ミンとクスナ
ミフルはここ何日かのミンを見ていた。
無論、ミフルは人間の姿でルウの地には入れないから、環境維持ロボを操って、である。
ミン・ラテーシア。ミフルの姪にあたる。
ミフルの悪事をいち早く見抜き、隠し、長老代理の役割もこなした。
それはきっと、かつてのミフルが権威に固執したように、ミンもそうに違いないと思っていた。
そんな折、最高位のケイはオズ・ラテーシアが次の長老にふさわしいのではないかと提案した。――とはいえ、最高位の意見が絶対というわけではないのだが。
ミフルは、きっとミンがおもしろくないと感じてるに違いないと思った。
だが、ミンはどこかウキウキしているように見えた。
ルウの地に点在する泉に祈祷を捧げるのだが、ミンはその作業を苦にするでもなくこなしていた。
そんなミンがクスナにばったり出会った。
クスナはレファイ家が雇った魔導士。レファイ家管轄の泉の祈祷を行う。
ミンはラテーシア家の泉の祈祷を行っている。
そんな二人がばったり出会うのも、ごく自然なことだ。
何やら二人は会話している。
ミンは笑顔だが愛想笑いのようにも見える。
「あのコーヒー売りの女性と知り合いだったんですね」
と、ミンが聞く。
クスナが頷く。
――コーヒー売り? 確かケイと同行してたっていう?
ケイがお面で顔を隠し、コーヒー売りの女とルウの地を探っていたとか何とかという話は聞いていた。
なぜケイがそんなことをするはめになったのかといえば、ミフルにもその原因があるのだが、幸か不幸かミフルはその因果に気づいてなかった。
「……恋人だったり?」
ミンは歯切れの悪い言い方をした。
「いえいえ、そんなんじゃありませんよ」
焦ったようにクスナは否定する。
「手を繋いでいたじゃないですか?」
「見られてましたか。手は……」
そこでクスナは言い淀む。
言いにくいことなのだろうか? 何か考えているようだ。何を言うのかと待ってると、クスナは意外な事を言い出す。
「熱中症で助けていただいた時……」
クスナは、ミンの手を見ていた。