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おまけ02.新作ゲームで号泣する!

奈津子さんがエステル嬢に転生するまでのオマケ話(2/3)

―20年前―


ファンタジアシリーズの第1作目である「ブラックファンタジア」が発売したのは、私は小学1年生の時。


当時、ゲームが大好きだった中学生の兄がブラックファンタジアを買ってきた。


私はまだゲームをやった事が無かったし、ゲーム自体にもあまり興味が無かった。


でも兄がとても楽しそうにプレイしていたので、私は兄の後ろでプレイ画面を眺めていた。


私は暇な時間にちょくちょく兄のプレイ画面を眺めていただけなので、シナリオとか、ゲームシステムとかはよくわからなかった。


ゲームはよくはわからなかったけど、ゲームをプレイしている兄の顔が喜んだり怒ったり、悔しがったり、表情がコロコロと変わって面白かったから、私はその兄の顔を見て楽しんでいた。


数日後兄はゲームをクリアしたようで、テレビの前で満足そうな顔をしながらエンドロールを眺めていた。


「お兄ちゃん、そんなに面白かったの?」


「あぁ、メチャクチャ面白かったぞ。」


「ふーん、そうなんだ。」


数日続いた兄の面白い顔が見れなくなるのがなんだか残念だった。


「奈津子もやってみるか?」


「え?」


兄は握っていたコントローラー私の方に向けてきた。


「でも私ゲームやったこと無いんだけど……」


「断らないってことは、実は興味あるんだろ?」


兄はケラケラと笑っていた。


「ち、違うし!」


「嘘言え、いつも俺のやってる所ジッと見てたじゃねぇか。」


私はムッと頬を膨らませた。


「それに大丈夫だって、そんなに難しいゲームじゃないし。ほらよっ」


兄が私にコントローラーを握らせてきた。


「ほらっ、ここ押せばスタート出来るから。あとは実際にやってみればわかるだろ。」


そういうと兄はゲームタイトルの「最初から」を指さしてくれた。


そりゃあ興味が無い、なんて言ったら嘘になる。


この数日間、ゲームをやっている兄の表情がコロコロと変わるのが見ていて面白かったし。


それに兄は悔しがったり、怒ったりとか色々な顔を浮かべながらゲームをしてたけど、それでも最初から最後まで楽しそうにプレイしていた。


そんな姿を数日間も見ていたら、あぁ、きっと面白いんだろうなって興味が出てくるわけで。


「う、うん、わかった。」


これが私にとって、生まれて初めてやるゲーム。


今までも兄のやっているゲームを眺めていたことはあったけど、自分で実際にやるのは生まれて初めてだ。


「まぁわからない所があれば俺が教えてやるよ。」


そういって兄は私の隣に座ってくれた。


私は初めての冒険にワクワクしながらタイトル画面の「最初から」を選択した。


そこから数日かけて私はブラックファンタジアを攻略していくのだった。


---


数日後。


兄の助言のおかげで、私もブラックファンタジアをクリアすることが出来た。


「良かったな!これでクリアだぞ。」


隣に座っていた兄は私に笑いかけた。


私はゲーム画面から流れるエンドロールを眺めながら、「うん」と呟いた。


「ゲームやってる奈津子の顔凄い面白ことになってたぞ。怒ったり笑ったり悔しそうにしたり、本当に忙しい事になってたなお前。」


「は!?」


兄はケラケラと笑っていた。


プレイ中は気づかなかったけど、どうやら私も兄と同じような事になっていたらしい。


でもそうなるのはわかる、だって、凄い面白かったから。


エンドロールを眺めながら私はこの数日間の事を思い出してた。


主人公を初めて操作した時はワクワクした。


初めて仲間が出来た時はテンションが上がったし、初めてゲームオーバーになった時は泣きそうになった。


最初のダンジョンボスを倒した時の達成感は凄かった。


次のマップに行くためのギミックがわからなくてイライラもした。


ライバルが主人公の仲間になった時はメチャクチャ興奮したし、頼もしさが半端じゃなかった。


ボスが強すぎて勝ち方がわからなかった時の絶望感が凄まじかった。


そして、ラスボスを撃破してエンディングが流れた時に感動。


生まれて初めて自分でやってみたゲームだから、全てが新鮮だった。


「あ、あれ?」


エンドロールが終わり、画面に「Fin」というロゴが出た所で気づいた。


私はコントローラーを握りながら泣いていた。


先ほどまでは馬鹿にしたような感じでケラケラと笑っていた兄だったが、今度は優しく笑いながら私の頭を撫でてくれた。


