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第四話 運命的な出会い

現在、ハルはゾイの噴射する蒸気で真っ白になった視界の中にいた。


それから逃れるように、アレンとチャンの機体が右側に旋回し、脱出する。


「計画通りってとこか」


ゾイが利口そうな眉を小さく引き上げた。


操縦席の脇に設置されたバックミラーで、ドリアンの機体が煙を出し離脱した後、アレンとチャンの二機も右へ大きく旋回していく姿を確認する。


「ここで後ろと距離を引き離しておけば、僕の勝利の確立は四〇、九パーセント上昇だ」


一気に他の機体との距離を離す為、ゾイはスピードコントロールの切り替えをしようと、足元のペダルスイッチに足をかける。


「……!!」


が、一瞬凍りついたようにすぐ脇に目が釘付けられる。


「やあ!」


蒸気の霧で追い払ったとばかり思っていたもう一機が、いつの間にかすぐサイドにつけていた。


大きすぎるゴーグルの下から、まだ幼さの残る少年が笑いかけている。


「き、君は一体どうやって!?」


「蒸気は風で後ろに流れるでしょ? だから隣なら大丈夫かなって」


予想外の出来事に、ゾイは思わずハルに問いかけた。


「あの視界の悪さでどうやって追い上げた!?」


「へ? ん~、二段階スピード上げただけ」


「その小さめの機体で僕の機体のスピードに……??」


慌てるゾイとは裏腹に、ハルはへへっと鼻の下をこすると、白い歯を見せて笑った。


ハルはよくぞ聞いてくれた、とばかりに嬉しそうに話す。


「改造したんだ。もともとエアリエルは、八段階スピードなんだけど、ちょっとエンジンを弄って十二段階に。って、エアリエルってのは、この子の名前ね」


ゾイは一瞬青くなる。


ゾイの愛機は最新の機器を採用した十段階スピードであった。


「そんな馬鹿なっ! 現段階の技術での限界は最大十段階。それ以上はエンジンに負荷がかかりすぎる筈だ!!」


「短時間なら平気だよ。それに、この子はその為に重量を最大限減らした構造だから、他の機体よりはエンジンへの負担も少ないし」


IQ二〇〇のゾイは、自らの愛機をより速く飛ばす為に、あれこれと小難しい計算に計算を重ね、そしてより負担の少ない設計を選んできた筈だった。


それなのに、この突如現れた少年が、いともたやすくその設計を超えた新しい機体を作り上げたというのか。


ゾイは驚きと悔しさがない交ぜになった不思議な感情を抱く。



と、いつの間にか三周目に差し掛かっていたようで、港で三周目を知らせる電子ホイッスルが鳴り響く。


ゾイは噴射していた蒸気を止めた。


「君は……、君は一体どこの航空学校の生徒だ……!? 僕は王立ヘルシオン操縦士学校の主席だ……! ブセラ航空学校か? それともファンブリッド航空学園か?」


ハルはふるふると首を横に振る。


「学校なんて行ったことないよ。ぼくの師匠は修理工場長のじいちゃんだ」


はっとしてゾイは慌ててレバーの操作を切る。


話に夢中になっているうちに、いつの間にか目の前にサークルが近付いていたのだ。



(しまった……!!)



いつ接触してもいい距離に、ハルの機体が並んでいる。


サークルは中サイズで、このままだと2機ともにサークルの枠に直撃に、心中し兼ねない。


(離脱か!? いや、間に合わない!!)


