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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第二章 赤砂学園と月光
16/64

法律



「…………で。どうしてこんな大人数になるんでしょうか……?」


 ボクは家の前で肩を落としながら聞いたところ。


「私は発案者だから当然よ?」

「ウチは……おばあちゃんが家に引き籠ってないで行けって……」

「わたくしだけノケモノは嫌ですわ」

「……楽しそうだから」


 ……と、女性陣四人。マナとソウナは例外として、二人の目はキラキラとしている。白夜は無表情だがボクにはそう見えて仕方が無い。


「俺はしばらく家にいたくねぇからな……」


 もう一人であるキリは、珍しくボク同様肩を落としている。

 一体何があったのか、聞いても教えてくれないだろうから他の人に聞いてみたが、目ぼしい話は聞けなかった。

 レナからだけ、誰かがキリの家を訪問したということが聞けたが、それ以外には分からなかった。


「そう言えばみなさん、記憶操作の魔法、使えるんですか?」


 思いついたことを言ってみたところ。


「……当然」「少し……だけなら……」


 即答したのは白夜と、遠慮しながらのマナだけだった。残りはどうするのかと考えたところ……。


「ソウナ、頼んだ」「頼みましたわ」


 ソウナに向かって二人してグットをしていた。


「……分かったわよ……。私が発案者だし、そうしておくわ。……魔力、持つわよね……ディス……」


 諦めたようにして言うソウナ。最後に小声でディスに相談しているのは仕方が無いだろう。

 ソウナが言うには記憶操作に使う魔力量はそこまで多くはないが少なくもない。だけど人数が多ければ、かなりの量の魔力を使う。ことわざでもよく言うだろう。塵も積もれば山となる、と……。

 ボクが使えたら何の心配もないのだが……。理由としては魔術の神であるルナ、つまり〝ヘカテ〟がいるからだ。魔力量は神の中でも指折りらしい。

 それに比べてディスである〝マルス〟の魔力量は神の中では下位に入るとのこと。その代わり力があったり、軍を指揮する知略を持っている。それが〝マルス〟のアイデンティティだ。

 神の中でも全知全能、完全無欠の神はいないらしい。いるにはいるが口に出したくは無いとも言っていたような気がするから実際にはどうなのかは知らない。


「じゃあボクは真一が待っているから先に行きますね」


 そう言ってマナの手を取る。


「え?」


 その行動にハテナを浮かべるマナに優しく手を引いた。


「マナちゃんだって真一に会うのは久しぶりだよね? 一緒に行こっ」


 するとマナは戸惑いの瞳をした。


「う、ウチは……別に……。小学校のころの記憶だって怪しいのに……」

「ほら、行くよっ」


 そう言って強引に手を引いて走るボク。


「わわっ。ちょっと待って――」


 マナは慌てたようにして走りだして、それ以降は何も言わずにただ黙ってついてきてくれた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「わたくしたちだけ別行動ですわね……」


 レナがちょっとさびしげに言う。別に学園に行けば全員がリクと同じクラス(、、、、、)に居るのだからそこまで別行動にはならないのだが……。


「……ツッコミ役がいなかったらボケのしがいが無い」


 白夜も寂しさを感じていたが、完全に別の目的だ。リクが言うなれば、きっとたちが悪いと言っていただろう。


「それよりも早くいかないと遅刻するわよ?」

「別に魔法使やぁ簡単に着くだろうが」


 心配して言うソウナにキリは当たり前だろうと言った風に言う。

 だけど、それで着くのはキリと白夜だけなのだろう。ソウナもレナも加速する魔法やワープするような魔法は持っていないし使えない。






 まぁでもそんなのはユウ(、、)が許さないけどね。






「ロピアルズ法第一条。ロピアルズは他国からの侵攻を防いだりする市民の味方である。その代わり、『ライコウ』市民である者、ロピアルズにより作られた法律を守る義務がある」


 ビクッと四人の内三人が肩を跳ねあげた。


「ロピアルズ法第一二条。緊急時以外、地球で他者の目についたりする魔法および、魔力の無い一般人への魔法の使用を禁ずる」


 恐る恐ると言った風に後ろを向く四人。三人はちょっと青い顔をしている。

 相変わらず白夜って人は無表情を貫いている。お兄ちゃんだったら今の白夜の無表情を見抜けるだろうが……。


「さぁて。この二つの法律を言えばいいと思うんだけど……。どうしてヒスティマの桜花魔法学校に通っているはずの四人がここに居るのかなぁ? 法は犯していないからユウは何もしないけど、記憶操作の魔法を使うんだったら明らかに一般人に使っているから法を犯しているんだよねぇ♪ まさかこれから使うだなんて言わないよねぇ?」


