表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/77

54.全集落交流会Ⅰ


 乾いた砂丘の上に広がる、星屑が散りばめられた夜空。この空を日常と捉えるようになったのはつい最近のはずなのに、慣れ親しんだ世界のようだ。

「ここら辺だと思ったんだけど……。まだ来てねぇのか。」

 砂地に降り立ったエリエの横で、私は蹲っていた。何も言えずに。

「いきなり飛ぶなんて聞いてないわよ……。ちょっと酔ったんだけど……。」

 私の震えた声に、心底驚いたと言いたげな声がぶつかってきた。

「高い所からは自分から跳ぶくせに、空を飛ぶことには耐性ないのかよ。」

「あるわけないでしょう!!」

 いや、まさかね、横抱きにされたまま、剛速球で空中散歩するなんて思わないじゃない。誰が慣れるか。横抱きにされるくらいなら、私がエリエを持ち上げた方がよっぽどましだわ。

「まあ、体調落ち着いたら移動するか……って、ん?」

 耐え切れず座り込んだ私の隣で、エリエが遠くに目を凝らしたのが分かった。そのまま「うわ……」と、いかにも嫌そうな声が聞こえた。

「あれは……、『ボートレーン』か。ヨノムだな。」

 目を凝らしてみてみると、脛のあたりまである長いマントが靡いているのが目に見えた。そのマントの下には、肩に金のモールがある上着に、ぴったりとした黒の長ズボン、そしてダークブラウンのロングブーツを身に着けている。

 それを着ている男は、コーラルレッドに染まっている髪をゆったりと一つにまとめていた。

「彼が、集落『ボートレーン』の人?」

「ああ。……リーダーのヨノム・トルトだよ。『ボートレーン』と言えば、様々な発明品を生み出した研究家たちの巣窟だ。」

 エリエは、本当にイヤそうな顔で向こうを見た。

「そんなに嫌悪感を露わにするなんて、本当に人が嫌いなのね……。」

 私が呆れると、エリエはパッと私の方を向いてきた。

(ちげ)ぇよ。……いや違わねぇけど、そうじゃなくて。ほら、アイツの足元、見てみろよ。」

 足元?……あ、なんだか緩慢に動く、黒い影が見える。よく耳を澄ますと、小さくて高い声も聞こえた。

「無理やり連れてきたんだろうな。」

 その影が、ゆらりと身体をもたげる。すると、涙に濡れた、少女の顔が見えた。

 田舎の村娘といったところだろうか。小さくまとめた髪に、そばかすの散らばった顔が愛らしい少女だった。私よりも幾分か幼いだろう。

「どうして、無理やり。」

「……というか、アナリー。お前が異常なんだよ。普通はああいう反応になる。」

 困ったように溜息を吐かれ、私は納得する。

 忘れていたけれど、私はあくまで吸血鬼に捧げられた贄だ。その立ち位置は変わることはないし、私も生け贄としての役割を果たしている。

 だからこそ、怯えることなく冷静に生き、寧ろ楽しんでさえいる私は、吸血鬼たちから見ても異質な存在。普通なら、あんな風に、怯えて叫び、誰にも届かぬ許しを請うだろう。

 改めて、思う。……私が、いかに壊れているのかを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