いい名前
*
「ジュピターって、いい名前だろ……」
ケイがうっとりしたようにつぶやいている。
「そうかぁ?」
ミフルは首を傾げる。
「そんなことより、話の続き! その女は? その後、どうなったの?」
すると、ケイはふうとため息をついて、
「……覚えてないんだよね」
ミフルはズッコケた。
――わざわざ一息ついて、もったいぶって言うことか!
「僕も子どもだったし、女には興味ないし……。その後、数日間、彼と一緒に過ごしたのは覚えてる。雪の降る地で二人で暖炉を眺めながら話したりもしたよ。あの時の出来事は夢か昔読んだ物語かと思ってもいたけど、それが現実だったと思ったのは彼に会ったから――」
「彼って?」
ケイは、シームァを追いかけネトク鉱山で再会した時のことを話し始める。
*
「じゃあね、シームァ君。元気でね」
「えぇ、あなたも」
「待って」
シームァに別れを告げたケイに、シムゥンが呼びかける。
ケイは振り返る。
「僕たちと一緒に行こうよ」
シムゥンの提案に、ケイは不思議そうに首を傾げた。
ケイにはシムゥンの真意が分かりかねるが、真摯に断る。
「僕にはルウの地でやることがあるから」
立ち去ろうとするケイに向かって、シムゥンは持っていた聖剣を突き刺すように投げる。それはケイの眼前でピタリと止まった。
「リムが気に入ったみたいでね、嫌だというなら力づくでも……」
「激しいね」
ケイはなんだか懐かしいような気持ちになっていた。
一見穏やかそうだが、その実、激しい気性の持ち主。そんな人物に絶対に会ったことががある――そう思った。
シムゥンは目を細め、ケイを凝視していた。
「ルウの地でなら強い魔力を発揮できるようだけど、本当は魔力なんてほとんどない。だったら……」
弱点を瞬時に見抜かれ、焦るケイではあったが表情には出さない。
ケイは魔法で聖剣を弾き落とそうと思った。
魔法はほとんど使えない状態だが、ケイにはとっておきの裏技がある。
「機械仕掛けの魔法使い~僕と邪神様~ 」「月色の砂漠~コーヒー売りはチート嬢~」あたりを読んでいただければと思います。




