そうかもね
「私に剣を教えて欲しい!」
自分でもわからない。
ファウは勢いでそんな事を喋っていた。
正直に言えば、リゾのことは嫌いだ。
かつて、ファウを攫い、キョウの髪と魂を奪った憎むべき相手。
だが、だからこそリゾが強いの承知している。
リゾの返事はやはりというか、遠回しに断ってきたのだが、
「……いつでも好きな時に来て、俺の戦っている様を見るのはどうだ? どうせ今までも来てたんだろう?」
リゾの言葉に、ファウはどきっとした。
――やはり、あの黒髪の女性と抱き合ってた時、気づいてたんだ。
「えぇ、まあ……。その、あの、女の人は?」
パートナーの女性がいれば、他の人物に自分の魂を差し出すような自殺行為はしないはず。
その女性にあって、何か話でもできれば……
「レン様は亡くなったが――」
「そうじゃなくて黒髪の人。あなたの恋人か奥さんではなくて?」
「あぁ、その女は全くの他人で、今はどこにいるかすら知らん」
「は?」
まさかの返答にファウは固まった。
「裸で抱き合ってた女性を知らないっていうの!?」
リゾは真っ先にレンの名前を口にした。
つまり、レン以外の女はぞんざいに扱ってきたに違いない。
――きっとやり捨てなんてことも……
「サイッテーな男!」
もうこんなところにはいられない!
さっと足早にキョウの家に帰る――。
*
帰ってきたファウが気づいたのは、香ばしい匂い。
「お帰り」
キョウはほっとしたような笑顔で迎えてくれた。
キョウはキッチンで何かおかずを作っていた。
「折角だから、ひじきの一品料理を作っていたんだ」
その笑顔にほっとした。
だからこそ、リゾの非道ぶりを伝えなければと思った。
「キョウ、ちょっと話、いいかな?」
「うん」
キョウはキッチンからダイニングへ。
*
二人はテーブルに座り、神妙な顔で向き合った。
キョウは、やはりファウがどこか怪我か何かしたのかと思い、ファウはリゾに対する怒りを抑えきれずにいた。
「いい? キョウ、リゾのことなんか何も心配することはないわ!」
と、ファウ。
「何かあったの?」
キョウはおろおろしている。
「あいつはとんでもない下種野郎で、女を使い捨てくらいに思ってるわ」
「ファウ、何かされたの?」
キョウは、ファウの肩に手を置き、反対の手でおでこを触った。
怪我でもしてないか心配してるようだ。おでこに手を当てるのは少々違うが。
「え? そういうことじゃなくて……」
ファウはどう説明すべきか困った。
『リゾが裸で抱き合ってた女性を知らないと言い張ったの!』なんて、とても言えなかった。
肩に置かれたキョウの手を、ファウは握り、とにかく力説する。
「とにかく、リゾは下種野郎なの!」
きょとんとしていたキョウだが、
「…………そうなんだ」
そして、ふっと笑みを浮かべる。
「……そうなのかも」
「キョウ?」
「なんだか変かもしれないけど、ファウの怒ってる顔見たら、元気が出て来た。悩んでたのが馬鹿みたい……」
「そうなのよ! あいつのために悩むなんて馬鹿なことなのよ!」
リゾは女性を使い捨てなんかしない、とキョウは思うのだが……
キョウ自身は男であり、リゾが女性に対してひどい扱いをするというのであれば、そういう面があるのかもしれない。
「……そうかもね」
笑顔のキョウを見て、とりあえず元気になってよかったと安堵したファウだった。




