提案
「え? いやぁ……?」
ミフルはどうしていいかわからず、似たような姿勢で頭を下げ返した。
この時、ミフルは、『褒められている』『認められている』、そういう事がやたら嬉しいことに気づいた。
そして、もっと褒められたいと思ってる自分に気づいた。
――もっと褒められるにはどうすればいい?何を喋ればいい?
そんな事を考えている自分に気づいて愕然とした。
虚栄心は手放した方がいい――なんとなく、そんな考えが芽生えていたのだ。
そして、ファウは今度はリゾに頭を下げた。
「私に剣を教えてほしい!」
その提案にミフルもグレスも大層驚いたが、リゾの表情はあまり変わらなかった。
「それが本題か。理由は?」
「私は強くなりたい! 強い相手と戦いたい!」
ファウの口調は強かった。
「強さだけを求めても、いつかそれに溺れ、自滅してしまう……いや、俺が言えたことじゃないな」
リゾの言葉に、ミフルはどきっとした。
見えや虚栄心に溺れ、とんでもないことをしでかしていた気がする。
「どうして強くなりたいの?」
と、ミフルが聞いていた。
「……あ、いや、オレが口を出すことじゃなかった」
「みんなを護りたいの。最高位たちが民の気づかないうちに強いアンドロイドと戦っているのは知ってる。私もそんな風に戦ってみたい」
――お前は十分に戦ってるよ。
と、ファウ以上に熱く語ったのは、グレス。
無論、その声はファウには届いていないのだが。
「そうだな。二番隊隊長であり、部下にも指導もしているのだろう。剣についての教育もきちんと受けているだろうし、俺が教えることなんて何も……」
――おい!ファウが頭まで下げたのに、断るってのか!
リゾの発言を遮って、グレスがそんな主張する。
「……ないが、センスのあるお前なら何か得るものもあるだろう。いつでも好きな時に来て、俺の戦っている様を見るのはどうだ? どうせ今までも来てたんだろう?」
リゾの言葉に、ファウはどきっとした。
「えぇ、まあ……。その、あの、女の人は?」
「レン様は亡くなったが――」
「そうじゃなくて黒髪の人。あなたの恋人か奥さんではなくて?」
リゾはしばらく、何の事かわからなかった。
――カーラの事だろ?
グレスが助け舟を出す。
「あぁ、その女は全くの他人で、今はどこにいるかすら知らん」
「は?」
リゾの答えを聞いて、ファウは固まった。
数秒そのままで、その表情が見る見る変わる。怒りの表情に――
「裸で抱き合ってた女性を知らないっていうの!?」
その言葉を聞いて、ミフルはさっきの比じゃないくらい驚いた。
「………」
リゾは返答できずにいた。記憶にない事なので答えようがなかった。
「サイッテーな男!」
怒りに任せ、ファウは勢いよく立ち上がり、乱暴にドアを開け出て行った。
そのまま、例の水晶を使い帰って行ったのだろう?
――カーラって?
ミフルが尋ねる。
――一応、最高位だよ。結構お盛んな女で色んな人と一夜を共にしたりとか……やったの?
グレスの後半の言葉はリゾに尋ねたものだった。
「やってない」
淡々と答えるリゾに、ミフルは思わず噴き出した。
――だよなー。リゾに限って、そんな、なぁ?
グレスはミフルに同意を求めるように問いかけるが、カーラの事を知らないミフルには頷きようがなかった。
――お前も気をつけろよ。老若男女問わずな女だから。少し前にレンの墓参りに帰って来たと思ったら、誘われたよ。まぁ冗談なんだろうが。
――へ、へぇ。
とんでもない仲間がいたもんだ、とミフルは思った。
カーラが登場する話は、
『機械仕掛けの魔法使い~気まぐれの女神~』
『月色の砂漠~長老の野望~』
『機械仕掛けの魔法使い~僕と邪神様~』
をどうぞ。




