トマトケチャップが赤く染まったころ
「あたい」です。
トマトケチャップが赤く染まったころ
あたいは そっと街をぬけだそう
灰色の工場に もくもくの煙突が
パイプオルガンみたいにならんでたけど
メロディのない四分の三拍子からはぐれた
一匹のおたまじゃくしをさがしにいくんだ
はえてきちゃったうしろあしに
もう おたまじゃくしのままじゃいられないって
みっともなくも愛らしい
かえるもどきになったあんたは
とっくに このあたりにはいないはずだって
捜索をうちきったのが
きのうのはなしだったんだけど
五線譜をはずれたところにも
はみだしものの おたまじゃくしは
泳いでることを知ってるから
あたいだって のぞみを棄てるべきじゃあない
トマトケチャップが青く くすんでたころ
あたいは じっと街でさんかく座り
灰色の星空が高すぎて
膝をまっすぐにして立ちあがることも
できなかったのを 重いおしりのせいにして
しっぽのかわりに みじかい鎖がはえてるから
アスファルトにあたいを繋いでるんだって
ひらぺったいおしりをさすってた
そしたら きっと
四拍めの はぐれおたまじゃくしは
まえあしも はえそろってないくせに
とっとと しっぽを切り捨てて
ひらぺったいおしりと ぶかっこうなうしろあしで
この街を あたいよりさきに
ぬけだしちゃったのかもしれないなって
そう気がついたのなら
トマトケチャップ色に塗っといた欠けちゃった爪を
こうして噛んでるのは
じょうずなやりかたじゃないよね
トマトケチャップが 黄色く褪せちゃうまえに
やっぱり あたいもこの街をぬけださなきゃ
灰色の工場のうえにひろがる
灰色の星空にさよならして
さんかく座りをやめた ひらぺったいおしりで
あたいは この街をぬけださなきゃなんないから
あたいは この街をぬけだすんだ
四拍めのおたまじゃくしに
まえあしがはえそろうまえに
よくわからない?
私もです(笑)