75.剣豪カルファリア・パレスリーⅠ
私の剣技の実力が露呈したのは、十二の頃だったと思う。
国の先導騎士団長を務める剣豪カルファリア・べレイスと、エレオノーラ王妃の護衛をしていた剣士クララ・リシュエルのもとに産まれた私は、血筋の通りと言うべきか、幼い頃から剣術に強い興味を抱いていた。
祖父や両親は私に剣術を強制しなかったけれど、私が剣術への純粋な好奇心を持っていると判断したようで、色々と教えてくれた。
ただひたすらに、私は剣が好きだった。剣を作る金物職人の父を横で見ているのも、剣を使って戦うのも、大好きだった。
私は先導騎士団の人達に、何度も稽古をさせてもらった。王妃殿下の護衛をしていた母にも、先導騎士団長の父にも、そして引退した剣豪であった祖父にも。ただひたすらに剣術が好きで、楽しくて、毎日剣を握り続けていた。
十五になったとき、私は成年と同時に先導騎士団に入団し、母クララの地元である隣国が巻き込まれていた戦争に出た。
騎士団長を務めている父は私に行かせたくはなかったようだけど、先導騎士団は人員が少ないためやむを得ず、加入から僅か四ヶ月後に、私は戦地に向かった。
人を殺した。殺らなきゃ殺られる。それを分かっていたから。
何も感じなかった。人を殺しても何も思わなかった。任務であれば、指示であれば、平気で人を殺せる自分に、少しだけ吐き気がしたけれど、殺すこと自体には何も感じなかった。
私達が力添えをした戦争は、隣国の勝利となった。それにより、ますます先導騎士団の評価が上がったとともに、今までは父のコネだと思われていた節があった私も、実力者であるのだと周囲に言われるようになった。
それから私は、騎士団長である父の溺愛ぶりと、国の王家に王女がおらず王子二人しかいないことから『剣姫』と呼ばれるようになった。その呼称はやがて、団員から国民へと広まっていった。
加入から参戦まで時間がなかったから遅れたけれど、そのときに私は王家の紋章が入った剣を頂くことになった。柄に薔薇の模様が描かれた、白のロングソード。これを初めて手にした時は、自分の名が此処まで重いものになるだなんて考えてもいなかった自分の覚悟の浅さを知った。
そしてその一年後、私は国に紛れ込んでいた他国のスパイを見破ったことで、更に名が知られるようになっていった。
その一件が、私を大きく変えてしまった。




