家造り
ミフルの言葉に、ケイはふふっと笑みを浮かべた。水晶が虹色に光った。
ミフルは目を凝らす。
黒い水晶なのに透明感があり、奥まで吸い込まれそう。
虹色の光が奥へ奥へと消えていったと思ったら、また光りだす。
飽きずに見ていられるなーと思った。
(……近いよ)
(本当だ)
ミフルは水晶を凝視するあまり、いつの間にかケイに密接するぐらい近づいていた。
思わずケイが後ずさりをするのだが、そのケイをミフルはアームで押さえた。そのまま凝視する。
そうして思い出す。
(これ、オレが見つけた水晶か)
かつて、ミフルが長老だった時に、最高位のケイに虹色の水晶をを献上した。
ただのケイのわがままか気まぐれに振り回されたと思った――
(そうか、これ、環境維持ロボにとって大事な部品だったんだ)
長老だった頃はおちょくられていると思っていた。
実はそうじゃないとわかり、感心していた。
そして、どこか安心していた。
最高位でありながら、ケイという男は残忍な面がある。
息絶えたシヴァをぐちゃぐちゃにし、それを長老の遺体として遺族であるラテーシア家に引き渡したのだという。
それを聞いた時は、そのサイコ過ぎる所業に寒気もしたのだが――。
ケイには、ケイなりに理由があったのだろう。
(そろそろ、放してくれないかな?)
(うん)
ミフルはケイから離れた。
どうも環境維持ロボだと、他人との距離感がバグってしまう。
(少し思い出せたところで、作業を再開しよう)
ケイの提案に、ミフルは頷く。
(きみの家、少しでも早く完成させたいからね)
そう。二人はミフルの新居となる家を造っていたのだった。
とはいえ、ミフルは家の造り方なんかはてんでわからない。ケイが主導になって、ミフルはその支持に従って動くだけだった。
(別にオレのあんたの家に一緒に住むんでもいいんだけどね)
(意味わかって言ってる?)
ケイは男色らしい。子どもになったミフルにはそれが何かよくわかっていなかった。
長老がケイに虹色水晶を献上したエピソードは「月色の砂漠~ロイの憂い~」をご覧ください。