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第十一話 船長代理、ルイス・カミュ船医


ヘルシオン王国の王都が栄える人工島、ウインドバード島。


ヘルシオン王国の所有する島のうち、最も大きな島であり、このスカイグラウンド一の広さを持つ島でもあった。


その中心部に、ヘルシオン国王の住まう城が高々とそびえ立っている。


そして塔のように高いヘルシオン城を囲むように、広大な美しい王都の街並みが広がっているのだった。




「ホーネット、あの少年はどうしている?」


「はい、陛下。彼は操縦士学校で早速活躍をしたようです。なんでも、実地訓練中の事故で一人の生徒を救ったと……」


塔のように高いヘルシオン城の最上階が、王の私室となっていた。


その絶景の巨大な窓から城下を望みながら、国王がふと老執事に訊ねるのだった。


この執事とは、以前ハルの修理工場に訪ねてきた老紳士である。


普段はこのように国王専用の執事として、ヘルシオン城で仕えているのだった。



「そうか、やはりあの時、彼に目をつけたのは正解だったな」


嬉しそうに、国王は窓の下に広がる美しい王都の景色を見渡す。


「ですが、少しばかり不安な噂も耳に」


「不安?」


ホーネットの言葉に国王は眉を寄せた。



「はい。どうも、一般の出の彼が特別措置として陛下から推薦を受けて編入したと知った他の生徒達が、彼の資質に疑いを持っているようです」

 

ホーネットの思わぬ報告に、国王は、口髭を一撫でしてもう一度王都の景色に目をやる。


「なるほど、妬みというやつだな。さて、あの子はこの後どうするだろうか」




ホーネットは物珍しそうに、そう呟いた国王の嬉しそうな横顔を見つめるのだった。






ハルは、地下の二人で個人用ラボの一室を借り、講義のある時間帯を除いて、

昼夜問わず、ハイネン教授の出した課題に勤しんでいた。


他の同じ初級クラスの生徒達の多くは、五人程度のチームを組み、それぞれに課題に取り組んでいるのに対し、ハル達は二人。


人数がいない分、作業の進み具合も他のチームより遅くなりそうなものだが、案外今の時点では、この二人の方が順調に修理作業に取り掛かれていたのだった。


というのは、フランは操縦方はからっきしでも、座学の方では初級クラスでトップの成績を修める成績だったのだ。


フランの知識は、講義の最中に眠りこけていた他の生徒達にとっては大変貴重で、同じチームの一員としてぜひ欲しい人材であったが、生憎、課題が発表されたすぐ後に、いつの間にかハルがフランを取り込んでしまった、と勝手に生達は勘違いしていた。


ハルの存在を疎ましく思っている生徒達は、いくらフランの知識が欲しいと言えど、ハルをチームに入れる位なら願い下げだ、とばかりに仕方なく二人を避けてチームを編成したという流れだった。


が、やはり講義を真面目に聞いていなかったことが大きく足を引っ張り、作業の進みが良くないらしい。


同じように個人用の修理ラボで頭を抱える生徒達の姿が目立っていた。



「ダメだ。やっぱり部品が全然足りない……」


初期のモーターバードの七〇五型は、大きく左翼が大きくもげてしまっている他、クラッシュした際にボディーもぶつけたのだろう。左側が後方がひしゃげ、てしまっていた。


二人は今、左翼部分を復旧しようと格闘しているところだった。

 

「あ、でもこの部品の代わりならこれで何とかなるんじゃない??」


ハルは、他のチームが選ばなかった旧型のモーターバード一機を、教授の許可をとって分解し、七〇五型に使えるものを調達していた。


これは、ハルの祖父がよくやっていた手法で、ハルもよくその手伝いをしたものだった。




祖父は言っていた。


「分解されるモーターバードは死んでしまう訳じゃないぞ。こうして、別のモーターバードに部品とともに組み込まれ、新しいモーターバードへと生まれ変わっていく。わしらは、モーターバードに命を吹き込んでいるんだよ」


