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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第二章 赤砂学園と月光
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月の契約


 ボクは地面を踏みしめた。

 それも、身体強化魔法を押さえる必要もなく最大で発動させながらの跳躍だったので、その速さは一瞬で音を超えた。


「来たね。あたしの名はわかったんでしょうね?」


 キィンッ! と一際大きな弾きで、白夜とキリの攻撃を止める。


「チッ」

「…………」


 キリと白夜は同時に下がる。

 そしてボクがそこに斬り込んだ。刀と刀の甲高い音を鳴らしてお互いの刀を弾く。


「貴女の名前は〝セレネ〟! ギリシャ神話の月の女神!」


 それを彼女が聞くとにぃっと笑った。


「正解! なら、次は実力を見せて!」


 それを叫んだ瞬間。


「これは!?」

「……?」


 キリと白夜が少しづつ薄れて消えていった。


「い、一体何をしたんですか!?」


 ついそう怒鳴ると、彼女は「安心して」と言って続けた。


「今のはこの世界から元の世界に戻しただけだから」


 それを聞くと、ボクは心からホッと息を吐いた。そして試練を続行させた。

 ボクと〝セレネ〟が刀を弾き合い――。


「〈レーザー〉!」

「〈フローズン・ランス〉!」


 ――魔法でぶつかり合った。


 それぞれの魔法は均衡して、爆発を生んで打ち消し合った。


「〈火弾〉! 〈火球〉!」


 そこを後ろからの炎の魔法が狙って飛んできた。マナの魔法だろう。と言うことはマナは地球に還っていなかったということだった。


「フッ!」


 だが炎の魔法は簡単に刀で切り裂かれた。ボクは振り抜いた瞬間に〝セレネ〟に水平斬りをした。それは身を低くして避けられ、斬り上げを放ってきたのでボクは横に身を逸らす。


「〈火弾〉〈火連弾〉!」


 身を逸らしたボクのいた場所を刀が通ったと思うと今度は炎が通っていく。


「〈ムーンライト〉」


 〝セレネ〟はそれを月の形をした壁で吸収したかのように見えた時だった――。


「お返し」


 ――先ほどよりも強い炎の魔法がマナに向かって放たれた。


「――ッ!?」

「マナちゃん! 横に跳んで!」


 ボクの声を聞き、マナは慌てて避けるが、〝セレネ〟はマナに向かって跳躍して攻撃を放っていた。


「〈シャイン〉」


 光の魔法がマナに跳ぶ。


「〈火球〉!」


 マナは炎の魔法で応戦するも、残念ながらマナの放った魔法がいとも簡単に飲み込まれた。


「させない! 〈二の太刀 雪麗〉!」


 身体強化魔法。そして一時的に爆発的に強化される〈雪麗〉を使い――ズドンッ。

 ボクは地面に亀裂をつけて瞬時に〈シャイン〉とマナの間に着くと同時、刀を振って〈シャイン〉を強制解除。そしていまだに続いている〈雪麗〉を利用して〝セレネ〟に連続の斬撃を放つ。


「これは危ないかも……。〈ムーンカトプロトン〉」


 目の前に先ほどの月の形をした壁と似たような魔法を使った。

 だけどボクは、そんなのとは関係なしにそのまま突き進んだ。

 なぜなら……ルナは魔法は効かない!


