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猫魔王がコイツと牛丼屋に行くにゃん!

 

 コイツに連れられた我はグンマーの里に降りた。目的は飯を食いに行くと言っておったが、キャットフードより旨い飯が人里にあるのか、はなはだ疑問じゃな。

 ましてや人喰った方がマシかも知れぬ。

 だから我は人喰いたいと言ったら、コイツに睨まれ『お前、殺すぞ』と脅迫台詞付きでな。化け猫ジョークも通じんとはおー怖っ……。

 さて、我は大人しくコイツのあとについて行くことにした。するとコイツが立ち止まってうしろを振り返る。


「おいっ……」

「なんじゃにゃん?」

「俺のうしろを歩くな! 万が一背中を猫の爪でバッサリ斬られたら敵わんからな……だから前歩け」

「そんな卑怯なことしないわ若造め……」

「フンッ、どうかな?」


 無愛想で失礼な男だ。コイツ絶対友だちおらんだろ。まぁクソムカつくが、また強制お座りされたらたまらんの大人しく前を歩くことにした。

 しかしいざ前を歩くと我は偉くなった気分だ。それで調子に乗って肩切って歩くと、うしろからコイツに『偉そうに歩くな』と言われ頭を小突かれた。

 猫魔王になんて仕打ちだ。いつかスキを見て殺してやる。


 しばらく歩くとコイツは、駐車場に停めてあったホルクスワーゲンとか言う軽自動車の前に立った。どうやらコイツの車らしいが、無愛想な男には不似合いなカナブンみたいな可愛い車だな。

 先ほど聞いたが奴いわく、燃費もいいしコンパクトだからいいと言っていた。ま、どうせデカい高級車買う金がない言い訳にしか聞こえなかったな。


 コイツは我に乗れと言うので後部座席に回ったら、そこじゃないと言われ、助手席に座れと命令された。コイツロリコンかと警戒したが、どうも後部座席だといつ我に攻撃されるか気が気じゃないかららしい。要するにコイツは我に背中を見せたくない臆病者なのだ。


