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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第二章 赤砂学園と月光
18/64

元ジーダス幹部達は……


「う、うぅん。はふぅ」


 背伸びをするボク。その隣に真一、マナ、ソウナがやってくる。


「どうした? そんなに背を伸ばして。もしかして小さい身長を伸ばそおぶっ!!」


 適当に拳をねじ込んでおく。理由はボクが背を気にしている事を知っているからこその真一の言葉なのでねじ込んだまで。


「リク君。もう昼休みだし、食堂に行かない? 他のみんなも行っていると思うから」


 最初は普通に喋ってボクを誘い、後の言葉はボクにだけ聞こえるように言ってきた。

 キリやレナ、白夜のことだろう。

 でも、どうして三人はボク等と同じクラスじゃなかったのかな……?

 そのことを疑問に思ったが、いまさらだろう。


「なんだ? 食堂に行くのか? それじゃ、俺も今日は食堂で弁当食べようかな。飲み物は買うけどな」


 そうしてカバンの中に入っている財布を制服のポケットに入れて弁当を持ってくる。


「ウチもそうしようかな~」


 昨日や、今日の朝は元気がなさそうに見えたマナもカバンを席から持ってくる。


「じゃあ行きましょうか」


 ボクもカバンを持って教室を出る。

 食堂まではそう遠くないのですぐに着くことができた。


「あ、リクさ~ん」


 食堂の入口で中を見わたしたところ、外側にあるテラスの方からレナが手を振る姿が見える。

 ボクはそちらに歩を進めようとした時――。


「?」


 入口の方を見る。

 扉の影からボクを覗いている(?)蜜浦南を見つけてしまった。

 何やら戸惑っているようで、ボクをちらちらと見ている。

 ボクはそこで、一つ思いついたことを実行しようと、南に近づいて行く。


「!?」


 こっちに近づいてくると思ったのか、南は体を硬直させ、直立不動になる。

 なぜか顔もかなり緊張している。そして少し赤くなっていた。


「えっと……ボク達と一緒に食べますか?」

「!? よ、よろしいのですか!?」


 いちいち反応が大げさすぎやしないだろうか……?


