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13.未来の魔法少女は夢を見る④(ソフィア視点)

ソフィア視点です(4/4)

「……何それ……?」


蛇の化物はすぐに冷静さを取り戻した。 そして、そう一言だけ呟いて私の事を冷たく睨みつけた。


「……あぁもういいや、なんか白けたわ」


そう言って蛇の化物は私の胸倉を掴んでいたのを離した。


私は胸倉を離されると思ってもいなかったのでビックリした。 でもその後すぐに、今度は自身の尻尾を私の首に巻きつけてきた。


「ぐ……がっ……!」


それは先ほど胸倉を掴まれていた時とは比べ物にならない程の強い力だった。


「私さぁ、絶望とか苦悶とかの顔を見るのが大好きなんだぁ。 だからさぁ、さっきの妹ちゃんの顔……全然可愛くなくて、アタシすんごい嫌だったわぁ。 もっとさぁ、苦痛に悶える姿とか、泣き叫ぶ姿が見たいんだよ? それでさぁ、ねぇ妹ちゃん? もうすぐ君は死んじゃうんだけどさぁ、今の本当の気持ちを教えてよ?」

「ぐ……ぐぎぎ……」


首を締める力が少しずつ強まってきた。 それでも私が窒息しないように……私が死なない程度の力で首をゆっくりと締めていった。


「ねぇ妹ちゃん。 嘘なんてつかないでさぁ、本当の事を言ってよぉ。 本当は怖いんでしょ? 辛いんでしょ? 泣きたいんでしょ? 死にたくなんて無いんでしょ?」

「あ……ぐ……」

「ねぇねぇ、早く教えてよ。 このままだともうすぐ死んじゃうんだよ? ねぇ、怖い? 怖いよね? ふふふ、早く泣き叫んで命乞いでもしてくれたら……もしかしたら助けてあげるかもしれないよ? どうかな、それでもまだ我慢するのかな?」


化物はウキウキとした表情のまま私を締め付けてきた。 締め付ける力がどんどんと強くなり……息も上手く吸え……なくなってきて……私は……


「……だ、だず、げ……」


― ソフィーが泣きそうな時は兄ちゃんが必ず助けに行くからさ。 だから泣きそうになっても笑っときな ―


(……!?)


助けを乞おうとしたその瞬間……唐突に、兄としたあの約束が私の頭の中に流れてきた。


それは昔、兄とした約束だった。


悲しくても辛くても、泣きそうになっても笑っとけと。 その代わりに、笑っている間に私の事を助けに来てくれる、という約束だった。


(でも……!)


そう言ってくれた兄は死んでしまった。 もう私を助けに来てくれる事はない。


(でも……約束したんだ……!)


約束したんだ。 だから私が約束を破るわけにはいかない。 たとえ助けが来なくても。


それにこの蛇の化物は私が命乞いをした所で、私を助けるなんて事は絶対に無い、確実に私を殺す。


この化物は私が泣き叫ぶ姿を見たいだけなんだから……私の無様な姿をじっくりと堪能してから殺すつもりなんだ。


それに私はさっき、一矢報いてやりたくて化物を殴りつけたけどそれは無意味に終わってしまった。 だからせめて……


「……ぐ……ふ、ふふ……」

「……?」


だかららせめて、死ぬ最後の瞬間まで笑ってやろうと、そう思った。


「ごわ……ぐ……なんで、な……い……!」


兄との約束を守りつつ、最後までこの化物に嫌がらせをしてから死んでやろうと思った。 最後の最後までこの化物の思い通りになんて私は動いてやるもんか。


「残……念、だっ……だね……!アン、ダの……望んだ、通り……になら、なぐで……ざぁ……!」


私は擦れた声を放ちながら精一杯笑ってみせてやった。 これが私の精一杯の強がりだった。


そんな私の強がりを見て、蛇の化物は急激にテンションが下がっていっていた。


「……はぁ……」

「ぐ、が……」


蛇の化物から笑顔が消えた。 そしてため息ばかりついている。


「……はぁ。 萎えたわ……本当に」

「ぐ、ぐぎ……」

「アタシさぁ、嫌なんだよねぇ。 アタシの思い通りにいかないことがさぁ!」


そう言って尻尾の締め付けをさらに強めてきた。 口調もどんどんと荒々しくなっていく。


「まさか私に口答えする馬鹿がいるなんて思わなかったし、死にそうだっていうのに笑ってくる馬鹿がいるなんて……本当にムカつくなぁ……イライラするなぁ……!」

「ぐぅっ……!」


「素直に泣き叫んで命乞いをしてくれればさぁ! すぐに楽にしてあげたのにさぁ! やっぱり人間って馬鹿しかいないんだねぇ……はぁもういいや、アンタに興味無くなったわ……いやでも待って……」


化物は先ほどまで無表情で苛ついていたのだが、またすぐに下卑た笑みを浮かべ始めてきた。


「……あはっ! 良い事思いついちゃったぁ。 ねぇ、アタシの事が怖くないんだよね? それって本当に本心なんだよね? 私、嘘も嫌いなんだよ? だからさ、本当に怖くないのか試してみてもいい?」

「……ぐ、ぐぅ……え……?」


蛇の化物はそう言い切ると、自身の尻尾を私の首から離した。 なんでいきなり首を締めるのを止めたのか理解出来なかった。 でもその後すぐに、今度は私の頭を両手で掴みだした。


