「なんです、それ!? どう考えても町と関係ないですよね!?」
「関係なくは無いだろうけどな……」
「それ、どういう意味ですか……?」
キリの苦笑いを見ると、関係ないって言った自分の言葉が信じられなくなる。
「まぁ、退屈しなさそうな町で俺は好きだな」
「ありがとうございます、キリさん」
自分の町を褒めてくれる。それは町に住んでる人ならば嬉しい事この上ないだろう。
「まぁ、その退屈しない内の一つはきっとカナなんだろうけどな」
「あははは……。この町で母さんを知らない人って言ったら多分いないですからね……」
そう。別に母さんはこの町の町長という訳ではないのだが、母さんはイベントをこよなく愛す。
あることを思いついては、この町でイベントをしまくるので、この町の人は全員が母さんを知っている。ちなみに町長はその母さんの行動を良しとしているため、大体のイベントは開催されてしまう。
そしてその息子と娘である――ここ大事です――ボクとユウのことも、大体全員が知っている。
そしてボクもそれなりに覚えている。
「じゃあ後はゲームでもして、遊びますか?」
目の前にゲームセンター。この町唯一のそれに、平日は町中から人が集まってくる。
だが、休日はこのゲームセンターに来たりする人は少数だ。なぜかというと、ここのような小さな町よりも大きな町の方、つまり都市に行けばこのゲームセンターに行かなくとも楽しめる場所が多いからだ。
「ああ。そうだな。リクはよくやんのか?」
「ええ。まぁ……。ユウとよく」
実際、ユウにはよくここに付き合わされていた。
平日も休日も、他の町のゲームセンターに行くのではなくて、この町のゲームセンターに来る。
「じゃあお手並み拝見ってとこか」
キリが嬉々としながらゲームセンターに入っていくのでボクもその後に続いた。
中はそれほど広くないゲームセンター。休日だからか数人しかいない。
それも小学生ぐらいの子供や老人などだ。
小学生ぐらいの子供はカードゲームなどを持っていて、ゲーム機を使わずにそれで遊んでいる。テーブルが一応置いてあるので難なくゲームが開催することが可能だ。
そしてボク達がまず最初にする物は……。
「よし、まずはエアホッケーな」
「望むところです」
キリは反対側行ったのを確認してお金を入れようとした時……。
「お、リクちゃんじゃないか。何だ? これやるのか?」
「ええ。そうですけど……」
この店の店長である人が気軽に声をかけてきたので、ボクはそれに答える。
「チョイ待ってな。リクちゃんだったら特別だ。よく来てくれるし、彼氏も一緒みたいだからな」
微笑しながら言う店長に、ボクは否定をする。
「だから彼氏じゃないですって……。ボクもキリさんも男の人ですよ?」
「ここまで噂が広まってんのかよ……」
キリは完全に呆れかえっていた。
それにしても特別って何を? と思っていたら、エアホッケーがお金を使わなくても機動した。
「え? これ……」
「リクちゃんには感謝しきれねぇくらい恩があるからな。これくらい大丈夫だ。今度からリクちゃん来たら言ってくれ、な?」
「でも、ボク恩なんて売ってないですよ……?」
毎回ユウに付き合ってきていただけだし、別に……。
「いやぁ。リクちゃんが平日だけでなく、休日も来てくれるおかげで………おっといけねぇ。これ以上は企業秘密だ」
田舎の町の、ゲームセンターに企業秘密だなんてあるんだろうか?
