空飛ぶ絨毯
「まあ、僕ときみたちと一緒に行くつもりはないし、戦う理由もないから、これで……」
ケイは立ち去ろうとする。
ケイとしては、急いでルウの地に戻りたいのだ。
――力づくでも……
と思っていたシムゥンだが、なるべく嫌われるようなことは避けたい。
少し頭を冷やし、 考えた結果――
「だったら送るよ。ちょうどいい使えそうな試作品のがあるから」
シムゥンはさっと手を翻す。
何か武器を出すのか警戒したが、そうではなかった。
そこに、どこからともなく現れた絨毯がどさっと落ちた。
かなり厚手の絨毯で、何やら細かな模様もある。工芸品のような高級そうな絨毯だ。
それが膝の高さくらいまで浮いて、シムゥンがその上に座った。
ケイは微妙な表情なのだが、
シムゥンは出来る限り、殺気を消しこう言うのだ。
「送って行くよ」
ケイは警戒している。
「無理矢理さらうような真似はしないよ。シームァの目を治してくれたお礼もしたいし、ジュピターについても聞きたいし」
ケイはその不思議な絨毯に乗ることにした。
*
景色が後ろに流れていく。
空飛ぶ絨毯の上、ケイは膝をつき座り、右手で絨毯の毛足をつかんでいた。
シムゥンは慣れたもので、立った姿勢で前を見据えている。
「ルウの地はこっちで合ってる?」
シムゥンの問いに、ケイは頷く。
空飛ぶ絨毯はものすごい速さで飛んでいた。
一時間もしないうちに到着するだろう。
「本当は聞きたいこと、いっぱいあったけど、またの機会にするよ」
シムゥンはそんなこと言った。
すると、絨毯が失速した。
「おっと、操作が難しい。気がそれるとコントロールが……」
ケイは黙って、シムゥンの横顔を見ていた。
やはり、ジュピターなんだと確信していた。
「前にゲートの暴走に子どもが巻き込まれたことがあったよ、思い出した」
「そう?」
ケイには、そんな会話をジュピターとしたような記憶がある。
別の場所にあるゲート同士で行き来できる魔法の扉のようなものがあるらしい。