と。




「本当だ……。何とかなりそうだ。ねえ、ハル? 君はここに来るまで、本当にどこの航空学校へも行っていなかったの?」


途中編入してきた為に、まだ数える程しかこの講義を受けていないのに、悩むどころか、魔法のように次々と部品を組み立てていくハルを見て、フランは正直、とても驚いていた。


「うん。ずっとじいちゃんの修理工場にいたよ。物心ついたときからずっと、じいちゃんの隣で、じいちゃんの作業を見てきた」


信じられない顔で、フランは肩を竦める。


「本当にそれだけ? それだけでこんな部品の組立てや、あの訓練の時みたいな操縦ができるようになったの??」


ハルは自前の斜熱用ゴーグルごしにフランに視線をやる。


「ぼくにとって、操縦や機械弄りは子どもの頃から、食事するのと同じ日常だったから……。それよりも、ぼくは難しい数式とか理工学なんかの仕組みはよくわからないから、それが得意な君はすごいなって思うよ」


フランは顔を赤くし、隠れるように造りかけのモーターバードの影に頭を引っ込めた。



 

と、そこに、


「ハル、フラン、ここにいるのか??」


突如二人の借りている個人用修理ラボの扉からゾイが顔を出した。


「ゾイ? どうしてここが分かったの??」


ハルは遮熱用のゴーグルを外し、予告無しに現れたゾイをびっくりした顔で振り返った。


「ハイネン教授に聞いたんだ」


腰に手を当て、ゾイは汗を滲ませたハルを見下ろす。


「ハイネン教授に?」


「ああ。この時期はハイネン教授の課題が出される頃だと思ってね。僕も経験済みだ」


納得したように、ハルとフランは顔を見合わせた。


「あのとき、僕は今の君達のように、誰かと組むなんて考えなかったな。ここで黙々と一人でモーターバードの修理に取り組んでいた」


懐かしむように、ラボの中を見渡す。


「やっぱり、ゾイ・ボルマン先輩はすごい……! 一人で課題を仕上げてしまうなんて……!!」


興奮気味に、フランが汚れた手でずり下がった眼鏡を上げた。


「いや、それは違う。あのときの僕は、自分が完璧な存在だと錯覚し、足手纏いになる者とわざわざ組むことは無いと考えていた……。でも今は分かる。それがいかに傲慢で、愚かな考えだったかが」


どこをとっても完璧だとばかり思っていたゾイ・ボルマンの信じられない言葉に、フランは驚き目を丸くする。



「ハル、あのレースの日、君に会って僕はそのことに気付かされたんだ。本当は、もっと早くに君に出会いたかった位だ……」


真剣な表情のゾイに肩を掴まれ、ハルは自分よりもずっと背の高いゾイを見上げた。


「何言ってるんだよ、ゾイ。まだまだ今からだって遅くはないだろ? ぼくだって、一時はあのレースに出たことをすごく後悔したけれど、こうして君達に出会えたことを思うと、やっぱりあのレースに出て良かったって今は思ってる」


