真相
長老時代のミフルは承認欲求をこじらせ、ケイの暗殺を企てた。
中央の神殿にいるケイがこのルウの地に結界を張るタイミングで刺殺するという内容だ。
神殿は泉に囲まれた小さな島にある。島に行くには、泉に浮かぶ小舟を使う必要がある。舟は一艘しかなく所定の位置になければ誰かが舟を使っているということになる。
また、ルウの民は泉に入ることは禁止されている。水が貴重な砂漠に囲まれた地で、その水源でもある泉に入ろうとする者はまずいない。
それらを逆手に取り、事件の日、ミフルは夜のうちに泉を泳いで渡り、神殿で気配を消していた。
なかなかいいアイディアではあった。ケイにかなりの深手を負わせることができた。
というこれらのアイディアを思いついたのが、実はオズだったのだ。
それだけじゃない。
ミフルが泉を泳げるように体力強化の魔法と、気配を消す魔法をかけたのも、オズだ。
オズがいなければ、到底実現などしなかったろう。
オズは長老であるミフルに本当に尽くしてくれた。
だから、ケイ暗殺の計画を立てたのがオズであることは、墓場に持って行くことに決めた。
ミフルは最高位になり、最高位たちがやけに民のことに詳しかったりするのは、ルウの地を巡回する環境維持ロボに紛れ込み情報を探っているためとわかった。
逆をいえば、環境維持ロボが立ち入らない場所でのことは最高位といえど知りようがない。
だからこそ、オズは暗殺に関しては無関係で、幽閉中の長老の無罪を信じ新しい水脈を拓くために尽力したということになっている。
その功績から次の長老に推したいと主張した。
ケイがその意見に賛同したのが意外だったが。
――お~い、オズ。今、幸せか?
なんて言葉を、墓前に祈りを捧げているオズに投げかけてみる。
実は、オズは後悔しているんじゃないだろうか? そんな思いもあった。