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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

バーテンダーエルフのハットトリック

作者: マガミアキ

 駆け出しバーテンダーの私は修行を兼ね、ヘルプとして東京のダーツバーでカウンターに立っていた。


「お姉さん、今日何時あがり?」

 カウンターにもたれた男が話しかけてきた。

 今日のように、酔客に絡まれることは珍しくもない。


「今日は十時だが……」

「じゃあその後暇でしょ、メシ行こう、奢るから」

「いや、家で寝る」


「全部答えなくていいのよ、エルフちゃん。お客さん、うちはそういう店じゃないの。スタッフに絡まないでちょうだい」

 オーナーの男はいつも私を庇ってくれるが、この酔客は聞こえていないかのような様子だ。


「よしお姉さん、ダーツで決めよう。一ラウンド三投勝負で、点数高い方の勝ち。俺が勝ったらメシだ」

「私が勝ったら?」

「何でも言うことを聞く」

 男はばらりとダーツの束をカウンターに広げた。


「初めてやるのだが……これを的の中心に当てればいいのか?」

「ちょっとエルフちゃん」

 カウンターから十メートルほど先の壁にダーツボードが見える。


 私が問うと男は下卑た笑みを隠そうともせずに言う。

「お、乗ったな。中心は五〇だ。二〇のトリプルの方が点数は高いが、初心者は分かり易い中心狙いでいいだろう。よしよしそれじゃあカウンターから出ておいで」

「いやここからで構わない」

「は?」


 私はダーツを拾うと立て続けに投げた。

 激しい音を立てて三本ともがダーツの中心を貫く。


「……」

 あんぐりと口を開けたまま、酔客はボードに近寄って呟いた。

「ハットトリック……いや、全部ブルズアイに刺さっているからスリーインザブラック……あの距離から? は、初めてやるんじゃなかったのかよ!」


「初めてやるが……森の民にとって射撃は呼吸するのと同じだからな。狙った場所を射抜く程度、できない方が恥だ」

 ゆえに私には人間社会で射的が娯楽になっている意味が分からないでいる。

「その気になれば、ここからそなたの黒目を貫くこともできるぞ。さあ、そなたの番だ」


「いやその……酔ってるし、また今度に……しようかな」

 男はすごすごと逃げようとする。


「待て、では私の勝ちだ。この店の客全員に酒を振る舞って貰おうか」

「ボ、ボトルとか言うなよ! そんな金ないぞ!」


「いや……ここはカクテルにしよう。名前はーー」

 ダークラムとスイートベルモット、ライトラムを同量でステア。

「ハットトリックだ」


 悔しそうな男の顔を見て、オーナーが歓声をあげる。

「やるじゃない、エルフちゃん!」

 私は小さく肩をすくめた。

なろうラジオ大賞3 応募作品

……でしたが、投稿時間間違ってました。

・1,000文字以下

・テーマ:ハットトリック


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