花
――それなりに、環境維持ロボを操れるようになったな。
若干、自画自賛しつつ、ケイの家に着いた。
花を持ったミフルに気づいたケイがこんな事を言う。
「なんだい? 僕にプレゼントかい?」
――そうだよ。
と赤い花を差し出す。
すると、ケイは一瞬動きが止まったかと思いきや、ぷいっと後ろを向いてしまった。
――聞こえなかったのかな?
ミフルはケイの正面に回り込み、花を差し出した。
アームで花を持つのは結構難しかったな、と思いつつ、早く受け取ってくれないかな、とも思っていた。
ケイはまたぷいっとそっぽを向いてしまう。
ミフルはロボから自分の体に戻った。
自分の体は寝室のベッドに仰向けだったわけだから、そこから玄関へ行って、玄関の外にいるケイに直接話そうと思ったのだ。
「花に興味あるんでしょ? うちの庭の花を摘んで来たんだよ」
ミフルはケイを見上げ、そう言うのだがリアクションらしいリアクションがない。
環境維持ロボのアームに握られてる花をそのままケイに渡そうと思ったのだが、そこでアクシデントが起こる。
自動操縦のロボがスーッと走り出した。
「え!?」
予想外の動きに、ミフルの行動が間に合わなかった。
「ちょっと!」
追いかけたのだが、なぜかロボは加速しルウの地の中央の方へと行ってしまった。
今の肉体から魂を離れさせ、再びロボに乗り移り操ろうかとも考えたが、そんな瞬間的に出来るものでもない。
ミフルは茫然としていた。そして、ずーんと落ち込んだ。
なぜ自動操縦のロボは静止しなかったのか、とか、自分がロボを操っている状態で花を離せばよかった、とか、何度も何度も頭の中で反芻してしまう。
「そんなに僕に花をプレゼントしたかったのかい?」
ケイがミフルの肩に手を置く。
「うん」
ミフルは力なく答えた。
「その気持ちが嬉しいよ」
「オレは悲しい」
ケイは、ミフルの肩をさする。
「家に泊めてくれるし、少しでも感謝の気持ちを表したかったのに……」
「過ぎたことはしょうがないよ」
ケイは、ミフルを家に入るよう促す。
その日のケイはそこそこ優雅な夕食を用意してくれた(どうせロイのところから無断で持ってきたんだろうけど)
ケイは優しくお世話するようにミフルに接してくれてはいたが、時々ミフルを見てはにやにやしていた。
おちょくられてるようで、それはそれでミフルの癪に触った。
そもそも、ケイが早く花を受け取っていれば、確実に渡せたはずだったのだから。
ミフルはずっと胸がざわざわするような、ずしんと嫌な気持ちのままだった。
*
次の日、ミフルは自己嫌悪しつつ反省していた。
ケイに花を渡したい思いは、ミフルの勝手な思い込みであり、ケイに嫌な態度だった。
そもそも、ケイの暗殺のための道具でもあったわけだし、そんなものをプレゼントしようとした自分がどうかしてた。
あの環境維持ロボの行動は正解だったかもしれない。
「機嫌は直ったかい? 僕はすこぶる機嫌がいいよ」
と笑顔で尋ねてくるケイに、またムカついてしまう。
感情が堂々巡りになってしまう。
「早く家を建てよう」
そう言って、ミフルは環境維持ロボに乗り移り、自分の新居の場所へと行くのだ。
すぐにケイも来るかと思ったが、ケイは来なかった。
そのかわりにというわけでもないが、その日はアグとグレスが来た。
家造りはかなり進んだのだった。




