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第19話 ダンジョン戦と、餌付けと、豚丼

 台風はそれた。

 八丈島の方へ行ってしまった。

 恵みの雨も昨日で打ち止め。

 残念な面もあるが、良かったと思う面もある。

 風が吹くと、野菜が風であおられて、ダメージになる。

 インゲンなんか、根元がぽっきりとか、あるぐらいだ。


 気になっている事がある。

 ナスを供えた時の暗闇空間だ。

 バグみたいな物だと思うけど、何となく気持ちが悪い。

 それで、ナスを供えてみた。


 境界付近には直立歩行の豚さんが押し寄せていた。

 オークという奴だろうな。


「腹減った」

「目的地には何時着くんだ?」

「久しぶりのダンジョン戦だってのに」

「とにかく腹減った」


「おーい」


 俺は声を掛けてみた。


「畑があるぞ」

「幻か」

「目的地のダンジョンか?」


「言っとくがここへは入れないぞ。準備中なんだ」

「直ちにダンジョンを開け」


「開いたら攻めて来るんだろう。それは嫌だな」

「餓死を待つという戦術をとるのか。我々に打つ手はない」


「餓死は可哀想だから、冷蔵庫に保存している色々な食べ物を振る舞ってやろう」

「くっ、敵に塩を贈るのか。悔しいが、仕方ない」


 俺は佃煮とか、切り干し大根とか、凍っている甘く煮た豆など、とにかく備蓄している保存食を放出した。


「美味いぞー。魔力が満ちて来る」

「ダンジョンの支配が解けている」

「我々はどうしたら良いんだ」

「攻める事が出来ないのなら、戻ろう。ダンジョンの命令から解き放たれた今なら戻れる」

「戻ってどうするんだ。裏切り者として処罰されるぞ」

「じゃあ反乱しよう。さっき貰った食べ物は、まだ余っている。他の奴らに食わせれば、味方になるはず。ダンジョンマスターを退治して、ダンジョンから出られるはずだ。歯向かう奴は皆殺しだ!」

「良いな」

「賛成だ」


「ちょっと待ったー!」


 俺は叫んだ。


「何だ?」

「他の奴らを殺さないでくれ。食べ物を食わすだけなら、殺す必要はないだろ」

「なるほど」


 納得してくれたみたいだ。

 オーク達が去って行った。


 豚丼が食いたくなった。

 麺つゆは常備している。

 豚肉と玉ねぎを麺つゆで煮て、お手軽豚丼だ。

 ご飯の上に盛り付けて、ねぎをパラパラと掛けて完成だ。


 食ってみる。

 煮込みが足りないので、チェーン店のより味は数段落ちる。

 タレもチェーン店には敵わない。


 だが、有機無農薬で育てた玉ねぎは甘い。

 まるで砂糖を入れたようだ。


 麺つゆの甘じっぱさに、玉ねぎの甘味が加わり、しゃぶしゃぶ用の豚肉が極上の肉汁を出している。

 味では負けるが、素材では勝っている。

 力技料理と言うべきだろう。


 瞬く間に完食してしまった。

 オークを食いたいとか思った訳ではない。

 豚の顔を見てこの料理が浮かんだだけだ。


 そして、いつの間にか、境界は石で出来た入口に変わっていた。

 大きいオーク一人が入口から現れ、家庭菜園に足を踏み入れた。

 あれっ、どうなっているんだ。


 ここへは入れないはずだ。


「初めてお目に掛かります、ダンジョンマスター様」

「俺がダンジョンマスター」


「そうです。私が前のダンジョンマスターでしたが、無理やり食い物を口に入れられ。ダンジョン戦の勝負が着きました」

「そうか。どういう事か分からないが、よろしく」

「勿体ないお言葉、てっきり私を殺す物かと」


「いや殺さないよ。だって、ダンジョンマスターだったんでしょ。その経験は役に立つと思うんだ」

「何でもお聞きして下さい」


「まずは名前だな」

「オークキングです」

「それは名前じゃないな。じゃあ、豚平(とんぺい)を名乗れ」

「はい、ありがとうございます」


「聞きたいのはこれから何をしないといけないかと言う事だ」

「ノルマの囁きに従うだけでは」


「ノルマの囁き? 一度も聞いた事がないな」

「ノルマが足りないと、精神に働きかけてくる物です。何のノルマかと言いますと、魔力の放出です」


 ダンジョンは魔力を放出する為の設備だったのか。


「魔力の生産はどうするんだ?」

「ダンジョンで殺されたすべての者の魂が魔力になります。冒険者もモンスターもです。余力をそぎ落とされた魂は生まれ変わります」

「そんなシステムになっていたとは。作った魔力はどうやって放出するんだ?」

「アイテムとスタンピードによってです」


 えっと、アイテムとスタンピード?

 散々放出したな。

 ノルマを果たしているのか。

 そうか。


 謎が解けたな。


「俺のダンジョンは今どうなっていると思う」

「配下になったオークのダンジョン共々、準備中だと思います」

「少し考えたい」

「ええ、ゆっくり考えて下さい。時間はあります」


 配下のダンジョンが増えたよ。

 えっと、ダンジョンのモンスターは戦って死ぬのが役目だったんだな。

 悲しい人生だな。

 その人生に(いろどり)を与えてやりたい。

 そうだ。

 農業させよう。


 農業は良い。

 煩わしい人間関係など関係ない。

 近所付き合いはあるが、これだってシャットアウトしたければ出来る。

 放っておいてくれと言えば済む事だ。


 思考がそれた。

 とにかくオークダンジョンは、準備中ダンジョン農園に生まれ変わるんだ。


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