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おまけ03.新作ゲームの世界に旅立つ!

奈津子さんがエステル嬢に転生するまでのオマケ話(3/3)

ソードファンタジアを初クリアした後、結局私は寝ないでスマホでトイッターを開いた。


「ソードファンタジア 感想」で検索をかけて、皆の感想をひたすら眺めいていた。


~~カッコいい!とか~~のシーンで鳥肌立った!とか、キャラやシナリオについての感想が沢山出てきて、私は「うんうんわかるわー」と一人で頷いてた。


大体が私と同じで、「面白かった」という肯定的な意見が多かった。


でもやっぱり、予想はしていたけどエステルに関する悲しみのトイートもかなり多かった。


私以外にも切ない気持ちになっている同士がこんなにも沢山いるという事がわかっただけで嬉しい。


……という感じで、私は出社する時間が来るまでずっと皆の感想を眺めているのであった。


その日は寝不足で一日中ずっと死にそうな顔をして働いていたのは言うまでもない。


---


ソードファンタジアが発売してから半年以上が過ぎた。


発売当初はソードファンタジアの話題が凄い賑わっていたが、流石に半年以上過ぎると人気は下火になっていた。


日々新しいゲームやらアニメ、マンガなどが出てきて、ブームも変わっていくからしょうがない事だけど、少し悲しい。


私の周りでも、もうソードファンタジアの話をする人はいなくなっていた。


そんな状況になっていくと、私自身もソードファンタジア熱は徐々に下がっていく……


……なんていうことは全く無かった。


完徹状態で初クリアしたあの日から、今まで毎日コツコツとプレイを続けている。


ちなみに初クリアしたあの日、仕事から帰ってきた後も、私は寝ないでソードファンタジアをプレイしていた。


クリア後の追加コンテンツもあるし、見逃したサブクエストにサイドシナリオなど、まだまだやり込める要素が沢山あるから。


元々私は、沢山のゲームを遊びたい!


というタイプの人間ではなく、一つのゲームをひたすらやり込みたいタイプの人間なのだ。


だから私は新しいゲームを始めたら、やり込み要素は可能な限り毎回頑張っている。


あと、ソードファンタジアを寝る間も惜しんでやり込みたい理由は他にもあった。


(隠しエンディングとか無いかな……)


無粋だとか何とか言いつつ、結局隠しエンディングを探している私がいた。


そんなわけで深夜に初クリアしてからも私は、毎日コツコツとソードファンタジアをやり込んでいった。


仕事から帰ってきたら寝るまでずっとゲーム。


休みの日もひたすら家に引きこもってゲーム。


仲間のレベルも全員カンストに出来たし、究極技も全員取得させる事が出来た。


レア武器などの装備収集も終わったし、サイドシナリオも全て完結まで見る事が出来た。


そして今日……


「トロコン、達成だぁああああ!」


ようやく隠しダンジョンの攻略が終わり、最後のトロフィー獲得音が鳴った。


私はコントローラーを離して両手を上げてバンザイのポーズをして、そのまま床に倒れ込んだ。


「あぁ……楽しかったなぁ……」


これでようやく私はソードファンタジアのトロフィーコンプリートを達成することが出来た。


半年以上かけて念願の完全クリアが出来て、私は達成感でいっぱいになった。


それと同時に、全て終わってしまった事に対する、なんだか寂しさというか何というか……ノスタルジーな気持ちにもなった。


それに……


「最後までやったけどやっぱり無いよね……」


まぁ最初からわかってはいたけど。


そんな都合の良いものは無いなんてわかっていたけど。


「エステルが幸せになる未来も見てみたかったなぁ……」


そう呟いて、私は少しの間ぼーっとしてから立ち上がった。


「さて、と」


背伸びをしながら時計を見たら、時間はちょうど深夜0時になったところだった。


「明日も仕事だし、ちょうどいいかな」


私はゲーム機の電源をオフにして、洗面台に行き歯を磨いてからベッドに向かった。


ここしばらくずっとやり込んでいたゲームが終わったし、明日からは何をしようかな……


そう思いながら私は部屋のあかりを消した。


---


次の日。


退勤時間を過ぎても、私はまだ会社で仕事をしていた。


(あと少しだけ仕事したら帰ろう)


缶コーヒーを飲みながらパソコンのキーボードをカタカタと叩いていた。


今日は金曜日で、明日から土日休み。


週明けに仕事を残しておきたくないので、今日中に仕事を終わらせようとしていた。


まぁ私以外にも同じ理由で、まだ会社に残っている人は沢山いるんだけど。


(土日どうしようかなぁ……)


報告資料を作成しながら、私は土日の予定を考えていた。


久々に予定が一切無い休みなので、何をしようか悩んでいた。


いや、久々に……って言ってるけど、実際にはこの半年近くずっと家に引きこもっていただけだけども。


家でひたすらソードファンタジアをプレイしていただけです。


それで昨日、ようやくソードファンタジアのトロフィーコンプリートを達成したので、半年以上続いていたソードファンタジア生活もこれでひと段落。


これだけ長い時間楽しませて貰ったことに凄い感謝している。


でもソードファンタジアを全クリ出来たからと言っても、私のファンタジア熱はまだ下がっていなかった。


(せっかくだし、1作目のブラックファンタジアからまたやり直してみようかな)


