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第8話 ナスのヘタと、鑑定書と、麻婆ナス

 次の日、俺はユークスと墓場で待ち合わせる事にした。

 地蔵様にインゲンを供える。

 境界の向こうの背景が墓場に変わった。


 まだ、ユークスは来ていない。

 俺はユークスを独り立ちさせる為に何が出来るか考えた。

 それには実験が必要だ。


 段ボール箱にインゲンと100均で買ったグッズを入れた。


「おすそ分けスタンピード」


 発動しないな。

 100均で買ったグッズが不味いのだろう。

 分かっていたさ。


 段ボール箱を台車に載せて。


「おすそ分けスタンピード。これも駄目か」


 分かっている。

 たぶん意識の問題だろう。

 台車を売り物にすると考えたのがいけないのだな。

 ただの運ぶ物と考えたら、たぶんいけるのだろう。


 仕方ない段ボール箱に、インゲンと乾燥させたナスのヘタを入れた。


「おすそ分けスタンピード。おっ、出たな。ナスのヘタは畑で採れたものだからだな」

「おじちゃん、おはよう」


 ユークスが来た。

 さて忙しくなるぞ。


「これから、薬を作る。材料はこれだ」


 俺は乾燥させたナスのヘタを見せた。

 これは近所の人に頼まれて作っていた物だ。

 その人は亡くなったんだけど、作るのを辞める踏ん切りがつかなかった。

 誰か使うかもと思って今も作っている。


「薬草なの」

「口臭を緩和させる作用がある」

「へぇ」


 街に行って、ユークスが鍋を借りる。


「いいか、商売するには身ぎれいにしないといけない。洗浄の魔法を自分自身に使え」

「綺麗にすると仲間外れにされるんだ」


 そんな理由でしてなかったのか。


「仲間にも洗浄の魔法を使ってやれ。そうすれば仲間だろ」

「でも、魔力がなくなると稼げない」

「その為の薬だ」

「うん、そうだね」


 石で簡単なかまどを作り、ナスのヘタの煮汁を作った。

 市場の一角で薬を売り始めた。


「口の匂いが取れる薬はどうですか!」


 俺が声を張り上げるが、さっぱり売れない。

 甘かった。

 チョイスを間違ったか。

 ヤーコン茶の方が良かったかも。


「売れないね」

「しようがない飯にしよう」


 俺はプラスチック容器から麻婆ナスを取り出した。

 借りたフライパンで温める。

 辺りに良い匂いが立ち込めた。

 ユークスがごくりと唾を飲んだ。


 しまった、ご飯を持ってくるべきだったな。

 まあパンでも良いか。


 ユークスはスプーンで、俺は麻婆ナスを箸で食う。

 口の中に広がる辛み。

 そしてにんにくの香り。

 ひき肉がコクと旨味を出し、ナスがさっぱりさせる。


 やっぱり、調味料が沢山あると違うな。

 ユークスを見ると麻婆ナスをハフハフ言いながら食べていた。

 熱いし辛いからな。

 慌てずにゆっくり食っていいんだぞ。


 パンに挟んで食う。

 これもなかなかいけるな。


 匂いに釣られて、いつの間にか客が集まってきていた。


「その料理を売ってくれ」


 客の一人がそう言って俺に詰め寄った。


「これは売り物じゃねぇ。帰った帰った」

「じゃこうしよう。俺がその薬を鑑定して、鑑定書を書いてやる。それで、どうだ」


「そういう事なら良いか」


 俺は麻婆ナスとスプーンを差し出した。


「おおっ。これは辛い。辛いがなんという旨味だ。こんな料理は食べた事がない。店主、料理上手だな」


 麻婆ナスの素が美味いだけで、俺はほとんど何にもしてない。

 それは言わぬが花だな。


「十分食ったろ。鑑定してくれ」

「よし、【鑑定魔法】。本当に口臭を緩和する薬効があるのだな」

「まあな。嘘は言わない。商売の基本だ」


 鑑定書が出来てからは、ぼちぼちと売れる様になった。

 コップ1杯で銅貨1枚だが、ナスのヘタなんてゴミだからな。

 廃物利用だし元手は掛からない。


 夕方になるまでは薬も売り切った。


「おじちゃん、ありがと」

「じゃ洗浄魔法を掛けてくれ。どんなのか興味があったんだ」

「いくよ。【水魔法、洗浄】。おお、さっぱりするな。この世界も捨てたもんじゃないな。ユークス、他の水魔法は使えないのか?」

「お母さんに、これしか教わらなかった」

「金を貯めるんだな。勉強しろ。きっと役に立つ」

「うん」


 持って来たナスのヘタは一年分ぐらいある。

 乾燥さえ気をつければ保存は大丈夫だ。

 たまにユークスには会いにくる予定だが、これでなんとかやっていけるはずだ。


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