女心
「――あ!」
頷いたミンが声を上げる。
「え?何か?」
「その話って他でも話してましたか?」
「えぇ、まあ」
ミフルもそこらの知識はあった。クスナは北の魔法使いの国出身らしい。
「異世界から来た魔導士って噂を聞いたんですけど、それって……?」
ミフルも、そういえばそんな噂を聞いて、胡散臭いとは思っていた。
「そういえば、ガイル隊長殿ともそんな話を……」
「それって、今の言葉が大げさに広まって……」
腑に落ちたとばかりに、二人は頷いていた。
会話が終わると、二人はそれぞれ次の祈祷場所へと向かう。
その様子を、ミフルはやれやれと見送った。
このことがきっかけになり、今後、ミフルはクスナと出会ったら祈ることにした。
どれだけ効果があるかわからないが、それがかわいい姪のためでもある。
ミフルはそれがミンのためでもあると信じて疑わなかった。複雑な女心などわからないミフルだった。
* * *
すっかり暗くなった頃、ミフルは環境維持ロボのまま墓場にいた。
なんとなく、自分の墓参りをするのが日課になってしまっている。
――あいかわらず、気配のないヤツだ。
と、ロイの声がした。
――誰が?
と思いながら振り返ると、そこにオズがいた。
ミフルが墓に到着した時は誰もいなかったのに、いつの間にか、そばにいたオズに心底びっくりした。
――やっぱり、気づいてなかったか。
環境維持ロボのロイがミフルの隣に来た。
二人は墓参りに来たオズを見ていた。
オズ・ラテーシア。
オズは、ミフルのはとこの娘の入り婿で、娘がいる。妻子からはほぼ無視され家庭では居場所がないのだとか。
――あいかわらず、気配のない男だな。
とはいえ、長老時代のミフルからすれば有能で従順な部下だった。
オズは墓の前で膝まづき、両手を組み祈りを捧げていた。本来はルウの民が月か女神像に向かってするお祈りだ。