「大丈夫! ぼくに任せて!!」


瞬時にハルの機体がくるりとゾイの機体に腹を向け、どういう訳か着地用の足を出す。


「何する気だ!?」


「大丈夫! 君はそのまま飛んでいて」


ほんの一瞬で、ハルの機体とゾイの機体が裏表のコインのようにぴたりと合わさった。


「ダメだ……!!」


ゾイは、襲い来る衝撃を力みながらじっと待ったが、衝撃は訪れることはなかった。


バックミラーには、遠ざかる既に通り抜けたサークルが見える。


「一体どうなって……」


ゾイはふと自らの機体を見回す。


空中でハルの機体がゾイの機体腹部に合体し、まるで一機のモーダーバードのような格好になっている。


着地用の足は、ゾイの機体にぴたりとくっついていた。


「ね、うまくいったでしょ?」


音も無くゆっくりとゾイの機体からハルの機体が離れる。


ゾイは言葉を失った。



(この技術でどこの航空学校にも所属していないだって……!? とても信じられない……)





その頃、観客席では大歓声が上がっていた。


『なんと!! レース最年少の二人のとんでもない飛行技術です。あと僅かに互いの機体が逸れていれば、間違いなく二機は海へ真っ逆さまだったでしょう!!』


ハルを知る者達でさえ、ただの小さな修理工場の少年が、まさかあそこまで操

縦技術を兼ね備えているとは今まで知る由も無かった。




一方、旋回して、少し離れた位置で攻防を繰り返す機体が二機。


「へ~え、やるねえ、あのおチビちゃん」


たった今行なわれたとんでもない飛行技術に、アレンは操縦中にかも関わらず思わず拍手を飛ばす。


「アナタ、ワタシのこと舐めてるネ?」


チャンは虎模様の機体をわざとアレンの機体に急接近させる。


「おっとと、おいおいチャン・ルイ。熱くなるって」


咄嗟にレバーを右へ切り接触を避けると、アレンは肩を竦める。


「生きて戻れるなんて思うナヨ。アナタの機体、海の藻屑にしてヤル」


チャンがハンドルレバーの隣の赤いスイッチを押すと、


『ウィィィィィィィ』


という機械音が鳴り、ボディーの側面にギザギザに尖った刃物が現れた。


「チャン・ルイ! お前どうかしてるんじゃないのか!? いつそんな物騒なもん装備した?」


ぎょっとして振り返ったアレンの表情が凍りつく。


接触すれば、間違いなく機体は飛行不能となる。


「勝負のルールに武器の使用に関する規定は無い。生き残った者の勝ちダ」


薄い唇を引き上げ、チャンは勢いよくアレンに突進をかける。


「まじかよっ!」


慌ててレバーを引き上げ、高度を上げることでなんとか接触を避ける。


「避けても無駄ダ。アナタが落ちるまで、何度でもやってヤル」



チャンの執念の猛撃が開始された。






その頃、飛行船内のビップ用観客席にて、不穏な動きが起こる。


「ありゃ一体どうゆうことだ!? あのチビ、確か修理工場のじいさんの孫じゃねえかよ!」


昨日ハルの工場へ訪れた男だ。


ビップ客用に設置された大画面の映像を見て、興奮して椅子から立ち上がっている。


度派手な赤と白のネクタイに、チカチカする黄色のスーツ。明らかに柄の悪い

だろう男に、周囲のビップ客がビクついて、誰も彼と目を合わそうとしない。


それどころか、観戦中にあらぬ言いがかりでもつけてきそうだと、観客の中には席から離れる者もいた。


「おい、お前ら、どうだ? どう見たってあの修理工場のチビに間違いねえよな!?」


すぐ後ろに控えている黒ずくめの大男三人が無言のまま頷く。


「まずいじゃねえかよ、このままじゃよ!? あのチビが万が一にも優勝しちまうようなことがあったら、あの修理工場は手に入らねぇじゃねえか!! あの土地はなんとしても手に入れなきゃならねえ」


男は、胸のポケットから葉巻を一つ取り出し、後ろの大男に火を点けるよう指

示する。


そして男は声を落とし、部下に密に命令を下した。


「いいか、お前ら。なんとしてもあのチビを優勝させんじゃねぇ。どんな手段を使ってでも、負けさせろ!」


部下達はこくりと頷き、素早くその場を去って行った。


(あの丘をリゾート地にしちまえば、俺の手元にがっぽり金が入ってくる筈だ!!)


