初恋
だが、魔法を使うでもなく、聖剣がケイの手の平に吸い付くように収まった。
「……?」
シムゥンの罠かと思って警戒したが、そうではなかった。シムゥンも虚を突かれたような顔をしている。
ケイは自分の中に魔力が満ちるのを感じていた。
「どういうこと?」
敵が魔力を回復させようとしてくれている?――この状況は何だ?
訝し気なケイ。
「折角、手に入れた聖剣を上げるの?」
シームァはずれたことを言いだした。シムゥンとしては、ケイの足止めのつもりで持ってた聖剣を魔法で投げたのだ。
「シームァはちょっと黙ってて」
シムゥンが言うまでもなく、シームァはこれ以上口を出すつもりはない。
「聖剣?」
ケイはつかんだ聖剣を見つめていた。
「聖剣? 邪神様?」
と、ケイは視線を聖剣からシムゥンへと移した。
その単語には、条件反射のようにシムゥンが激昂する。
「邪神じゃない!」
「……ジュピターだ」
と言ったのは、ケイだった。
「え?」
シムゥンはぽかんとケイを見る。ケイを見つめたまま歩み寄る。
「ジュピターの知り合いなの?」
「まあ……」
そこで、ケイは若干照れた。
「僕の初恋の人だよ」
「え?えぇ……と?」
シムゥンは戸惑ってる。
ジュピターはシムゥンの前世での名前なわけだが、正直すべてを覚えているわけではない。
自分の記憶ながらあやふやな面が多い。
それにジュピターの知り合いだとしたら、目の前のケイという人物は若すぎる。
そもそも、初恋って!?
シムゥンの思い出せる範囲では、ジュピターが誰かと恋仲になった事はなかった。――まだまだ、思い出せてないことがあるのだろうか?
そんなシムゥンの気持ちを知ってか知らずか、ケイがこんなことを言う。
「ジュピターの弱点を補うために、この聖剣は必要だったんだろう? だったら、不用意に投げちゃダメだよ」
ケイは、シムゥンに聖剣を返そうとした。
「ジュピターの弱点?」
シムゥンの思う限り、ジュピターは最強だと思うのだが……




