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58. 全集落交流会 Ⅴ


 黒髪の男は、私達の姿に気付いても表情を変えず、ツンと澄ましたままローブを翻して歩み寄ってきた。彼に連れられていた少女は、他の女の子たちを見つけると、そちらへ一目散に泣きながら駆けていった。

「変わりないな。」

 男に向かって、集落『ボートレーン』統領のヨノムが声を掛けた。それに対して男はただ一言「当たり前だ」と返すのみだった。

 その声が、この場にいる誰よりも大人びたもので、そのはずなのに耳に触れたことのある声で、それに戸惑いが色濃くなってしまう。

 ぱちりと、目線が合致した。……けれど、男は私からふっと目を逸らしてしまった。

「お前、名前は?」

 集落『スファラ』のエリエが、不機嫌そうに男に尋ねる。エリエを一瞥した後、薄く口を開いて「セドリック・アイリーン」と答えた。

 集落『ミシュア』統領のリュルバレスタが、訝しげに首を傾げる。そのまま、まるで可哀想なものでも見るかのように、軽く笑った。

「……いや、セドくんでは、ないよね、キミ。……名前は?」

 リュルバレスタが尋ねて、無表情だった男は微かに顔を歪めた。

「洗脳されていたわけではない、か。」

 ヨノムが、とりあえずといった様子の安堵を口にする。セドリックと名乗った男は、リュルバレスタやヨノムの視線を遮るように手を振り払った。

「言いたいことは分かるが、此方には此方の事情がある。あまり立ち入らないではくれないか。」

 男の言葉に、ヨノムとエリエが小さく呆れたような溜息を吐いたのが分かった。リュルバレスタは、未だ哀れな者を見るような目をしていた。集落『ワイズラード』統領のソロウトのみ、何を考えているのかが分からない表情で男を見ていた。

「立ち入りはしないよ。でも、キミの名前くらいは、教えてくれてもいいんじゃない?」

 リュルバレスタが、再度問う。それに対し、男は厄介だとでも言いたげに無視をした。

「まあいいさ。何かカワイソウな理由があるってことだろ。大方、予想はついているが。セドリックと呼んでやってもいいじゃないか。」

 ヨノムが、わざとらしくそう言った。男はなんだか腑に落ちない顔をしたものの、背に腹は代えられないと思ったらしくだんまりを決め込んだみたいだった。

「じゃあ、そんなこんなで全員集まったし、話し合いを始めようか。」

 ヨノムが、男から視線を外して皆に声をかけた。

 何やら真剣な話し合いが始まったタイミングで、私は束の間の安堵に涙を流す少女たちの側に寄っていった。


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