47.悪魔の呪いは指輪の裏に Ⅴ
「それぞれが何を抱えているのか、知っておきながら助けられなかった。……いや、助けようとしなかった、の方が正しいかなぁ。」
ノリスの表情は、苦しそうに歪められていた。それが痛くて、私は口を開けなくなった。
「助けてあげようなんて、傲慢だと思っていたから。……でも、言われたんだよねぇ、『やらない善よりやる偽善の方がマシだ』って。そこで、自分の愚かな判断に気付いた。」
それが誰かは、聞かないでくれと目が言っていた。私は、聞かないことにした。
「……指輪。」
「ゆびわ?」
ぽつりとノリスが零した言葉を、拾う。
彼はふう、と息をつくと、鈍色に光る彼の指輪をちらりと見せてきた。
揺らめく炎を模った、躑躅色の石飾りが付いている、ミドルフィンガーリングが右手に嵌められている。とても小さなはずのそれは、見た目以上のインパクトを残した。
「この指輪の意味、君に知ってほしい。……そして、『呪い』を解くサポートをしてもらいたいんだぁ。」
「……どういうことよ?」
半眼で睨んでみると、彼は「大したことじゃないよぉ」と朗らかに笑った。
「吸血鬼の皆が指輪を嵌めていることには、もう気づいてるでしょ?」
「ええ。」
今まで、私が出会った吸血鬼は二十人。異端者の証・白マントを背負う、E班の吸血鬼はどうなのか知らないけど、その人以外の吸血鬼は皆、それぞれ違う指輪を嵌めている。
リーダーのユーリスは無色透明の丸い石、その他は様々な色・形の石で飾られた指輪。どの指かもどの色かもそれぞれ別で、それがまた面白い。
ノリスがクッと軽く力を入れて指輪を外し、綺麗な指でそれをつまんだ。
「この指輪があることによって、ボクたちは魔力を扱える。逆に、この指輪を奪われてしまえば、何の力も使えない。」
力。スイレイ・クランナが花の名前を使う、あの魔力のことか。
「指輪の有無がどれだけの意味を為すのかは、知らなくても困るところじゃない。でも、この指輪は、気づいたときにはもうあったんだ。」
躑躅色の宝石を煌めかせて、妖艶に笑う。そのまま彼は手を離し、抵抗なく、指輪を目の前に落とした。
金属の高い音が、輪を描くように円く、響いた。
「これが、悪魔に掛けられた呪いだよ。……ボクたちは悪魔の傀儡。それを、この指輪が示しているんだ。」
ノリスの指輪に関しては、6話にてレイネルから「指輪なし」と言われておりますが、ちゃんと着けてます(ひと班のリーダーが能無しだったらえらいこっちゃなので……)。
レイネルには見えていません。次回でノリスが喋っています。




