第51話 捜査と、才華と、ツルムラサキの豚肉炒め
Side:刑事
「先輩、捜査外されたからって。暗いですよ」
「俺の言っている事は間違ってない。あいつが覚せい剤中毒に見えるか」
俺は畑山創太の事件から外された。
地球の滅亡の話なんてするんじゃなかった。
俺だって地球滅亡は信じていない。
だが、動機解明には言っている言動は重要だ。
嘘を吐いていても、その逆を言っているとか、何かしら手掛かりになる。
嘘にも真実が隠されているってもんだ。
地球滅亡なんて話をするのは頭がおかしい。
だが、光る豆はなんだ。
あれは地球滅亡と同じぐらいの秘密が隠されているはずだ。
俺の勘では、何かしらの不思議な力はあるんだろう。
仮に魔力と呼んでもいいが、とにかく魔力はある。
それを検出できないからと言って戯言と決めつけるのもどうかしている。
覚せい剤の証拠も怪しいもんだ。
「何かがおかしい」
「覚せい剤を見つけた刑事。金一封もらったそうです」
「何でもいい証拠を持ってこいと署長が発破を掛けていたが、あの渋ちんの署長がよく金を出したな」
「噂では圧力が掛かったそうです。なんとしても起訴して裁判に持ち込めと。その噂には続きがあって、上手くやったら出世できるらしいですね」
「出世に釣られたか」
「聞きました? あの才華が畑山創太の彼女になったそうです」
「何だと。何が起きているんだ」
福耳才華はこの間まで鑑識に勤めていた。
可愛い顔をしていたが、付いたあだ名はピラニアの災禍。
興味をもった事件の証拠は100%揃える。
聞いた話では、中学卒業と共に大学に入り、博士号を取ったとか。
大学を二つ出て、医師免許と弁護士資格を持っている。
天才という奴だが、性格もぶっ飛んでる。
噂では、盗聴、証拠の捏造、非合法な薬や武器、何でもありだという。
恐ろしいのは、証拠を一切残さない事だ。
警察に提出された証拠も正規の手続きに則っている。
あのサイコ野郎が、畑山創太と手を組んだのか。
いいや、畑山創太を操縦しているに違いない。
「先輩はワイドショー見ないんですね。モザイク掛かってましたが彼女でしたよ」
「ワイドショーなんて見てられるか。魔力の事を調べるにはどうしたら良いと思う?」
「魔法使い、陰陽師、霊能力者、ここら辺りだと思います」
「そんなやつらは偽物だろう」
「まあそうですね」
「本物はいないのか!」
「いませんね」
どこから、手をつけるべきか。
豆の分析は大学でもやっている。
俺の頭でどうにかなる問題じゃない。
科学からのアプローチは駄目だな。
かと言ってオカルトは駄目だ。
マスコミもその方面を検証しているはずだ。
胡散臭い奴に声を掛けたに違いない。
ワイドショーを見ている後輩が本物はいないと言うのだから、その通りなのだろう。
とにかく全てを疑ってみるべきだ。
確かなのは何人も病人が治っている。
それに最初の時は迷うという不思議現象と姿が見えなかった。
やつは何を考えている。
それとも畑山創太は影武者で才華の野郎が本ボシか。
魔力というのはホラで、科学力の産物か。
畑山創太は才華に嘘の話を信じ込まされたのかもな。
そういうストーリーなら納得できる。
薬を開発した才華が手軽に試してみたかったのか。
あの女ならやりかねない。
だが、証拠がない。
そうなんだ。
奴は証拠を残さない。
つきまとえば、訴えられるだろう。
彼女の部屋に盗聴器を仕掛けた奴は、刑務所に入っている。
呆れた事に学生時代からの余罪全ての証拠を出されてな。
俺だって若い頃は悪い事をした事もある。
時効だが、ほじくり返されれば、分が悪い。
とにかく才華が本ボシで間違いないと思う。
話だけでも聞きに行くか。
Side:創太
今日はツルムラサキが沢山採れた。
豚肉と炒める事にした。
切ったツルムラサキを豚肉と炒める。
味付けは焼肉のタレだ。
ニンニクと味噌が利いていて美味い。
「いい匂いね」
「焼肉のタレを使ったからな」
付け合わせは、レタスとキュウリと玉ねぎのサラダだ。
昼飯の残りのゴーヤのキムチ炒めも出した。
「頂きます」
「頂きます。今日はプレゼントありがとう。それと刑事が私の所に来たわ」
「何かトラブル?」
「どうやら私が黒幕だと思っているみたいね。適当に誤魔化しておいたわ」
「そうなら良いけど」
俺は食事を始めた。
ツルムラサキのほうれん草に似た味と、豚肉が良く合う。
肉汁と焼肉のタレが絡んで堪らん。
ご飯が進む。
今日は良い日だった。