男は不機嫌に葉巻の煙を大きく吐き出した。





今、コース内で、アレンとチャンの追跡劇が空中で繰り広げられていた。


観客席では、アレンのファンの娘達が泣きべそをかきながら何度も悲鳴を上げている。


誰もが皆、チャン・ルイの猛撃に恐怖を感じ顔を強張らせていた。


うまく避けつつも、確実にサークルを潜り抜けてゆくアレンの機体。



「いい加減諦めてくれよ、頼むから」


すぐ後ろで、チャンの機体から飛び出した刃物に接触したサークルが、見事に

真っ二つに割れて海へ落ちていくのをミラーで確認する。


「おいおい……」


接触すれば、あのサークルと同じ運命になり兼ねないことを思うと、アレンの

顔から血の気が引いてゆく。


「諦めろ、アレン・パーカー」


「やだね、オレだってこんなに若くして死にたくはないし」


アレンはベッと小さく舌を出した。


「だいたい、こんなところでオレが死んだら、残されたファンの娘たちはどうなる? きっとオレの後を追って次々に命を絶つに決まってる。だから、オレはこんなとこで死ねないの!」


ぎりぎりのところで避けながらも、アレンのナルシストが炸裂する。


「ちいっ」と舌打ちし、チャンが不機嫌にアレンの機体に追撃をかけた。


(仕方無い……。少年達には申し訳ないが、これもファンの娘達の為だ。許せっ)