「まぁ、人はたくさんいた方が盛り上がると言いますか……。食べ物だっておいしくなるでしょう?」


 そう笑顔で言ったところ……。


「そ、そんな恐れ多いことを……こと……を……」


 ドサッ。


「あれ!? 蜜浦さん!?」

「はぅぅ……」


 また幸せな顔で倒れてしまった南。


「ほっとこ、リクちゃん」

「ダメよマナさん。こんな所に置いておいたら邪魔よ? 保健室に寝かせましょ」

「それもそっか」

「待ってください。まるで蜜浦さんが邪魔ものみたいに言っていますよ!?」

「「邪魔だもん」」

「二人とも!?」


 かなり即答で返ってきた回答にボクは驚く。ソウナとマナはなぜか意気投合していた。


「ライバルは一人でも少ない方がいい……」


 そう低く言ったソウナの言葉に……。


「第一、話す事もままならないなんて脱落組は近づかなくていいと思う……」


 ユウがボクや他の人に聞こえないようにソウナに耳打ちをした。


「あらユウちゃん。遅かったわね」

「あはは♪ ユウのいる中等部はここからちょっと遠いからね♪」


 笑顔で出てきたユウ。その隣には……。


「え!? 幹部長!?」


 そうやって、つい叫んでしまったボクは幹部長の手により、すぐに口を押さえられた。

 横で真一が「幹部長?」って顔をしている。

 幹部長が顔をボクの顔の数センチまで持ってくる。


「私はもう幹部長ではない。名前は劉璃華蓮だ。カレンでいい」


 そう言うと、カレンは元の位置に、静かに離れて行った。

 ……どうやら今は完全に赤砂学園生徒になっているらしい。赤砂学園の制服を器用に着こなしている。

 頭には赤砂学園指定帽である、ふんわりした赤色のチャーム付きベレー帽をかぶっている。

 だけど……。


「えっと、帽子深くかぶりすぎじゃない……?」

「う、うるさい! 私はあまり顔を見せたくないのだ……」


 頬を染めて、帽子を深くかぶるカレン。あの戦闘で見たような鋭さは完全に皆無だ。今はどちらかと言うと恥ずかしがりやな女の子に見える。


「と、ともかく今すぐに向こうに行くぞ。こんな所に立っていたら目立つではないか!」


 カレンの提案の元、ボク等は待ちくたびれていたレナ達と合流する。


「はぁ。いつまで待たせるんですの。呼んでから、かなり待たせてますのよ?」

「ごめんなさい。次々とハプニングが……」

「ま、いいだろレナ。それより早く飯買ってこいよ。ここ、向こうみたいにすぐにでねぇだろ?」

「……(コクコク」


 それもそうだった……。

 よく見ると、キリ、レナ、白夜はもうすでに注文してあったようだ。


「そうですね……。じゃあボクはご飯を買ってきますので……」

「おっと、リクちゃん。俺も行くぜ」

「私も」

「私もぉ♪」


 真一とソウナとユウは、ボクの後を追ってきた。

 ボクは普段、弁当なのだが今日は違う。

 桜花魔法学校の食堂の料理の味を覚えてからと言うもの、弁当をあまり作らなくなってしまったりしていた。ユウと母さんの弁当以外。

 ちゃんと作らなきゃと思うのだが、今日ぐらいは見逃してくれるだろう。

 ご飯を頼むと、魔法学校の食堂よりも、かなり遅く出てきたのでやっぱり弁当の方がいいかなと思ってしまう。

 料理が出てきたので、それを持って戻っていく。


「……戻ってきた」

「やはり向こうの方が格段に早いですわね……」

「向こうと比べんなよ」


 苦笑しながらツッコムキリ。

 確かにと言いたいところだが、ボクも脳内で比べてしまっていたのであえて何も言わない。


「そう言えば、カレンさん」

「私の方が年下のようだし、呼び捨てでかまわないぞ?」

「分かりました。カレンが赤砂学園に居るのはどうしてなんですか?」


 ボクは元ジーダス組がそれぞれどうなったのかは何も聞いていない。だからこそ聞いたのだが……。


「私はユウの監視下に置かれたのだ。おかげでほぼ四六時中一緒に居る。気が休まる時間が欲しいな……。四六時中ユウの相手は疲れるからな」


 肩を落としてそう言ったと思うと、食べ物を口の中に運んで行った。

 ボクはカレンの言葉に少し同情をしてしまった。母さんに絡まれるソウナよりはまだ楽だと思われるが。

 でもそこまで嫌では無いのだろう、少し楽しそうに言っていた。


「じゃあ他の人は?」

「トップ2だった弦は……」


 チラッと横目でキリを見る。

 キリが何か関係があるのだろうか……?


「はぁ。俺が家に居たくない理由だけどよ、リク」

「?」


 話してくれるのかな? そう思ってボクはキリが元気が無い理由を聞いた。




「家にメイドが来てな……。あまりの変わりっぷりに怖くて逃げだしてきたんだ……」




「…………はい?」



 一割も理解ができなかったボクが聞き直した。


「だから家にメイドが来たんだよ……」


 ……訳がわからない……。どうして家にメイドが来るの……?


「えっと……そのメイドさんは知っている人だったのかな?」

「知ってるも何も……俺がジーダス攻略戦でブッ潰したトップ2様だよ……」


 …………ん?

 それって……。


「つまり……弦さんだったってこと……?」


 こくり。そうやってキリが頷いた。

 ボクは姿を見てないし、知らないから弦のことはあまり知らないのだが、少なくとも男だと聞いていたハズだ。

 メイドとして来るだなんて……おかしくないのかな……。


「他に……ゲイザーと亮はロピアルズ料理会でだったかな」


 ゲイザーと亮……。亮は記憶に残っているが、ゲイザーのことはあまり記憶に残っていない。……っというよりあまり話しても戦ってもいない。

 ほんの少し戦っただけでルナのダメージが残っていたゲイザーは早々に戦闘不能となったためである。


「他は……知らなくていいだろう」

「まぁ。カレンがそう言うなら……」


 大体は予想がついたのでよしとした。ロピアルズに居るという予想だ。


「え? あ、あの! 副幹部長! 副幹部長は……どうしたの……? 生きてるんだよね……?」


 すると、沈黙を保っていたマナが遠慮気味に言ってきた。さっきまでの楽しそうな雰囲気がどこかへ行ってしまっている。どうしたというのか……。

 ジーダス攻略戦で何かあったのかな……?


「ああ。副幹部長は面白いぞ。私も思わず笑ってしまった。彼は――」

「なぁ。さっきから話しているじーだす……とか、かんぶちょう……とかってなんだ? なんかのアニメか何かか?」

「「「!?」」」


 そうだった! 今は真一がいるからそう言うことは聞けなかったんだ!