ハルは持っていた工具を床に置き、ゾイの手を優しく掴んだ。


ゾイは照れたように鼻頭を掻く。


「ところで君達。部品の調達はうまくいっているのか?」


「それが……」


ゾイに痛いところを突かれ、二人は自分達が修理中の七〇五型の設計図をゾイに見せた。


「ここまではなんとか別の機体から部品を調達できたんだけど、こっから先がどうも型が合わなくて」


じっくりと設計図に目を落としながら、


「なるほど。初期のモーターバードか。七〇五型だな……」


とゾイが呟く。


「どう思う? 部品をどうすれば調達できると思う?」


ハルは、なんとなく、ゾイなら何かいい案を持っていそうな気がしたのだ。



「そうだな……。僕の父に頼めば、少しは部品を分けてくれるかもしれない」


それを聞いた途端、二人は叫び出していた。



「本当に!?」 


「本当ですか!?」


二人は自分達の手がひどく汚れていることも忘れ、ゾイの白いジャケットを握

り締める。



「あっ!」


「はっ……!」


二人は、自分達がうっかり仕出かしたことに気付き、硬直する。



「…………」


ゾイがくっきりと黒い指の形のついたジャケットの滲みを見下ろす。



「ご、ごめん……、つい興奮しちゃって」


「す、すみませんでした、ゾイ・ボルマン先輩……」


フランが青い顔でぺこぺこと頭を下げ、ハルが慌てて近くに転がっていた雑巾をゾイに押し当てる。



「…………」


ハルがこすりつけたせいで、余計に広がった黒い滲み。



 「あうっ! ごめん……」


ハルが手から雑巾を床に落とした。固まるゾイ。




「……これは何か埋め合わせをしてもらわなければな……」


ゾイのいつもと変わらない表情がなぜだか恐ろしい。



「うん……」


「勿論でございます……」


一気に落胆して肩を落とすハルとフランの頭をゾイがごしごしと撫で回した。


「まあ、気にするな! そんなこともある!」



普段あまり笑うことのないゾイが、ニカッと笑ったことに目を丸くして、二人は互いに顔を見合わせた。


と、直後ゾイが二人に一体何をしたかを瞬時に悟ったのである。


髪にべったりとなすり付けられた黒い油。こてこての油。



 「あああああ!?」


 「はうう??」




そして、ゾイの楽しそうな笑い声が修理ラボの中に響くのだった。







その頃、レーラズ海上空でヘルシオン王国の軍用飛行船から不可解な攻撃を受けたレオとラミロは、船長室に呼び出しをかけたとある人物を、つまらないジョークなんかを飛ばしながら待っていた。


