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40.パンジーを手折るガーデングローブ 【修正なし】


 A班の仲間は、無理に仕事を入れて部屋から出した。その上で施錠をし、暗い闇に甘いアロマを焚いた。

 鍵を閉める音に、ベッドの上にいたパンジーが「ぁ……」と声をあげる。逃げられない、逃がす気がないということくらい、分かっていたはずだろうに。

 俺のやることに埒が明かないとは分かるが、D班のサムス・マロトも大概だと思う。あやふやで(パンジーを手折る)曖昧な隠語(ガーデングローブ)一つが瞬時に理解できてしまうほど、俺の望みに繰り返し応じてしまっているのだから。

 目の前の影は、虚ろな目のまま顔を火照らせ、乱れた息をそのままに、弱い眼光で俺を睨みつけてくる。襟元は崩れ、猫のような爪でベッドを掻いて。

「……その目は、何ですか。」

 冷たさを孕んだ声を返すと、パンジーはビクッと肩を震わせる。シャッとベッドの天蓋を引いてから、俺はそのパンジーが何か言い返す前に、唇で塞いだ。

 どうしようもなく漏れる声に、煽られる。飲み水に混ぜた媚薬(ガーデングローブ)はパンジーの頬を紅くさせたが、俺はそんなものを使わなくても、その影の声で理性を壊せてしまう。

 パンジーの手が、俺から逃げるように宙を掻く。その手も俺が奪い、更に深く、喉奥に唾液を落としていった。

「スイレイ……。」

 呻くような、啜り泣くような声を、俺は聞いていないふりをした。

 そして今日も、俺は黒百合の中に放り込まれたパンジーを手折るのだ。


○○○○○○○○○○○○○○○


 全てを片付けて、気を失うように眠るパンジーをそのままに部屋を出ると、穏やかに微笑む七三の髪が見えた。

 C班リーダーのノリス・ウォルター。悪魔との契約や取引関連を一手に担う、集落『スファラ』随一の情報通。柔らかな笑顔には計算高く強かな裏が明らかにみとめられる、そんな男だ。

 ノリスは俺を見てからふ、と笑うと、自分の人差し指をまっすぐに立てた。

「身体に刻み込んだの?そのインデックスリング。」

 その言葉に自分の手を見ると、人差し指に赤い噛み跡があった。触れれば治せるが、それを忘れていたようだ。

 これがあのパンジーの仕業であったらどれほど相好を崩したか知れないが、生憎にもこれは俺が、自分で傷をつけたに過ぎない。

 それを知ってか知らずか、ノリスは俺の方へと一歩踏み込んだ。その目は、何からか「逃がすか」と捉える鷹のようで、蛇のようで、また悪魔のようだった。

「もう、無理やり抱くの、辞めてあげなよぉ。」

 なにも、知らないようだった。

「君の相手が誰だか知らないけど、嫌がってるんでしょ?……嫌がる相手に、君のことを見ていない相手にキスして、挿れて、甚振って、楽しい?」

 まるで、奥から覗いているかのように突いてくるノリスに、俺は綺麗な笑顔で返す。きっと、彼には、俺の顔がひどく気味悪く思えているだろう。

 ノリスは、静かな声で、言った。


「あの人は、大事な人なんだから。」


 大事な、人。

 その一言に、目の前が白くなったことだけが分かった。

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