「でも、ボクだけ特別扱いだなんて……」
それでは周りの人が納得いかないと思うのだが……。
周りを見てみると、サッと顔を背ける人が多数。
今までこちらを見ていた人達だろう。小学生の子供から老人まで大人数が見ていたと思われる。視線も感じていたし。
「大丈夫大丈夫。ほら、好きに遊んで行きな」
そう言って店長はボク達から離れて行った。
「えっと……よくわからないんですけど……」
「俺はなんとなくわかったけどな。まぁそんなことはいいだろ。やるぞ」
キリはわかったようだが、ボクにはさっぱりだった。どうしてキリにはわかってボクにはわからないのか……。
そしてキリはマレットを手に持って、テーブル上に置く。
「始めるぞ」
「いつでも来てください!」
ボクもマレットを持ち、テーブルに置くと、最初のパックがボクの方に入ってきた。
「えい!」
ボクはそのパックを斜めに打ち、外郭を利用して反射させる。
「ほっ」
それを難なく返してきたキリ。パックはまっすぐにゴールに向かっていたので、ボクは少し速く打ち返す。また外郭を利用したのだが、キリはさらに速くさせてまっすぐ打ってきた。
「って速っ!?」
それでもなんとか返したのだが、今度は外郭には当たらずにまっすぐ返った瞬間だった。
「もらい」
カァンッと音を鳴らして横に移動していたキリが力強く打った。打たれたパックは外郭を一回弾くと、綺麗にゴールに入っていった。
「ああ!?」
「悪いな。よく昔やってたもんで」
ひ、ヒスティマにもエアホッケーってあるのですか……。
かなり疑問に残ったが、それならこちらも遠慮はしない。
「今度はボクが取りますからね!」
「やってみろよ、リク」
そこから、壮絶な戦いが始まった――。
「ど、どうして取れた点数が8点……」
「いや。レナよりはかなり取れてるから俺も面白かったぞ?」
25点先取の結果。25‐8でボクの負けだった。
ユウといつも打ち合って、大体ボクが勝ち越しをするのだけど……まさかここまでの惨敗をするとは思えなかった……。
「次は何する?」
「なら……あれです! 卓球で勝負です!」
「へぇ。このゲームセンター、卓球まであんのか」
いくら田舎と言ってもココのゲームセンターはそれなりに広い。ビデオゲーム、メダルゲームはもちろんのこと、卓球、バッティングセンター、PKゲームなど、体を動かすゲームもたくさんあるのだ。
卓球。
「はっ!」
「おらよ」
7ゲームマッチで4‐1で負け。
バッティング。
「いっけー!」
「おせぇ」
10球中、どちらが最大のスピードのボールを多く打てるかで……。ボク、10球中4回。キリ、10球中9回で負け。
PK。
「あ! ボク、サッカーってあんまりやったこと無かった!」
「…………アホ?」
負け。
「…………どうして勝てないんですか……」
「いや、リクは強ぇと思うぞ? レナよりは」
体を動かすゲームは完敗。しかも全部圧倒的な力の差を思い知らされた。
「なら……今度はビデオゲームで勝負です!」
「いいぜ。格闘もレースもいろいろあるみたいだし、何からだ?」
ならば最初は……。
格闘。
「ちょ、コンボ決まりすぎじゃないですか!?」
「これくらい楽勝」
完敗。
レース。
「あれ!? キリさんの車、ボクよりも性能が下ですよね!?」
「性能よりもドライバーのテクニックってな」
完敗。
「どうして勝てないんですか……」
完全にボクの中の自身が無くなってきたような気がする。
「じゃあ手加減するか?」
「そんなことしたら本気でへこみます……」
「だろ?」
キリが変なことを訊いてきたので落ち込む。
「仕方ないです……ボクの一番の得意なゲームで圧勝します!」
「ほう。どれだ?」
ボクは何の迷いも無く、そのゲームのところへ向かう。
ついた場所にあったゲームはというと……。
「へぇ。太○の達人か」
「五回の内、先に三回得点が多かった方の勝ちです! どうですか? やりますか?」
これまでの勝負で惨敗し続けた事もあってか、少し挑発的にキリを誘う。
そのボクの挑発を、キリはにやりとしながら受け取った。
「言うな? リク。その挑発、受けてやろうじゃねぇか」
そして、ボクとキリはそれぞれバチを持って、太鼓に向かい、ゲームを始めた――。
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