 我は仕方なく後部座席に座ると、またしてもコイツがシートベルト締めろとブツブツ言ってきた。

 まぁ命令に逆らえないので慣れないシートベルトに悪戦苦闘してると、コイツが舌打ちして締めるのを手伝った。

 我はしばらく山に篭っていたから、近代文明の仕掛けなど分かるわけないだろ。それを苛つくなど言語道断っ全く性格最悪な奴だ。


 あそうそう、コイツが助けた保健所の男を後部座席に乗せて車を走らせた。

 街に到着すると途中で保健所の男と別れた。その際コイツは礼としてお金を受け取っていたな。全く見返り目的で男を助けたのかがめつい奴だ。

 またしばらく走って目的の飯屋の駐車場で車を停めた。


「着いたぞ。飯を食うぞ」

「我も飯食っていいのかにゃ?」

「チッ、本当はお前なんかに金使いたくはない。だが、空腹のあまり人を襲ったら面倒だ。だから仕方なくだ」

「我が無闇に人を襲うわけないにゃん」

「どうかな……とにかく車から降りろ」


 コイツが運転席から降りると乱暴にドアを閉めた。仕方ないので我も降りて店の看板を見あげた。


「ファーストフードすっき屋ねんとはどんな店にゃ……」

「牛丼屋だ。ほら店内に入るぞ」


 我はコイツに背中を押され入り口のドアを引いて入った。中には客がいて賑わっていた。

 しかし高級店とは程遠い庶民的な内装だな。


 コイツは空いている席を見つけ真っ先に片側ソファーに座った。それで我は背もたれもない椅子に座らざる得なくてなんだか気分が悪い。

 コイツは無意識に気を使わないし、マウント思考のクズだと分かった。

 控えめに言って死ね。


 でコイツがメニュー表を見てから店員を呼んだ。


「注文はお決まりでしょうか?」

「ああ、高菜マヨネーズチーズ牛丼セットを二つ」

「はいっかしこまりました」


 女の定員が注文を受け取ると厨房へと向かった。しかし我も同じ品とはな。仲良し気分かよコイツは……。


「しかし妙な牛丼選んだにゃ?」

「フンッ悪いか?」


 すぐむつける。好意的に考えられんこの男は本当に性格が悪いな。だからイケメンだからって彼女がいるとは限らん一例だな。

 おっと、そんなこと考えてたら品が届いた。牛丼は知っている。しかしその牛丼の上に高菜とマヨネーズとチーズらしき黄色いのが乗っている。

 とりあえず我は箸を取って食べようとすると、コイツにまずはサラダを食べろと支持してきた。

 人の食べ方を指図するとは面倒臭い奴だ。飯位好きに食わせろ。


「サラダにはオニオン和風ドレッシングが合う」


 コイツはそう言ってテーブルの脇に置かれた小瓶を取り出しサラダにドバドバ掛けた。


「おみゃっ掛け過ぎにゃ……」

「一般掛けた方が美味いんだ。どうせタダだし」


 だからって掛け過ぎだ。あとから来た客や店にも迷惑掛けるとは何故想像出来ない? 

とにかくドレッシング掛け方次第で人間の品性分かるとは興味深い。我は普通に掛けたが本来草など食べない。

 だが意外と美味かった。普段肉しか食べない我だが、たまには草もいいな。


 さて次はいよいよ牛丼だな。我が食べようとすると、コイツが先ほどのオニオン和風ドレッシングをあろうことか牛丼にドバドバ掛けた。

 しかし、草に掛けるドレッシングを肉料理に掛けるのかと我は目を疑った。

 しかも無料だからと言って、容器の中身が半分になるまで掛けるとは非常識な男だ。

 どんな教育受けてきたのか親の顔見て見たいわ。


 さて、コイツはドレッシング掛け牛丼を箸で混ぜてやがる。もうぐちゃぐちゃだ。

 そして箸で摘んで一口食べた。


「むしゃむしゃ……うっめ」

「にゃっ……」


 美味いのは分かったが、責めて具体的に話せよと思う。まぁ一人で能書き垂れながら気取って食う奴よりかはマシか。

んで我はコイツに『ドレッシング掛けてみろよ。うめえぞ』とバカ飯を勧められたが無視した。

 初めて食べる牛丼に味変なぞしたら、本来の牛丼の味が分からぬわ。しかしまぁ、この品自体高菜とマヨネーズチーズ乗せのイロモノ牛丼だが……。


 とりあえず直接齧りついた。


「うむっ!」


 口に入れた瞬間マヨネーズの濃厚な味と酸味が舌に伝わり、牛肉の旨味と高菜の塩っぱい酸味とカリッとした歯応えが合わさり、この上なく美味しい。


「これはうみゃい!」


 これは箸なぞ使わずスプーンなる物で掬って食べた方が良いな。まぁ本当言うと、グローブみたいな攻撃特化の手では箸が持てない。

 だから我は牛丼を口に掻っ込み猫食いした。


「下品な食い方するな駄猫が……道具を使え」

「フンッ黙れ、お前を殺すのに特化したこの手では道具を上手く持てぬのよ……にゃん」

「チッ駄猫が」


 我にあきらめたのかコイツがソッポを向けた。


「うにゃ〜たまには人意外の食いもんも旨いにゃぁ〜〜……」


 思わず人意外の食い物と言ったが、ちびっ子の言うこと誰も間に受ける者はいなかった。

 大昔なら陰陽師や侍に退治されていたところだが、目の前のコイツを除いて現代人は弱いからやりたい放題。

 なんて天国なんだ。


 さて牛丼を完食した我は味噌汁を啜ってから、熱々のお茶を飲んで満足し余韻に浸った。


「行くぞ」


 コイツが席を立った。


「ちょっと待つにゃっまだお茶がっ」

「無料のお茶なんぞ飲んでるヒマがあるかよ。今日は次の仕事が待ってんだ。ほら立て行くぞ」

「にゃんっ!」


 服従の首輪のせいで身体が意志と関係なく席を立って歩き出した。悔しいがゆっくりお茶を飲ませてくれないらしい。

 絶対服従の首輪のせいでコイツに逆らえない。だがいつか、コイツがスキを見せた時殺してやる。


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