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44.悪魔の呪いは指輪の裏に Ⅲ


【彼らの起源こそ誰も知る(よし)が無いのだが、肉体のない幻として、悪魔がこの世に生まれたときがどこかにあると仮定をする。此処には、悪魔が七体の身体を生み出すまでを記そうと思う。

 悪魔は、下界の人間共が仲間と共に生き合うさまを見て、自分も同じように暮らしてみたいと考えるようになった。物を動かして工夫し、知恵を動かし、人の感情の起伏にすらも憧れを抱いた。

 しかし、悪魔は幻影である。肉体がない。言い換えれば、その存在すら確かにあるものとは言えないのである。

 悪魔は恐怖した。自分たちが、実在していないものだということに。

 それ故に、願った。自分の身体を得て、自分の手とやらで、ものに触れてみたいと。

 身体を望んだ悪魔は、自分の身体を作り出し始めた。幾度となく失敗を繰り返しながらも、悪魔達は自分の望みをかなえるために何も惜しまなかった。

 ……その結果生まれたのが、七体の身体、七人の吸血鬼である。  __『吸血鬼と悪魔』(著:ダイス・リガード)より】


○○○○○○○○○○○○○○


「……その七人から一人を抜いた六人が、吸血鬼のまとまり、つまり『集落』の長になっている、というわけ。」

 ノリスは歌い唱えるように声で追っていた文字を閉じると、ひっきりなしに稼働し続けていた硝子ペンを漸く休ませた。パキッと手を鳴らした彼の目の前には、可愛らしく簡潔な、六人の吸血鬼が描かれていた。

「一人、抜くの?」

「失敗作だって言って、七人のうち一人は見向きされなかったらしい。生きているのか死んでいるのか、それすらも不明なんだって。」

「へぇ……。」

 抑揚なく話すノリスに対し、深い感情がこもった声も返せず、曖昧に返事をした。

 勝手に生み出しておいて捨ておくとは、残酷なものだ。

「……そういえば、集落って、何?」

 今まで普通に聞き流していたが、思えば疑問だ。この世界には、二十人しか吸血鬼はいないと言われていたはずなのに。

「複数人の吸血鬼が、城を拠点として集まっているでしょ?その集合をそう呼ぶんだよぉ。此処は集落『スファラ』。此処の他にも、五個の集落があったんだよ。」

 ……はて、あった、と。

「……そのうち一つは、全滅したんだけどね。」

 人間に殺されて、と、彼は言った。

「人間が殺した吸血鬼の身体は、悪魔が乗っ取った。集落『リウル』。当時十人以上いたんだけど、そのほとんどが死んだ。『リウル』のリーダーだったカルド・オーリットが生き残りを逃がしたんだけど、そのうち二人は消息不明になってる。」

 ……ノリスは何も言わないけれど、人間というのは恐らくトリエミア家のことだろう。

 私の幼馴染・ロードの、実家。

「集落『リウル』……。初めて聞いたわ。」

「そりゃ、中々言いづらいでしょぉ、今までは自分たちが怖がられてきたんだから。」

 それもそうね。私の態度に、みんな驚いていたのだから。

「『リウル』の話から、元の話題に戻そう。実は、『リウル』の生き残りは、此処にいるんだよぉ。」

 ノリスが硝子ペンを持ち直し、二人の男の絵を描く。それが誰かは特定できないように描いたんだろうけど、またかわいらしい絵だ。

「此処……って、『スファラ』に?」

「うん。生死不明、なんて言ってるけどねぇ。二人とも、元気だよ。」

 誰だろ、『リウル』出身者。見ただけじゃ違いは分からないけど。

ヒントもらえるかな、とノリスの方を見てみると、ニコリと笑う顔が目に見えた。

「……なにか、疑問に思うことない?」

 逆に、聞かれた。

 疑問に思うこと……?山ほどありますけど。

 吸血鬼の起源が分かっても、関係性は分からないし。

 そもそも、集落に分ける意味もわからないし。

 どうして、身体を作ろうとしたのに、個体に意識があるのかも謎だし。

 それになにより……。


「どうして、貴方がそんなに知ってるのか、よね?」

 柔く、彼の目が歪められたのが分かった。

「御名答。此処からが、本題。」

 ノリスは、そう言った。

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