ソウナはワルっぽい
「はい。絶対にいきます。いつもの場所で待っててくださいね?」
「おう! ソウナさんも、明日学校でな」
「ええ、また明日」
そう言って真一は玄関を出て行った。
…………ん? ちょっと待って……。
「えっと……ソウナさんは桜花魔法学校ですよね……いくの」
ボクの勘違いかななんて思いながら言ってみると、ソウナは……。
「あら。私はリク君といたいもの。桜花魔法学校だって一日くらいさぼっても怒られないわ」
さも当然と言うばかりに言ってきた。
「いやいやいや。そういう意味じゃないですよ!? 第一、ソウナさん赤砂学園の生徒手帳持ってないじゃないですか!」
通ってもいなかったのだから。ソウナが赤砂学園に通っていたなんて全くと言っていいほど知らない。
第一、ソウナがこっちの世界と関わりが無いことぐらい知っている。
「あら、リク君。私が補助だってことぐらい、知ってるわよね?」
「だ、だからってどうしたんですか……?」
そう言うと、ソウナは桜花魔法学校の制服の左胸についているポケットから生徒手帳を取り出す。
その生徒手帳はどう見たって赤砂学園ので……。
「って、えぇ!? どうして持っているんですか!?」
しかもソウナは生徒手帳を開けて、中にある証明書を見せる。そこにはソウナがボクと同じ学年、同じクラス であることが書いてあった。
「……ど、どういうこと……?」
「簡単よ。ちょっと真一君に生徒手帳を見せてくれない? って言ったら見せてくれたの。後は魔法でコピーと真一君の記憶を私が学園に通っている事を上書きするだけ。ね? 簡単でしょ?」
そうして今度は服に魔法をかける。すると桜花魔法学校の制服から、よく見ていた赤砂学園の制服に変わっていた。
魔法って便利だ……。
「で、でも他の生徒はそんなこと知らないから……」
「そんなの、簡単よ。明日すればいいのだから。魔力だってもつわ。ディスもいるし」
うわぁ……。ソウナがとてつもなく悪いことをしているような気がするのはボクだけなのだろうか……。いや、ここに居るのはボクとソウナだけなのだが……。
神様いるけど。
「リク君と一緒にいたいからって言うのは冗談として」
「あ、冗談だったんですね……」
ホッとしたような残念だったような……。
「金髪の女性って気にならない?」
「え? さっき真一が言っていた……?」
先ほど、真一が妙な幽霊話として紹介して出てきた金髪の女性が気になるってどういう事なんだろう……。
「だって、どうして幽霊なのに物を食べれるの? そんなのおかしいわよ。ヒスティマでは幽霊のことはそれなりに調べがついているの。守護霊、自縛霊、浮遊霊など……そのどれもが物に触るだなんてできないの」
「え? でも、物が動くってことはあるんじゃないんですか?」
「それはポルターガイストって言う霊独自の魔法のような物、と考えていいわ。もっと正確に言うと話が長くなってしまうからまた今度ね。そして、その魔法で物を動かしているだけ。幽霊が手で触れるわけじゃないわ」
つまり本当は触れていない。それは魔法のような物で動かしているだけってこと……?
そしてソウナは右肘を左手の上に置き、右手を顎につけて考える素振りをする。
「リク君。これは何の確信もない妄想なんだけど……真一君が言っていた金髪の女性って……本物の悪魔か、もしくは神様なんじゃないかしら?」
「え? それってどういう……」
ボクは全く思いつかなかったその考えに、ハテナがたくさん浮かぶ。
「ディス。出てきて」
光が出てきて、人型となる。
「何か用か?」
「話を聞いていたでしょう? 教えてもらえないかしら?」
そう言うと、ディスは少し困った顔をする。
「そんなこと言われても……僕よりも物知りがいるじゃないか。僕は戦略に関することならいくらでも力を貸してやれるが、今回みたいに他の神のことを聞かれてもな……」
「そう。ありがとう。じゃあルナかシラに聞いてみるしかないわね……」
そう考えてソウナはボクを見るけど……。
ルナの場合。記憶が無いため、ディスよりも分からないことばかりだろう。
シラの場合。この中で一番若い神様だ。ディスよりも分かるとは思えない。
…………どうしたものか。
「とりあえず呼んでみましょう……と言いたいところだったのだけど」
「なんじゃ? 何か用か?」「わたしがこたえられるものでしたら……」
すでにボクの後ろに居る二人。なぜか? さっきのリビングから一歩を外に出ず、ずっとボクの外にいたからである。
つまり金髪の女性の話も聞いていない。
そしてボクとソウナは真一の話を詳しく話したところ……。
「わたしはそのような『神様』をしりません。ひとの『食べ物』をかってにもっていく『神様』は……。つまり、『日本の神様』ではありませんね。どこからかながれついたかあるいは……」
このように、シラは知らないと言った。だけど日本の神様でないことを知った。日本の悪魔でもないのだろう。
「妾は……知っておるような……知らないような……。しかし、少なくとも金髪の女性は多分記憶にないのぅ。元々、記憶が無いから無理もないのじゃが」
ルナからは何の情報も得られなかった。
「仕方ないわね。明日。調べてみましょう。時間は……」
「食堂が開いていたってことは少なくとも0時以上前の話です。日付はまだ変わっていません」
「そう。時間はわかったからいいわね。……でも、もし悪魔だったら二人じゃ少し怖いわね……」
ボクもソウナもまだ完全に戦い馴れはしていない。悪魔だったら返り討ちになる可能性もある。
ボクとソウナは神様達を自分の中に戻し、靴を履いて外に出る。
「とりあえず、真陽さんは忙しいだろうし……誰か用事が無い人にでも聞いてみた方がいいですね……」
「そうね。ロピアルズにはお世話になりたくないからカナさんやユウちゃんには黙っていましょう」
えっと……それはなぜ……?
ロピアルズにお世話になりたくないって……。
「そんなこと言っても多分ユウは知ると思いますよ? 学校は赤砂学園に通っているんですから……」
「……それもそうね……。はぁ。それじゃあロピアルズも知っちゃうか……」
何かいけないことがあるんだろうか?
もしかして、こっちでは魔法を知らせないため、魔法を使ってはいけないってことかな? いや、それだったら今さっきソウナが使っていたから違うのかな……。
「えっと、どうしてそんなにロピアルズに関わりたくないんですか?」
「カナさんが仕事を無視してきてしまいそうだからよ」
――そういうことですか……。
ボクの質問にソウナは即答だった。
「あれもあるしね……」
最後のソウナの漏らした言葉はボクには聞こえなかった……。
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