リクの……
「しっかしあれだな~。マナも戻ってきたとなると、また三人で遊べるな! その時はまた面白い幽霊話を聞かせてやるよ!」
「う、うん」
「しなくていいです!」
真一は今やとってもご機嫌だ。今日初めてマナと会ったような顔をした真一は「誰?」とでも言いたそうな顔をしていたが、昔、真一に使ったという記憶操作魔法を気づかれないように解除したとたん、真一のご機嫌度がMaxに至った。
真一はマナがどこにいたのか、何をしていたのかなんてボクの時と同じように一言も聞かず、ただ懐かしそうに、そして楽しそうに話すばかりだ。
ボクはそれを聞くだけでも十分楽しかったがさすがに今さっきのは言わせてもらった。
ボクが幽霊の話なんて嫌いだから以外の理由なんてない。
こう言う話をしていると、なんだか魔法関連であるヒスティマから戻ってこれたという実感を持てる。
(まぁ気休め程度だけどね)
それでもこうして少しでも休みがあるならそれに越したことは無い。
それだけでなく、赤砂学園は桜花魔法学校みたいに追われるということは無い。
少なくとも……無かったハズなんです……。
それがおきたのはボクが赤砂学園高等部の昇降口に着いた時だった。
『お帰りなさいませリクさまぁぁぁぁぁああああああっっ!!!!』
何人か分からない。いや、正確に言おう。
――何百人か分からない人達が昇降口に集まってボクに向かって叫んだ。
「た、ただいま……」
全く意味がわからないボクは、引きつきながらもそう返した。
集合しているのは男子と女子の生徒はもちろん、なぜか先生が何人か混ざっているという状況だ。それだけでなく高等部でない中等部や小等部まで居る。
そこまで確認すると、隣に真一がやってくる。
「みんなさびしかったんだよ。学園一の姫君であるリクが一ヶ月も姿を消しているとな。おかげで一番仲のよかった俺が攻められる事実に……」
学園一? 初耳なんですけど……。って言うか姫君? どういうこと……?
すると集合して綺麗にそろっている人達の中から一人の女子生徒が前に歩み寄ってきた。
「お初目にかかりますリク様! 私は蜜浦南と言って、勝手ながらリク様のファンクラブ会長をしております!」
「…………へ?」
南と名乗った彼女の爆弾発言を今聞いたような気がする……。
勝手ながら……なんだって?
「私はリク様を中学生のころに見かけた時から、このファンクラブを創立したんです! 今やこの学園一の姫君に登ったリク様のファンクラブの総勢は約790名!」
さっきのは聞き間違いではないようだ。
おかしいな……。高等部の人数と中等部を合わせても人数が追いつかないぞ……。
先生の人数を合わせても790人には届かない……。
「そしてリク様が平穏な生活を送るよう、日々見守っていましたのに……一か月前。リク様が行方不明になってしまって……私の落ち度でした!」
いや、彼女のせいではないのに……。第一落ち度ってどういうこと……。
「よって今日から! ファンクラブ会員である何名かがリク様をお守りするよう! リク様の数メートル先に配置しておきます!」
そう言うとササッと十人ほどの男子生徒が南の後ろに着く。
どの人も屈強な男の人だけど……。
(絶対にボクよりも弱いし、何よりも魔力を持つ人達にかないっこない……)
危険なだけだ。
ファンクラブとかはスルーするとして、数メートル先に配置するのはよくない。
今日の夜も魔力に関することがあるかもしれないのだから。
「えっと、いいです。自分のことは自分で守りますから……」
「まぁ簡単に人一人宇宙の果てまで吹き飛ばぶごふぅ!!」
変なことをいう真一に一発入れといた。
「このように自分でちゃんと守れますから、大丈夫です」
自然と笑顔が出てきた。
すると……ドサッ。
「えぇ!? 蜜浦さん!?」
急に倒れた南。「はぅぅ……」とか言いながら胸を押さえて目を回している。
一体何があったのだろうか。いや、何もなかったはずだ。なのに彼女はこうして倒れた。つまり魔法かも……。
「え~っと、リクちゃん。とりあえず、蜜浦さんはどう考えても魔法とか関係ないから~」
マナがボクに耳打ちしてくる。
魔法でなければ一体何なんだろう……?
ボクがいろいろと考えてみるけど、なんにも思い浮かばなかった。
ちなみに後ろにいた人達も大体が倒れたり鼻血を出していたりしていた。
「さすがリク。威力がすごいな」
真一がもう回復して、興味深そうに見ている。一体どこにそんな回復力があるのだろうか……。
「さぁ、こんな所に居て授業に遅れたくないだろ? リクだって久しぶりの授業だし……」
別に久しぶりじゃないんだけどね……。だってヒスティマで学校に通ってたしね。
「わからないことがあったら俺の胸に跳びこぐふぉあ!!」
今度は吹き飛ぶ真一。ボクのねじりこみながらの拳が炸裂した瞬間だった。
「そこは教えてあげるじゃないの~?」
その様子にマナは冷静にツッコム。だけど……。
(やっぱりマナちゃん。どこか悪いのかな? なんか元気が無い様な……)
朝から一度も笑っていない。一体、どうしたというのか。
いつものマナならばここらでクスクスと笑うのが普通なのだが……。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「――え~。と言うことでありまして、ローマの……」
現在世界史の授業。
先生である田中先生が描いた地図にいろいろと書きこんでいく。
世界史はとても退屈だ。一か月前まではそう思っていた。
「ではここ、久しぶりに学園に来てくれましたリクさん。答えてくれますか?」
「はい。えっと……」
教科書に書いてある文字を読む。正解だったらしく、田中先生は授業を先に進める。
今は神様が現実に居るということ。それがわかったボクは、少しでも神様の知識を入れるべく、世界史の授業に力を入れる。
何も知らない状態で戦うのと何かを知っている状態で戦うのとでは生存率がかなり変わってくるのだとルナが教えてくれた。
日本の神様のことはシラが大体知っているからいいのだが、ルナは記憶を失っているため、西アジア方面の神様の事が全く分からないのだ。
世界史は丁度西アジア、もしくはヨーロッパに当たる部分を教えてくれるから神様の名前やどんな神様なのかぐらいは教えてくれる。
でも、本格的に教えてくれるはずもなく……。
「そうだ、そしてオリュオンポス十二神話……」
と思っていたのにどう考えても今習っているのは神様だ。
しかもおかしなぐらい教えてくる。
……おかしくないですか? 世界史なのに世界の歴史を教えなくて神様を教えているってどういうことなんですか?
昔起きた出来事だとかそう言うものを普通教える者なんじゃないんですか……?
そしてそれを何の不思議もないようにノートに書いていくクラスメイト達。
おかしいと思うのはボクだけなのか……。
そう思いながら世界史の授業の終わりのチャイムが鳴った。
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