アレンの機体は、


『ギュウウウウウウ』


と、風を鳴らして急反転し、出ていた翼の先から新たな翼が出現する。


遙かに大きくなった翼で、機体がグンと持ち上がり、勢いよく翔け始めた。


「なに!?」


チャンは一際大きくなったアレンのモーターバードの翼に息を呑んだ。



「出ました!! アレンの白鳥の舞い!!」


観客席ではファンの若い娘達が顔を真っ赤にして黄色い歓声を上げている。



一度の羽ばたきで、一時的にグンとスピードを上げるアレンの青と白の白鳥そっくりのモーターバード。


一時的なスピードではあるものの、その一時の最高スピードは、他機の最高スピードよりも遙かに勝るもの。


羽ばたきの度に速くなり、元のスピードに戻り、を繰り返すその姿は、まるで白鳥が青空を優雅に舞っているかのようだ。



「逃がさナイ」


唇を噛み、チャンも速度を全快でアレンの後を追う。


ぐんぐん追い上げるアレンのモーターバードは、ついに前方を翔ける、ゾイとハルの二機の前に踊り出た。


最後の周を知らせる低い電子ホイッスルの音が響く。


残り一周。



『いよいよ、残り一周となりました!! ここに来て、再び誰が優勝を手にするのかわからなくなってきました!!』


声高らかに、レースの解説者が叫んでいる。




「うわ~!! お兄さん、すごい!!!」


ハルがアレンの優雅な白鳥のようなモーターバードの飛行に、思わず感嘆の声を洩らす。


「人のことに感心してる場合か!? 残り一周だぞ?」


そんなハルに、呆れたようにゾイが釘を刺した。


そしてその直後、すぐ後ろに、おどろおどろしい刃をギラギラさせたチャンの翔ける猛虎が追い上げて来ているのに気付き、ゾイが顔色を変える。


「アレン・パーカーの奴、僕らを囮に使う気のようだ……」


アレンの考えを読み、ゾイは訝るようにアレンの機体を見た。


見る間に、アレンの機体がチャンの攻撃から隠れるように、うまくハルとゾイの機体の前に納まった。


「何、あのギラギラしたの」


ハルはチャンの機体から飛び出す鋭く光る刃を見て首を傾げる。


全く状況が読めていないハルに、ゾイが助言した。


「いいか、あれに触れたら命は無いぞ。何があっても逃げろ。君程のパイロットをここで失うのは実に惜しい」


通り抜けたばかりのサークルが、後方で見事に真っ二つになるのを見て、初めてハルは目を丸くする。


「あんなのありなの!?」


「ボディー設置型のものなら、武器であろうとも特に規定は無い。だから反則とは言えない」


焦ったような口振りで、ゾイがそう説明した。


「そうなの……? だけど、いくらなんでも危なすぎない??」


ゾイは黙って何か考え込む。


(蒸気の噴出で目くらましさせるか……? いや、ここで使うとラストスパートの際の馬力が不足する……。逃げるか? それも明らかに不利だ。ここからは最短距離で攻めなければあのアレン・パーカーに追いつける確率が一気に一五パーセントもダウンしてしまう……)


前方を塞ぐようにして飛行するハルとゾイの二機に苛立ち、チャンが声を荒げる。


「どけ!! どかなければ、容赦シナイ!!」


それと同時に、ポイントごとに待機している審判からマイクで忠告が入る。



『ゾイ・ボルマン、ならびにハル・シュトーレン! 現在サークル通過数四十個。残り十個のクリアが求められるが、チャン・ルイの機により、残されていた十七個のサークルのうち既に七個の破損が認められる。よって、残りサークル全てをクリアしなければ、自動的に二名とも失格となる!』


「え、うそ」


信じたくない忠告に、ハルが茫然とする。


「くそ、計画外だな……」


ゾイは、手袋を嵌めた手を少しの間顎に添えると、何やらぶつぶつと呟き始めた。


どうやら、高速でさまざまなパターンを仮定した勝敗率を計算しているらしい。


そしてしばらくの後、ゾイはすぐ脇で翔けるハルに提案した。


「もう僕らには遊んでいる余裕は無くなった。二人で組まないか?」


ハルはこくりと頷いた。



「いいよ、一体何すればいいの?」

 

「僕が奴を引き付ける。その間に君は奴の主翼部分にどうにかして穴を開けろ」


ゾイのとんでもない計画に、ハルは思わず耳を疑った。


「えっ、穴!? どうやって!?」


「どうやったっていい!!」


ゾイがくるくると空中で回転を始める。


ハルは、すでに作戦が始まったことを知り、兎に角タイミングを待った。


ゾイのモーダーバードは、高速に回転し、縞模様が空中で一つの円のように見え始める。


「ナ、ナンダ!?」


目の前を高速回転する白と黒の線に、チャンが確実に動揺している。


ゾイは回転を止めないまま、チャンのすぐ目の前を右へ左に動き回り、ゾイの機体がまるで横へ伸びたり縮んだりしたように、チャンの目の錯覚を引き起こした。


「どうなってル……!? ああ、鬱陶シイ!!」


チャンの機体がぐらついた瞬間をハルは見逃さない。


エアリエルの後方に、脱出用のロープを垂らし、そのまま一気に速度を落として一旦チャンの機体のすぐ真上へ滑り込んだ。

だが、ゾイの機体に気をとられ、チャンはまだハルの機体の動きに気付いてはいない。



(うまく引っかかって……!)


垂らした紐が、主翼部分とボディーから突き出した刃の接合部に絡まったことを確認すると、今度は速度を更に落とし、チャンの機体のすぐ後方へ移動。


紐が僅かに突っ張るが、外れないことがわかるとハルは今度は再びスピードを上げチャンの腹の下を潜り、元いた自分の位置まで戻った。


「ねえ!! もういいよ!!」


ハル声で、ゾイが回転していた機体を止め、またハルのすぐ脇についた。


「うまくいったか??」


「まだわかんない」


ハルは僅かにチャンの機体を振り返り、肩を竦めた。


「は? それは一体どういうことだ」


ハルはチャンに引っ掛けた紐の端をうまくゾイに放り投げた。


「紐? 一体これでどうする気だ??」


「それを君のモーダーバードの足に引っ掛けて。君はあのサークルをうまく潜ってくれる? 僕はサークルの外側を通過するから」


確かに少しいったところに、サークルが設置されているのが見える。


「あれに引っ掛けるつもりか!?」


ゾイの問いかけに答えるかのように、にかっと白い歯を見せ、ハルは大きく頷いた。


「し、しかし、そんなことをしたら、君はサークル通過数が足りなくなって失格になるぞ!?」


ゾイははっとしてすぐ隣を翔けるハルを振り返る。


「大丈夫っ! 任せて」


いつの間にかすぐ近くまできていたサークルに、ゾイは仕方なくその指示に従

うことにした。


(君は、失格になる気か……!?)


