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テーマ詩集:冷蔵庫

トマトケチャップが赤く染まったころ

作者: 歌川 詩季

「あたい」です。

 トマトケチャップが赤く染まったころ

 あたいは そっと街をぬけだそう

 灰色の工場に もくもくの煙突が

 パイプオルガンみたいにならんでたけど

 メロディのない四分の三拍子からはぐれた

 一匹のおたまじゃくしをさがしにいくんだ


 はえてきちゃったうしろあしに

 もう おたまじゃくしのままじゃいられないって

 みっともなくも愛らしい

 かえるもどきになったあんたは

 とっくに このあたりにはいないはずだって

 捜索をうちきったのが

 きのうのはなしだったんだけど

 五線譜をはずれたところにも

 はみだしものの おたまじゃくしは

 泳いでることを知ってるから

 あたいだって のぞみを()てるべきじゃあない



 トマトケチャップが青く くすんでたころ

 あたいは じっと街でさんかく座り

 灰色の星空が高すぎて

 (ひざ)をまっすぐにして立ちあがることも

 できなかったのを 重いおしりのせいにして

 しっぽのかわりに みじかい鎖がはえてるから

 アスファルトにあたいを(つな)いでるんだって

 ひらぺったいおしりをさすってた



 そしたら きっと

 四拍めの はぐれおたまじゃくしは

 まえあしも はえそろってないくせに

 とっとと しっぽを切り捨てて

 ひらぺったいおしりと ぶかっこうなうしろあしで

 この街を あたいよりさきに

 ぬけだしちゃったのかもしれないなって

 そう気がついたのなら


 トマトケチャップ色に塗っといた欠けちゃった爪を

 こうして()んでるのは

 じょうずなやりかたじゃないよね



 トマトケチャップが 黄色く()せちゃうまえに

 やっぱり あたいもこの街をぬけださなきゃ


 灰色の工場のうえにひろがる

 灰色の星空にさよならして

 さんかく座りをやめた ひらぺったいおしりで


 あたいは この街をぬけださなきゃなんないから


 あたいは この街をぬけだすんだ



 四拍めのおたまじゃくしに

 まえあしがはえそろうまえに

 よくわからない?


 私もです(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] すべてのおたまじゃくしは いつか五線譜の上から旅立っちゃうんですね。 大半の音楽はそうやって消費されていってしまう 皮肉の詩に見える、なんて わたし自身が捻くれてるからでしょうね
[良い点] 不思議な雰囲気の作品ですね。 解釈は難しいですが(私の頭が眠ってるゆえ)、ぐいぐい引き込まれます! 素敵な作品をありがとうございました!
[一言]  おたまじゃくしの行動を羨むような。  動かない自分への言い訳と。  動けない自分への励ましと。  必死な姿は不格好でも眩しく見えますよね。
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