表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界配達は心の中まで!~凸凹コンビが、笑いと涙で想いを届けます~  作者: ふみきり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/35

第19話 帰還報告

 夜明けの光の中、ルイたちは再送課の詰所へ戻った。

 入室前に一声掛けるも、中から返事はない。


 室内をそっとのぞき込むと、主任が机に突っ伏していた。書類の山を枕にして、完全に寝落ちしている。

 カップの中のコーヒーは、もう冷めていた。


「主任、ただいまですー!」

「……むにゃ。報告は三行以内で」

「もう! 寝ないでくださいってば!」

「寝ながら働けたら理想なんだがな」


 ミナが両手を腰に当てて、頬をふくらませた。


「じゃあ、一行目、“ただいま!”。二行目、“ちゃんと起きて!”」


 ミナはそこで一旦間を置くと、今度は声量を柔らかく抑えて続ける。


「三行目、“コーヒー、淹れ直しましょうか?”」


 主任が目を半分だけ開けた。


「……最後のだけ、優しいな」

「でしょ?」


 ルイが小さく咳払いをして札を差し出す。


「第九便、再送完了。記録塔の修復も安定。心象の乱れなし」

「おう、三行でまとまってるな。いい報告だ」

「報告は簡潔にって、主任が言いましたから」

「それは俺が寝てるとき限定の話だ」


 ミナが笑ってクッキーの箱をテーブルに置く。


「じゃあご褒美タイム! 主任もどうぞ」

「お前な……俺のデスクを菓子置き場にするな」

「甘いもの食べると、元気になりますよ?」

「お前の“元気”の基準は、どうも信用できねぇんだよな」

「ひどい!」


 ルイは苦笑しながら書類をまとめる。


「主任、塔の修復記録。詳細は札に転送済みです」

「見た。よく戻ってきたな」

「主任も、応援ありがとうございました」

「応援? 俺は寝ながら祈ってただけだ」

「その祈りが効きました!」

「……お前のポジティブさ、羨ましいわ」


 主任があくびをして、背もたれに体を預けた。


「お前ら、ほんとによくやった。“帰ってこられた”ってだけで、今回は満点だ」


 ミナが少し黙り、ルイの方を見た。

 ルイは手綱を束ねたまま、穏やかにうなずいた。


「主任、次の便はなんですか?」

「お前、もう次の仕事の話か」

「はい、勢いが冷めないうちに!」

「働きすぎは、馬にも嫌われるぞ」

「じゃあ、霊体馬の休憩時間に合わせます!」

「そういう意味じゃねぇ」


 ミナが笑って肩をすくめる。

 主任が机の上からメモをつかみ、ぽんとルイの胸に投げた。


「休暇届。三時間だけな」

「短いですね」

「うちはブラックじゃなくてグレーだ。安心しろ」

「どこに安心要素が!」


 ルイがふっと笑い、札を受け取る。

 ミナは両手を合わせた。


「でもね、みんな無事で、ちゃんと帰ってこられた。それだけで、もう勝ちですよね」


 主任が小さく笑った。


「……そうだな。報告完了、再送課、通常業務再開」


 ルイたちは敬礼する。

 窓の外では、霊体馬が鼻を鳴らし、朝の光を浴びて尾を揺らした。


「ルイ、次の便、どんなのが来ると思う?」

「さあな。けど――」


 ルイは外を見上げた。


「たぶん、“心の中”関係だ」

「出た! タイトル回収!」

「主任に伝えとけ。宣伝文句は完璧だって」

「はーい!」


 笑い声が部屋に響いた。

 風鈴が鳴り、朝の空気がゆっくりと流れ込む。


 仕事は、今日も続く。


 ――今日も、心の中までお迎えにあがります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