「それにしても、あのおチビさんはどこへ消えたんだろうねぇ?」


ラミロが、金色の艶髪の下から覗く、真っ青な目を面白そうに細めながらからかった。


「しつけぇな、お前も。今はもう忘れろ」


レオは、今剥いたばかりのナッツの硬い皮をラミロの鼻頭にぶつける。



「イテッ。諦めないって言ったのは船長だろ?? 忘れろってそりゃ俺のセリフじゃないかよ」


仕返しにと、同じように剥いたナッツ皮をレオに向けて弾き飛ばそうとしたとき、部屋の扉からノックの音が響いた。


呼び出しをかけていた人物がようやく到着したようだ。


「おう、ルイスか」


ノックの音に答えるように、レオが扉の向こうに向けて言った。



「失礼」


空いた扉から現れたのは、長身のすらりとした綺麗な男だった。


長い脚に細見の腰。


腰まで伸ばしたブロンドの長い髪は、一つに丁寧に結われており、枝毛一本見当たらない程手入れが行き届いている。


かっちりと着こなしたスラックスの上には、清潔感のある水色の縦縞カッター。


そして、ブランド物のネクタイも忘れない。


一見すると、ファッションモデルとしてでも十分通用しそうなルックスのこの優男が、このビアンカ号唯一の船医、ルイス・カミュである。


誰も、彼がまさか悪名高い空賊船ビアンカ号の船員だなどと、思いもしないことだろう。


「船長、どういったご用件ですか?」


耳心地のいい声で、ルイスは言った。


「おう、悪ぃな。まあ座れや」


レオに視線で誘導され、ルイスはどこか腰かける場所を探した。


「先生、どうぞ」


ラミロが腰掛けていた椅子から立ち上がり、ルイスにその場所を譲ろうとする。


「ああ、いや、わたしはこのままで構いませんよ、ラミロ」


遠慮するルイスの手を引っ張り、ラミロが無理矢理にも腰掛けさせる。



「忙しいときに呼び出しちまって、悪ぃな」


世間で、黒い悪魔とまで呼ばれているこのレオでも、このルイスという男には一目置いていた。


ラミロに関しては、副船長という肩書きとは別に、人間として彼のことを尊敬している程でもあった。


「いえいえ。ちょうど休憩を入れようと思っていた頃合でしたから」


鼻にひっかけた片眼鏡の下から、優しげなルイスの目が覗く。


「実は先生にちょっと相談が」


ラミロは伺うように話を切り出した。


「相談? わたしにですか?」


瞬きして見返すルイスに、レオがごほんとわざとらしい咳払いを一つ。



「ちょいとアンタの助けを借りたい」


「助け?」



ぽりぽりと鼻頭をかくレオに、ラミロが横から目配せする。


どうやら相当言いにくいことらしい。



「えーと、要するにだな……」


「はい?」


 


「ちょいとばかし留守を頼みてぇ」


レオはそれだけ言うと、ぐびっと机の上に載っかっていたウィスキーのグラスの中身を一気に飲み干し、乱暴にそれを叩き置いた。


「留守を? そんなの、いつものことじゃありませんか」


きょとんとした表情で、ルイスが首を傾げる。


ルイスは二十九歳。


勝手に船を抜け出す船長と副船長の留守番役として、この船の年長者であるルイスが数日の間船長代理を任されているのはいつものこと。



「いや、まあそれはそうなんだがよ……」


レオは、すっかりボサボサに伸びてしまった黒い髪をガシガシと掻いた。


「それがですね、先生。今回はいつもみたいに数時間や数日じゃないんです」


ラミロが困ったように腕組みし、ばつが悪い表情を浮かべるレオに、チラリと視線を送った。


「数時間や数日じゃないとは、じゃあ具体的にどれくらいの間なんです?」


ラミロはルイスの表情が一瞬強張ったのを見逃さない。



「いや……、数ヶ月、とか……?」


「レ、レオ……!」


ラミロがやばいと思ってレオに忠告を入れようとしたが、どうやらそれは間に合わなかった。



「あなた達、一体何を考えているんですか!! 名の知れた空賊の一味を背負うあなた達が、部下を放り出してそんなにも長く船を空けるとはどういう神経してんですか!? だいたい、あなた達がふわふわとどこかしら勝手に出てく度に、わたしがどれだけ苦労を重ねているのかを知らない訳ではないでしょう!?」