実家の部屋に置いてあるゲームの事を思いだしながら、私は残業を進めていった。


---


夜9時過ぎ。


なんとかキリの良い所まで仕事を終わらせる事が出来た。


(よし、さっさと帰りますか)


うーん……と、私は背伸びをしてからさっさと会社から出た。


仕事中に土日の予定を色々と考えていたけど、結局土日は実家に帰る事にした。


理由はもちろん実家に置いてあるゲームを取りに行くためだ。


実家にあるゲームは兄の物だけど、その兄は海外で働いているので、今は日本にはいない。


兄が海外に出る時に「ゲームは全部お前にやるよ」と言われたので、ありがたく頂戴したのだ。


まぁそんな私もゲームを実家に置きっぱなしにして一人暮らしを始めちゃってるんですけども。


実家には今は父と母が二人で暮らしている。


私が今住んでるアパートから実家までは電車で1時間半くらいで行ける場所だ。


だから、まぁ昼過ぎに行けばいいかな、と思い、私はスマホを開いた。


そして母に「明日の昼くらいに家帰るよ」と簡単なメッセージを送ってから、私は駅に向かって歩いた。


駅に向かう途中の横断歩道の信号がちょうど赤に切り替わったので、私はそこで止まった。


この横断歩道を渡るともう目の前が駅なので、遅い時間帯でも利用する歩行者は多かった。


今も信号待ちをしている人は大学生っぽい若者や、私と同じ感じの会社員に、親子連れなど、それなりに多い。


私は横断歩道を渡ってすぐに駅の改札に行けるように、バッグの中から定期を入れたパスケースを取り出した。


パスケースには軍服を着ている少女のアクリルキーホルダーを付けていた。


もちろん特典で貰ったエステルのアクリルキーホルダーだ。


会社の人にオタバレした所で私は何とも思わないので、毎日使っているパスケースに付けておいた。


「それ……」


「え?」


声が下の方から聞こえた。


私は顔を見下ろすと、小さい女の子が私のパスケースを見ていた。


信号待ちしていた親子連れの子供の方だった。


「可愛いね、その子」


女の子はそう言って、私のパスケースについていたアクリルキーホルダーを指差して笑いかけた。


「あぁ、うん、可愛いよね」


私も女の子に向けてニコっと笑いながら応えた。


私が褒められたわけじゃないけど、なんだかちょっと嬉しかった。


「もう青よー、早く渡っちゃいなさいー」


その時、その女の子の母親がその子に向かって呼びかけていた。


気づいたらもう信号は青になっていて、周りの人達はもう信号を渡っていた。


女の子は母親に向かって「いま行くー」と言い、私に手を振ってから信号を渡って行った。


私も女の子に手を振ってあげた。


ちょうどバッグに入れたスマホが振動していた。


母からメッセージが来たのかな、と思い、信号を渡る前にスマホをもう一度確認しようとしたその時。


(……え?)


すぐに異変に気が付いた。


青になっている横断歩道に猛スピードでトラックが突っ込んできているのを私は見てしまった。


止まる気配が全く無かった、運転手の居眠り運転なのか、それとも意識が無いのかわからない。


先ほどの女の子はまだ横断歩道を渡っている最中で、それに気が付いてない。


(このままだとあの子がトラックにぶつかってしまう!)


そう思った瞬間、私の体は動いていた。


母親も気づいたようで、「危ない!逃げて!」と叫んだ。


女の子は「え?」と言って左右を見て、トラックが突っ込んでいるのに気がついた。


「ひぇっ……」


女の子は恐怖で足がすくんでしまったようだ。


このままでは女の子にトラックがぶつかってしまう……その瞬間。


ドンっ!


走った私は女の子に追いついて、そのまま両手でその子を横断歩道の先に押し出せた。


女の子はトラックにはねられずに済んだ。


(あぁ、良かった……)


心の底からそう思った。


そして……


グシャっ!


という音が聞こえた。


それが私、春奈津子の最後の記憶だった。




---




……どれくらい眠っていたのだろうか。


私が目を覚ますと、そこには禍々しい雰囲気を放っているお城が建っていた。


(なんだろうこれ? 夢?)


先ほどまでいたはずの日本とは明らかに違う世界で私は困惑した。


この世界が私の大好きなソードファンタジアの世界であり、私がエステルに生まれ変わっている事に気づくのは、あとほんの少しだけ先の話。


そして、ここから私の長い冒険が始まるのであった。


―おまけ編 おわり―

(第二話の冒頭に繋がります)

第2話で「トラックに跳ねられた~~」と、たったの数行で奈津子さんの話が終わったのが悲しかったので、その数行を掘り下げた結果3話もかかってしまいました……

次回から本編の少女エステルの話に戻ります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] フィラーになるはずだったこの「ボーナス」を読んだ今、これはいくつかの章を始めることではるかに良くなるかもしれないと感じています。それは決まり文句であり、以前に行われたことがありますが、あな…
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