 ザンッ――。


「!?」


 ボクが魔法を切り裂くと、〝セレネ〟は慌てて空に羽を出現させて飛ぶ。

 そこで〈雪麗〉が切れて追撃しようとしていた足をとめた。


「はぁ……はぁ……」


 さすがに身体強化魔法最大力と〈雪麗〉の合成は体に堪える。息が上がってきてしまった。


「今……物理に類する攻撃は吸収して返す魔法を……物理で強制解除(キャンセル)……。まさか……」


 ブツブツとつぶやく彼女。

 こちらの神様の名前がわかってしまったのか。そうだとしたら少し戦いにくくなる。


「マナちゃん。大丈夫?」

「う、うん……。なんとか……」


 不安げな顔で、そう答える。


「……それにしてもおかしい……。貴方以外の人間は元の世界に還したはずなのに……あたしのミス……?」


 そんなマナを〝セレネ〟は自分に確認するように言う。それでもわからなかったようで「まぁいいや」と考えを振りはらった。


「さて……そろそろ最後にしよう。君の力もある程度わかったから」


 そう言うと、彼女は両手を広げる。

 それぞれの掌に、強大な魔力、そして光が集まっていく。


「これを受けきる。もしくは防ぐ。もしくは反射させる。このどれかができたら晴れて契約できるってことだけど……どう? やってみるだけの覚悟はある?」


 そうやって確認してきた〝セレネ〟に、ボクは強く頷いた。


「ふふっ。いい度胸ね」


 そう言うと、さらに強大な魔力が集まっていく。先ほどよりも早く集まっていくことにより、神の力を思い知る。


(……でも、防げない訳じゃない)


 シラと、そして魔術の神、〝ヘカテ〟がいる。大丈夫と自分自身に喝を入れる。


「り、リクちゃん……」

「大丈夫です。マナちゃんは下がってて……」


 そう言うボクの背後で、マナは顔を苦くさせた。

 それに気づかないボクは、すでに迎撃するために魔力無効化させるルナの力を最大まで引き上げた。


「〈クリスタルシールド〉」


 シラの魔力を借りて、前にシラ自身が使った〈クリスタル・ライトウォール〉ほどの耐久力は無いが、ボクが今使える防御魔法がこれくらいでそれでも強度は高い。だが、ソウナの足元には及ばない……。

 その魔法をマナの前に守るように放ち、ボクは上から来る高度魔法の完成を見届けた。

 光がどんどん集まっていくことにより、ついに一つの魔法が完成する。


「〈ルナ・キャノン〉」


 それは光の奔流となって、ボク達に降り注いだ。


「ルナ! 全力で消すよ!」

『うむ。思いっきり振れぃ』


 そして光の奔流にぶつかる寸前、ボクは刀を斬り上げた。


 そして――ザ、パァァァアアアンッ!!


 当たった瞬間、少し抵抗を感じた物の、少し進み始めたら何なく、魔法を一刀両断した。


「ふふっ。見事!」


 一刀両断した魔法の奥から、どこから取り出したのか、扇子を持ってボクを褒めたたえる彼女の姿が見えた。


「名前は何て言うの?」

「赤砂リクって言います」


 近づきながら聞いてきた彼女にボクは名前を素直に答える。


「へぇ。リク……リクか……。わかった」


 パチン。そう鳴らして閉じた扇子を魔力の粒子に変えて消す。

 その後に、ボクの前に立った彼女は手をボクに向かって広げた。



「あたしは月光に潜む月の灯り。

 ――神〝セレネ〟。今宵の闇を照らす光。

  ――汝、契約せんとする者〝リク〟。……ここに契約を結ぶ」



 彼女が言いきった時だろう。ボクの右手の甲が痛み始めた。

 これは、ルナやシラの時と同じ……。おそらく、神の契約者と言うことを表す紋章を体に刻んでいるのではないかと思った。実質、ボクの右手の甲には紋章の光が現れた後、痛みとともにその紋章も消えていった。


「さて……契約成立だね。これからよろしく頼むよ? リク様?」

「えっと、ボクのことはリクで良いよ。名前は……」

「いいよ。好きに決めちゃってさ」


 うぅん。何がいだろう……。月に関することだよね……やっぱ。


「あ。じゃあそのまま、ツキじゃダメかな?」

「ツキ? 大丈夫だよ。じゃあこれから神の断片であるあたしはツキって名前だね。改めてよろしくね。リク」

「うん。ボクの方こそ、よろしく」


 そして、名前も決めたところでボクとマナはこの世界から元の世界へと戻っていった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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