「そ、そうだ! アニメ! アニメでそう言うのがあったな~ってやつだ!」

「そうですわ! それ以外に何があるというんですの!?」

「……(コクコク」


 三人が真一に慌てて訂正を促す。


「三人して、必死ね……」


 完全に傍観者になっているソウナにボクは聞いた。


「ソウナさんは慌てないんですか……?」

「逆に慌てたら怪しまれるわ。それくらいわかってるわよね?」


 それは御尤もですが……。


「とは言ってもこれ、いつもの私なら焦るところだけどディスにはどうしてかしらね、追加効果みたいな物で異様におちつくのよ」


 ソウナの言葉を聞いて、ボクは納得した。

 ボクの場合だと、ルナと契約している事により魔力供給線が見える。シラと契約している事により寒さを感じなかったり体温をマイナス以下まで平然と下げられる体になっている。

 それと同じようにディスも契約したソウナはどんな状況にでもおちついて対処する事が出来るようになったってことだろうか。


「ふぅん。まぁアニメって事にしておくか……」


 真一が何か腑に落ちない顔でそう言う。


「えっと、真一君。昨日話してくれた妙な幽霊の話。もう少し聞かせてくれないかしら?」


 ソウナが話を逸らすため、神か悪魔か分からない妙な幽霊の情報を得ようと、真一に聞いた。


「え? 昨日話したって……ああ。あの話か。……とはいってもアレが大体全部だしなぁ」


 真一は困ったようにする。


「少しでも欲しいの。何か無いの?」

「うぅん。そうだなぁ……おっ。そう言えば」


 ポンっと手を叩いて思いだしたようにする真一。


「何? 何を思い出したの?」

「いや、別に幽霊とは関係ないと思うんだけどな?」

「どんな物でもいいわ。教えて。あと、金髪の女性を見たっていう生徒も教えて欲しいわ」


 そう言うと、真一は「了解」って言うと、話し始める準備をした。

 ボク等は生唾を飲み込み、真一の話に耳を傾ける。


「どうして見た奴は金髪の女だってわかったんだと思う?」

「え? そんなの、明かりに照らされて……」


 いや、それは無いだろう。食堂にはあまり電球がついておらず、そこまで見わたす事が出来ない。

 唯一、電球が点いているとなると食堂にいるおばちゃんのところぐらいだ。

 それ以外だとすると……。


「そうだ。だけど明かりには照らされていない。今月である6月7日は丁度満月だったんだ。おかげでその金髪の女の姿が見えた訳だが……見た男はな、その金髪の女自身が光っていたって答えたんだ。まぁ人間じゃないよな。それも兼ねて妙な幽霊って意味なんだが……どうした?」


 ボク達が真剣になって考えていたからだろう。真一が訝しげに聞いてきた。


「う、ううん! 何でもないよ!」

「まぁリクちゃんがそう言うなら……。あ、そう言えば時刻は11時46分ぐらいだったらしいぜ?」


 どうしてそんなにピンポイントな時刻なんですか……? 今さっきだって彼女が光ってるだなんてよくわかって……。


「真一~。お兄ちゃんがどうしてそんなにピンポイントなのって言ってるよ?」

「ちょっと!? 人の思考を読まない!」

「さすがユウちゃんだな。俺も読めるようになりたいぜ」

「えへへへ~♪」

「照れない! 真一もおかしいことだって気づいて!?」


 そのあとも無視をする真一に、ボクはうなだれる。


「大変だな……リク……」

「ユウさんはリクさんにとってある意味強敵ですわね……」

「……カナの方が強敵」

「「あんなのと比べるな(ない)」」


 二人が冷静に白夜にツッコム。確かに、母さんと比べてはいけない。母さんと比べられるのは……とかんがえるところでもうすでにダメなのだから……。


「はいはい。自慢はいいから、金髪の女性を見たって人は誰なの?」


 ソウナが自制を聞かせて、真一に問う。


「誰も何も……リクがどうしてピンポイントなの? って言った時点でもう答えは出てるだろ?」

「え? それって……」


 ボクが誰かわかったのと同時に、真一が答えた。




「そう。俺が見たんだよ。少しでもリクがいなくなったのをまぎわらそうと、学園で何人か集めて肝試しをしたのさ。その時に見たんだ」




「えぇ!? 真一、一言も自分が見たって言ってなかったじゃないですか!」

「いや、聞かれなかったから今答えたんだけど……」

「じゃあどうして昨日の夜、自分が見たって言ってくれなかったんですか!?」

「そっちの方が雰囲気が出るだろ?」



 ――ボクは無言でイスを真一に向かって投げた。



「ちょ、それはむげばぁっ!」


 その後、ボク達はたわいもない話をして、お昼休みの終了のチャイムが鳴った。

 ボク等はそれぞれ掃除場所に行き、午後の授業に取り組むこととした。





















「おい、誰か倒れてるぞ?」

「あ、コレ真一さんじゃん」

「ってことはリク様だな」

「真一さんいいなぁ……。俺もリク様に殴られたい蹴られたい……」

「こいつの事は無視をしておいて……掃除始めるか」


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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