突如として、穏やかな雰囲気から豹変したルイス。


彼の凄まじい説教が始まる。


この船で怒らせると一番怖いのは実はルイス・カミュ船医、この人なのである。


普段は女神のように優しいが、一度怒らせると、黒い悪魔と呼ばれるレオでさえ

お手上げなのだ。



「せ、先生、まあまあ落ち着いて、ね??」


必死のラミロ。


「これが落ち着いていられますか!? わたしはいつもあなた達の尻拭いばかり……!! いい加減堪忍袋の緒も切れて切れて切れまくってますよ!!」


すっかりぷっつん切れてしまったルイスは、怒り心頭に達していて、座っていた椅子にメキメキと軋みを立ててその指を食い込ませている。


「ち、違うんです。今度ばかりはちゃんとした理由が……」


焦って弁解するラミロ。


「ル、ルイス。いつもこの馬鹿ラミロが迷惑をかけまくっちまって、ほんと申し訳ねぇ限りだ」


レオが顔を強張らせ、ラミロを指差す。


「いやいや、そこ違うだろ」


思わず突っ込みを入れるラミロ。


そして、レオはようやくルイスに事の事情を話し始めるのだった。




「昨晩のソウシン国とヘルシオン王国の空域の境で、不審な飛行船が一隻見えるってんで、俺とラミロがファルコンとイーグルで偵察に行ったよな?」


「ええ」


ルイスが腕組みして小さく頷いた。


「俺達が見た飛行船は、ヘルシオンの軍用飛行船だったことも話した筈だ」


「ええ、聞きましたとも」


落ち着きを取り戻してきたルイスに、レオは続ける。


「で、実はあれには続きがあってよ。いらん心配をさせねぇでおこうと黙ってたが、俺達はあの時ヘルシオンの軍用飛行船から攻撃を受けた」


黙ったまま、ルイスが片眼鏡をくいと引き上げる。



「好戦的なソウシン国との空域の境で、俺達みたいな、たかが空賊の一人や二人に向けて発砲すっか、普通?」


「妙ですね……」


片目と閉じ、ルイスが難しい声で頷いた。


「やっぱり先生もそう思う!?」

ラミロは何やら考え込んだルイスの表情を見つめる。


「ええ、妙ですよ」


もう一度そう言ったルイスに、


「だよな?」


とレオは返した。


そして、片手でウィスキーボトルを掴み、空になったグラスに琥珀色のそれを注ぐと、レオはそのグラスの底をテーブルに滑らせ、ルイスに差し出す。


「いや、まだ仕事が残っていますのでわたしは結構」


「で、俺はこう考えた。奴ら、何かを探し回ってやがる、と」


ルイスの口に入らなかったウィスキーを、ぐいと一口で飲み干すと、レオはまたウィスキーボトルに手を伸ばす。



「なるほど」


高いアルコール度数により、レオの喉が一瞬にして熱くなる。


レオは、ビールとはまた違う、この感じが堪らなく好きだった。



「ははん、話が少し読めてきましたよ? つまりこういうことですか? ヘルシオンが探し回っている何かを探し、先に手に入れると?」


目を細め、ウィスキーの余韻に浸っているレオをにルイスは見つめた。


「ご名答」


ぽんと平手を打ち、レオが片目を閉じる。

 

「で、二人が一度にビアンカを離れ、あれこれ嗅ぎ回ろうって魂胆ですか」


「まあ……、そういうことです」


ラミロがテーブルに手をつき、にへらとルイスに笑いかけた。




少しの沈黙が流れ、ルイスが口を開く。



「取り敢えず、事情はわかりました。いつものように、賭け事、女遊び、

レース観戦なんかのくだらない理由ではないということですし……」


ルイスの言った言葉の中に、一言聞き捨てらないものが入っていたことに対して、ラミロは慌てて否定をしようとする。


「えっ、ちょっと待った、先生。俺は女遊びなんか……!」


ところがレオの、


「小せぇことは気にするな、副船長よ」


という言葉によって、その余地は無残にも切り捨てられてしまった。


すこし口を尖らせてレオを睨むラミロ。


とまあ、ルイスはそんな掛け合いにも馴れている為、無視を決める。



「仕方ありませんね……。留守を預かりましょう」


ルイスの了解が降り、レオは満足気に頷いた。


「さっすが先生! 男だよな!」


ラミロは笑顔で指を鳴らした。



調子に乗る二人に、ルイスは釘を刺すのを忘れない。


「但し、一年以内には二人とも必ずこの船に戻ること。それから、定期的に二人の居場所や情報をこちらに寄越すこと。何かあれば、すぐにでも拾えるように、この船は常にあなた方の近くにいる必要がありますからね」


「ああ、分かった」


レオは真面目な顔でルイスを見る。


そしてルイスはもう一度強く釘を刺した。


「いいですね、二年ですよ。イ・チ・ネ・ン! もしも何か月も連絡がないだとか、二年以上船に戻らないなんてことになったら、わたしは無断でこの船をおりて船医を辞めさせていただきます。勿論、船長代理もです」


ラミロは苦笑を洩らし、頷く。


黒い悪魔と呼ばれるレオに、こうもはっきりと啖呵を切れるのは、おそらくこの船で唯一このルイス・カミュ船医一人だけだろう。


「よっしゃ、そうと決まればすぐ出るぜ」


レオはがたりと椅子から立ち上がった。


思い立ったらすぐ行動。これが空賊船ビアンカ号の黒き悪魔と呼ばれる船長レオだ。



「アイアイサー!」


ラミロは白いシャツを腕捲りをして、その目を爛々と輝かせるのだった。



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