 さらに青くなった三人。白夜はやっぱり無表情。一番わかりやすい表現は母親が叱っているのに何のことかさっぱり分からない子供だろう。

 ユウはまだ中学生だけど。


「はぁ。全く。どういうことか説明して。お兄ちゃんの友達だから緊急時ということにして、大目に見てあげるから」


 お兄ちゃんに嫌われたくないしね。これがユウの本音だ。


「お前が思っている事がなんとなくわかるんだが……」


 呟いたのはユウの左隣にいる赤砂学園の女制服を着ている女の子だ。

 キッとしたツリ目に赤い瞳。キュッと引きしまった唇。そして茶髪セミロングだ。

 そう。彼女は元ジーダス幹部長にして現ユウの監視下に置かれている劉璃(りゅうり)華蓮(かれん)その人だった。


「はいはい。わかってても口に出さない♪」

「――ッ! す、すまん!」


 声を弾ませたからか、カレンはすぐに謝った。別に大体の人はユウの気持ちは知っているのだからいいのだが、肝心のその人に伝わっていないのがとても残念でならない。


「まぁこんなことをしていても学園に遅刻するのはよくないから早く教えて」


 ため息をつきながらそう言っても、誰も話そうとしない。だけどユウは休んでしまった分があるため、遅刻は絶対にしたくないと思っていた。


「話さないか……。隠しても意味ないと思うんだけどなぁ。キリさんの場合、法を犯したら絶対にお母さんが女体化させ――」

「奇妙な話を聞いたんでそれが神か悪魔かそれ以外か調べようと」

「仙ちゃん!?」「どうして教えるの!?」


 即答したキリにレナとソウナが怒鳴るけど……。


「俺はもう二度と女なんかにはなりたくはない……」


 当のキリは女になった時を思い出したのか、顔が真っ青になっている。

 そのキリの肩を横から白夜が、ぽんっぽんっと優しく叩いた。

 何となくわかった。白夜はきっと元気出せって思っているんじゃないのかなって。……違った。白夜が肩を叩いたのに反応してキリが見たら思いっきり右手でグットをしている。

 可愛かった宣言なのかな……。キリが更に落ち込んだ。

 にしても……奇妙な話ってなんだろう?


「仕方ないわね……。ユウちゃん。カナさんには黙っていてくれないかしら?」

「へ? いいよ」


 別に奇妙な話の真偽を確かめるだけならロピアルズとして活動しなくてもいいだろう。


「そうよね……黙っていてくれるはずが……。…………? 今、なんて……?」


 ? 聞こえなかったのかな?


「別にいいよって言ったんだよ? その代わり面白そうだからユウも手伝わせて。そうすれば今回の件はユウの独断で緊急時って事にしといてあげる。悪魔だったらそれこそ非常時だしね♪」


 うきうきして言ったからか……。


(((やっぱりあの人の子だ……)))


 三人して思った事が一言一句、間違えずにかぶった……。


 そんな事を知らずに、ユウは本当に悪魔だったら倒さなければいけないと思っていた。そして、悪魔ならば完全なる緊急時だろうとも。

 逆にもし神だったとしても、それはそれで力になってくれる可能性がある。

 ユウはエンがいるからいいけど、お兄ちゃんだったら『聖地』もあるし、力が上がること間違いないだろう。別にお兄ちゃん以外の人でもいいけど。

 そう思い、学園に向けて足を向ける。


「あんたたちじゃ学園のこと何も知らなさそうだし、ユウが記憶操作しておくね。何の文句もないよね?」


 確認するように言う。キリとレナと白夜は頷いたが、ソウナだけは違った。


「私はもう真一君に記憶操作をかけてしまったから、後のことも自分でやりたいのだけど」

「う~ん。そっかぁ……」


 ここでユウがソウナの記憶操作に上書きしたら逆に混乱してしまう可能性もあろうだろう。


「じゃあ走りながらでいいからどんな設定にしたのか教えてね」


 頷くソウナの了承を得られたので、ユウは学園に向かって走り出す。

 だって遅刻だけは嫌だもん。

 そうして他の人達もユウの後を追って走り出した。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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