ゾイがグンとサークルを潜ると同時に、ハルはサークルの外をグンと通過してゆく。



『お~~っと!! どうしたハル・シュトーレン!! サークルをなぜ潜らない!!??』


レースの解説者の不審そうな声に比例するように、観客席がざわめき立つ。


しかし、直後にチャンの機体がまるで何かに手繰り寄せられたかのように、コントロールを失いサークルの枠に主翼を激突させた。



「な、ドウナッテル!!??」


チャンのモーターバードの主翼には、大きな亀裂が走っていた。


今すぐに離脱、不時着しなければ、いつ折れて海へ真っ逆さまかも分からない。


「くそっ!!」


そのとき初めて、チャンは主翼と刃の付け根部分に何か紐のようなものがぶらさがっていることに気付いた。


(いつの間に!?)


その時、近くを飛んでいる飛行船の観客席から、どっと歓声が起こるのがチャンの耳にも入ってきた。


どの観客も、チャンの機体の前方を見つめていた。


(!!!)


ぐらつくチャンの機体の前方で、ハルの真っ白な機体が、一旦通り過ぎたサークルの真上から宙返りして見事サークルを潜り抜けて見せた。


「な……、なんダ、アイツは……!?」


飛行の続行不能で仕方なくチャンはスピードを落とし、なるべく翼に負担をかけないように注意しながら離脱してゆく。




「……」

ハルのとんでもない飛行技術を目にし、ゾイは言葉を失っていた。


「あれ、どうかした?」


ハルが何事もなかったかのように、再びゾイの機体のすぐ脇にエアリエルをつけた。


ゾイが僅かに口を開き何か言おうとするが、直前にアレンが斜め前から二人に声をかける。


「やあ、君たち! 抜群のチーム力だったね! 驚いたよ」


「あなた……!! 僕らを囮にしようとしたな!!」


モーターバードの操縦席に座っていなければ、今にも殴りかかりそうな勢いでゾイが怒りを露にする。


「いや~~、そんなつもりはなかったんだけどさ……。って、そんなことはさて置き、残り半周を切った。ここからは正々堂々と3人で勝負だ」


明らかに話を逸らされたことに、ゾイが不快な表情を浮かべる。


「……怖いな、君。仕方ない、お詫びに最後の直線距離のラストスパートは同時にかけるってのはどうだ? オレは僅かだが君たちよりリードしているが、君たちに合わせるよ」


「でも、勝負は勝負でしょ?」


ハルはあまりあれこれと理由をつけて、手抜きされることは好きではなかった。


アレンに言わせれば、手抜きなんてとんでもない。僕はいつだって誰に対しても手を抜かないよ、なんて言い出しそうなものだが、ハルはハルでここは引き下がれない。


「君は、なかなか気概があるね。オレはそういうやつ好きだな」


アレンは面白そうにハルを眺め、ちょっかりおしゃべりしながらも、楽々とサークルを潜りぬけてゆく。


「僕はあなたみないな調子のいい人間は大嫌いだ」


チャンの攻撃の囮に使われたことを根に持つゾイは、不愉快そうな目をゴーグルごしにアレンに向けた。


「はは……。君はなかなか手厳しいね」



三機は順調にコースを翔け抜け、もうすぐ最後の直線距離に近付く。



「けれど、正直なところ、オレは君たちと勝負してみたい。ゾイ・ボルマン君。君がなんと言おうとね」

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