表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月色の砂漠 -ミフル-  作者: チク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

願い

ファウ目線の話。


「……私を殺して欲しい」

 キョウの言葉に、ファウは絶句した。


     *



 キョウの家にて。


「何を言うの!?」

 ファウが否定するように言葉を投げかける。


 きっかけは、長老の死だった。

 キョウは環境維持ロボを操り、水脈を拓いたのだという。

 その際、アンドロイドに襲撃され、長老がかばって亡くなったという。


 その場にいたというオズはじめ長老の部下たちは、キョウが気に病むことではないと言ってくれたが、キョウ本人はそうもいかなかった。


 それに加えて、環境維持ロボが壊れた際に、精神的に不安定だったのだろうか。

 キョウはリゾの魂を喰らおうとしたのだという。


「自分の行いによって、リゾを死に追いやるなんてことがあったら……」

 キョウは狼狽えていた。


 ファウの本音としては『そうなればいいのに』だった。

 そもそも、リゾによってキョウは髪と魔法を奪われたのだ。

 そんなキョウがリゾの魂を喰らって、誰に文句を言う権利があると言うんだ?


 と、言いたいファウだったが、どういうわけかキョウはリゾを気に入ってる。

 恋人である自分が『さっさとリゾの魂を喰ってしまえ』なんて、キョウはショックを受けるだろう……


「もし、私がリゾを傷つけたら、私を殺してほしい」

 キョウは絞り出すように言った。


「……落ち着いて」

 ファウは言う。

「甘い物好きでしょ?」

 ファウは、キョウが好きなパウンドケーキを持参していた。


「お茶は私が淹れるから座ってて」

 とキッチンに行く。


 キッチンから戻ると、キョウはぼうっとただ座っていた。

 いつもなら、自分でパウンドケーキを切り分けたりするのだが、これは相当精神的に参ってるようだ。


 ファウはキョウにお茶を差し出す。

 自分もテーブルに座り、パウンドケーキを切り分ける。


「……お茶?」

 キョウが首を傾げていた。


「お茶のお替りなら、いくらでも」

 ファウは、キョウのカップにティーポットからお茶をつぎ足す。


「うん、ありがとう」

 キョウがまたお茶を飲んで、「美味しいね」なんて言った。


「でしょう」

 実はこっそり練習して来たのだ。

 キョウにはその味の違いがわかったのだろう。


 「元気出してね」

 パウンドケーキを切り分け、自分もお茶を飲んでみる。

 かなり、薄味のように感じた。


 二人はパウンドケーキを食べ、薄味のお茶を不思議に思っていた。

「茶葉が少なかったかしら?」

 ファウがティーポットの蓋を開けてみる。


 量的には問題なさそうなのだが……?


「あ!」

と、キョウが口を押さえた。

「え? 何?」


「あ、あの……」

 キョウが黙ってしまった。


「どうしたの?」

「えっと、その……えっと~?」


 どうも言い難いことらしい。

「キョウが悩む訳が分かったわ。そうやって溜め込むからいけないのよ。思ったことはちゃんと口に出して言って」


 キョウは観念したように口を開く。

「それ、ひじき」


「えっ!」

 ファウがまたも絶句する。

「え? 嘘、やだ……」


 すると、キョウはぷっと笑い出した。

「くっくく……くっ! ……ありがとう、ファウ」


「え? 何が?」

「私を元気づけてくれようとしたんでしょう?」

「えっと…… え? え? まあ、その、そうなの!」

 ある意味そうなのだが。


「おかげで今晩のおかずも出来たし、コーヒーを淹れてくるよ」

 キョウはティーポットを持って、キッチンへ。

 ほどなくして、コーヒーの香りが広がる。


「少し前にコーヒー売りが来てたでしょ。そのコーヒーなんだ」

 そういえば、そんな事もあったな、とファウは思った。


「コーヒーの淹れ方なんてわからないけど、これで合ってると思う」

 キョウが淹れたコーヒーは美味しかった。


「また、こうして、二人でコーヒーを飲もう」

 ファウが言うと、キョウは頷く。

「だから、早まったことはしないで」


 もしも、キョウがいなくなったりしたら?

 ファウは少し涙ぐんでいた。

 それをキョウに悟られないように、パウンドケーキを食べていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