「奈津子、面白かったか?」


泣いてる私を見て、兄はそう尋ねてきた。


「うん、凄い楽しかった。」


私は涙を拭きながらそう言った。


「そうか、それなら良かった。そんだけ泣きながらやってくれるんだから、きっとこのゲームを作った会社も冥利に尽きるってやつだな。」


「うん、うん。」


私は涙を拭きながら、コクコクと頷いた。


「またゲーム買ってきたら一緒にやろうな。」


兄が私にそう言ってきたので、私はまたコクンと頷いた。


これが私とファンタジアシリーズの一番最初の出会いだった。


そしてここから私はファンタジアシリーズにハマっていくのであった。


…………


……


まさか20年経ってもファンタジアシリーズで号泣するとは思わなかったけど。


---


―20年後 月曜深夜3時過ぎ―


私はコントローラーを持ったまま、ぼーっとゲーム画面を見ていた。


画面にはソードファンタジアのエンドロールが流れている。


金曜日の夜から今まで通しでソードファンタジアをやっていたのだが、先ほどようやくクリアできた。


時刻は月曜日の深夜3時を過ぎたところ。


もう寝ないと……5時間後には出社しないといけないのに、私は何をしてるんだろう……


という後悔の気持ちは一切感じていない。


結論から言います、泣きました。


号泣しました。


明日……というか今日だけど、もう出社したくないです。


この余韻を味わってぼーっとしてたいし、同じくクリアした人と感想とかも語り合いたい。


それかトイッターで感想トイートをひたすら眺めて一日を過ごしたい。


―全てのRPGファンに向けた王道RPGゲーム!―


それが謳い文句だった今作の“ファンタジアシリーズ”だったけど文句無し、120点の出来だった。


まさにファンタジアシリーズの原点に立ち返った作品だった。


今作のソードファンタジアは、第一作目のブラックファンタジアと同じく、主人公が魔王を倒しにいくという王道シナリオだった。


シナリオは面白かったし、ゲームもクリアするだけでもやり応えがあって凄い満足出来た。


ここから隠し要素とか、他の仲間キャラのサイドシナリオ、やり込み要素もまだまだ沢山あるので、私の興奮は止まらない。


そんなわけで私としてはかなり満足はしたのだけど、でも、一つだけ気に喰わないことがある。


「んなぁああああああ!!何でエステル死んでしまうんやあああああ!」


それはエステルについてだ。


私は特典で貰ったデフォルメされたエステルのアクリルキーホルダーを握りしめて発狂していた。


エステルは序盤は主人公を助けてくれるお助けユニットで、主人公達の事を影から支えてくれるキャラだ。


凄い綺麗で、強いし、主人公達の頼れるお姉さんというポジションで、私のとっては超ドストライク級に尊いキャラだった。


でもエステルは中盤で裏切って、終盤には主人公達の敵役として登場する。


なんで序盤に凄く助けてもらったキャラと終盤になって戦わないといけないんだよ!ここの運営鬼畜かよ!


そこから語られるエステルの壮絶な過去や、魔族側についた理由などが判明する頃にはもう涙が出てきていた。


しかもこのエステル戦……吐きそうになるレベルで強かった。


エステルと戦いたくない……なんていう気持ちで少しでも手加減したら一瞬でゲームオーバーになる、私は5回ゲームオーバーになった。


エステル戦が終わると次がラスボスの魔王戦になるのだけど、正直に言うと、魔王戦よりもエステル戦の方が遥かに難しかった。


そしてその戦闘でエステルは死んでしまうから、もうそこからずっとプレイ中は涙が止まらなかったわけで。


---


「ふぅ……」


エンドロールが流れ終わった頃には私も落ち着いた。


「あぁ……面白かったなぁ……」


メインシナリオは今までのファンタジアシリーズの中で一番面白かった。


エステル関連のシナリオは悲しかったけど、それも込みで面白かった。


でも、本当に無粋なのは私もわかるんだけど……


「エステルが生存しているルートがあってもいいじゃん……」


ファンタジアシリーズのメインシナリオは一本ルートのみなので、エステルが生存するルートなんていうのは存在しないのは私もわかっている。


でも、それでも、本当に好きなキャラだったから……


「最後は報われてほしかったなぁ……」


デフォルメされたエステルのアクリルキーホルダーを持ちながら、そう私は呟いた。

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