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06.奴隷少女は約束する。

1章の脱出編もいよいよ佳境です!

この脱出編はプロローグという立ち位置なので、サクッと終わらせて2章にすぐ入るぞー!

って思ってたんですけど……何か思っていた以上に1章が長くなってしまった……


あともう少しで1章は終わりますので、皆様も温かい目でエステル嬢を見守って頂ければ幸いです!

今日の奴隷作業が終わり、私達奴隷はいつも通り檻に収容された。


もちろん今日の私は水瓶を盛大に割ったので、罰としてご飯は抜きになっている。


(まぁアイテムボックスに食料入ってるから別にいいけど)


私はそう思いながら、檻の一番奥でじっと座り込んでいた。


転生してから今までずっと、私はここからの脱出についてを考えていた。


そのおかげでこの数日間は寝不足が続いたので、今日は早めに寝て体力を回復させる事にした。


そして明日……私はこの地獄から抜け出す。


アイテムボックスには数日は身を潜める事が出来る量の食料は既に確保出来ている。


チート能力のおかげで身体能力が化物級になっているから、逃げる脚力もある。


私の全力の逃走に追いつける敵は、この魔王城では恐らくガルドと魔王の2人だけだが、今はどちらも不在という情報も手に入れた。


だから抜け出すタイミングはいつでも良い……奴隷作業中に監視の目が薄くなった時に逃げだす。


檻を壊して逃げだすというのも当初は考えたりしたが、結局それは止める事にした。


“檻が壊されてる”という異常事態を魔族に見せたくなかったからだ。


私はあくまでも空腹かつ弱った状態の奴隷で、ここからの生活に耐えきれなくなり、奴隷作業中に1人で逃げだした。


……というストーリーの方が私には都合が良かった。


(いや奴隷が逃げ出す時点で“異常事態”だけど……)


でもそれは、同じ“異常事態”でも意味合いは全然違う。


“檻が壊されてる”のは魔族にとって脅威になり得る存在がいるという事に繋がる。


でもそうではなく“弱った奴隷が逃げだした”というのは、魔族にとっては脅威にはなり得ない。


だから魔族は私が逃げだした所で、必死に追おうとはしないだろう。


どうせ弱っているし、そのうち勝手に捕まるだろうと楽観的に思ってくれるだろう。


(私はその隙をついて必ず逃げだす……!)


最後まで戦わずに逃げきる……それが私の目標だった。


私のチート能力があれば、戦って自由を得る、という事も出来るかもしれない。


そこら辺にいる敵なら私のステータスの暴力で殴り勝てるだろう。 私が貰ったチート能力はそういう力だから。


(でもそれは危険な行為だ。)


なぜなら魔王やガルドなど、今の私よりも強い敵は確実に存在しているからだ。


そんな脅威と戦うには、私はレベリングも装備もアビリティも、何もかもが足りてないかった。


だからこんな中途半端な状態で、無暗に力を使ってしまうと、後々自分の首を締める事態になる……と私は思った。


私はあくまでも弱い奴隷……何の力も持っていない弱々しい奴隷、というこの立場を最後まで保って逃げだしたかったのだ。


今後私がレベリング、装備、アビリティを全てを完璧に整える事が出来れば、もしかしたら魔王達とも良い勝負は出来るかもしれない。


(でもそれは今じゃない……今は、絶対に勝てない……)


だから私は、この数日間ずっと「戦う」という選択肢だけはひたすら除外してきた。


私は魔王城から全力で「逃げる」事だけを考えてきた。


それが私がここから生き残れる確率がもっとも高いと思ったから。


(それに……お母さんとの約束だから……)


――私達の分まで生きて――


死んでしまった家族の分まで……私はどんなに無様でも、這いつくばってでも生きてみせると、約束したんだ。


だから私は戦わない。


生き残るためにも、私は最後まで全力でこの地獄から逃げきってみせる。


……


……


……


(でも……それでも……)


かすかにだけど、私の体は震えていた。


今朝の奴隷作業中に、私の体は震えたフリをした。


ガルドが本当に不在なのかどうか調べるために、私はわざと水瓶を叩き割って、そこで私は絶望したフリや、わざと体を震わせてみて恐怖に怯えたフリをしてみせた。


……でも違う、頭の中ではフリのつもりでも、実際は違う。


あれはわざとではなくて、本当に私は体が震えていたんだ。


(うん……そうだよね……)


ガルドは私の家族を殺した。


そしてこのナインシュに住む人々も次々と殺していった。


この地獄を生み出したのは誰か、そんなものは間違いなく……


(恐怖を感じないわけ……無いじゃないか)


……でも、震えていたのは恐怖だけが理由じゃない。


(このままでは終わらせない……)


私は……怒りを覚えていた。


(ガルド……)


ここはソードファンタジアの世界だ。


この世界の主人公は私ではない、ソードファンタジアはアークの成長物語だ。


(今すぐには無理だけど……何年かかってでも必ず……)


私のこのチート能力は、いつか魔王を倒すことが出来るかもしれない……そんな能力だ。


でもそれは私の役割ではない。


8年後にアーク達が魔王を倒して世界を平和にしてくれるから。


でも……


(ガルド……お前は……)


ガルドは違う……ガルドはソードファンタジアの世界には存在しないキャラだ。


ソードファンタジアのストーリーには一切関係の無いキャラなのだ。


だからそんな得体の知れない奴はアーク達が倒すべき敵では無い。


だから、だからこそ……


(ガルド……お前だけは私が必ず……叩き潰す……!)


私は闘志を胸に秘めて、そう誓ったのだった。

1章ラストまであと少し!

残りも早く書ききれるように頑張ります!

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