「うがっ……!」

「さぁ、アタシの目を見なさい!」


蛇の化物は私の瞳を見つめてきた。 そして……


「石化の魔眼」(イービル・アイ)


パキッ……パキッ……


「……な、なに、これ……?」


蛇の化物がそう唱えると、私の足がゆっくりと石化していった。


「ふふふ、当たり前だけどさぁ、私の石化って他人にもかけれるんだ。 君にはそこら辺の石っころになる石化をかけてあげたよ。 でもあれだね。 君、魔法適正それなりに高いんだね。 本当ならもっと早く石化するはずなんだけどな」


そう言って化物は石化した私の足を見て羨ましそうな顔を見せてきた。


「羨ましいなぁ。 アタシ、魔法適正そんなに無いからさぁ。 それにこの石化技って一日に何度も使えない大技なんだよぉ? あーあ、今日は二回も石化使って疲れちゃったなぁ」

「あ……あぁ……」


パキッ……パキッ……


徐々に私の足が石になっていく恐怖心が、私の顔に出てしまった。 恐怖から出る声も口から出してしまった。


「ふふふ。 なぁんだ、ちゃんとそういう顔出来るじゃん。 まぁ今更どうでもいいわ、もうアンタに興味無いし、1人で勝手に死んで。 それじゃあアタシ疲れたから帰って寝るわ。 ばいばい」


化物はそう言って、私の頭から両手を離した。 そしてそのまま私に背を向けて森の茂みへと向かっていった。 本当に私を1人残して森から出ていくつもりのようだ。


「……あ、そうそう。 君はこのまま全身石になったら当然死ぬわけだけどさ」


化物は森から出ていく前に一旦立ち止まり、最後にもう一度だけ振り返ってきた。


「私の部下にさぁ、石が大好物な魔族がいるんだよねぇ。 ガーゴイルっていう魔族なんだけどさ」

「……え?」


蛇の化物はニヤニヤと笑っていた。 でも私にはもう興味が無いようで、私の事を見ようとはしてこなかった。


「それでさぁ、アタシはもうアンタに興味無いからさぁ、代わりにアイツをここに呼んできてあげるよ。 きっと人間との戦闘が続いてお腹が空いてるだろうし……それに妹ちゃんって、なんか食べたら美味しそうだよねぇ……?」

「そ、それって……」


この化物は恐ろしい提案をしてきている。


「ねぇ、妹ちゃん? 生きたまま食べられちゃうのって、どんな感じなんだろうね? やっぱり痛いのかな? それとも石になったらもう痛覚って無くなっちゃうのかな? ねぇ、どうだと思う? 食べられちゃう時の感想とか今度会ったら教えて欲しいなぁ。 あぁでも……」


そこで一息ついて、ようやく私の事をチラっと見てきた。 そして今までで一番最低に下卑た笑顔をこちらに向けてきた。


「そんときにはもう死んじゃってるか、あはは!」


蛇の化物はそう笑いながら、私を1人残して森から出ていった。


----


蛇の化物が森から出ていってどれくらい経つのか……もう私にはわからない。 石化の影響なのか、意識がだんだんと遠のいていっていた……


下半身は全て石になってしまい、今は胸の下辺りまで石化が進行していた。 下半身の感覚はだいぶ前から無くなっていた。 もう私は助からない。 このまま全身が石化して死ぬか、化物に食べられて死ぬかのどちらかを待つ状況だ。 でも意識が朦朧としていて、怖いとかそういう感情はもう芽生えなくなっていた。


(……だい、じょうぶ、か、な……あの、こ、は……)


意識が朦朧となっていて考える事はもうあまり出来なかったけど、それでも最後に私はあの子の事を気にかけた。


(……あの、この、こ、と……まもって、あげ、て、ね……)


私は彼女に渡した首飾りに祈った。 どうかあの子が無事にナインシュを抜けれますようにと。


ガサ……ガサ……ガサ……!


その時、森の茂みから草を掻きわける音が聞こえてきた。 何かがこちらに来ていた。


「グルルルルル!」


森の茂みから現れたのは、悪魔のような見た目をした化物だった。 その化物は全身が石で出来ていた。 さっき蛇の化物が言ってたガーゴイルとはこれの事だと思った。


私はガーゴイルと目が合った。 体の半分以上が石になっている私の事を見てニヤニヤと嗤っていた。 口からは涎も垂らしている。


(あぁ……わた、しを……たべ、る、つもり……なん、だ……)


ガーゴイルはどんどんと私に近づいてきている。 でも私にはどうすることも出来ない。 足は石化してしまって動く事は出来ない。 それに頭がどんどんと真っ白になってきてて……もうまともに考える事すら出来ないていない……


「グギャルルルル! グガアアアア!!」


近づいてきたガーゴイルは私の目の前で止まり、そしてそのまま口を大きく広げた。 私は自分の死を悟り、ゆっくりと目を瞑った。


……ズドンッ! グシャッ!!


大きな音が辺りに鳴り響いた。 私は石化している自分の体が砕けた音だと思った。 でも違った。 私の意識はまだあるし、痛みも無かったから。


「グギャァァァァアァァアァア!」


続いてすぐに聞こえたのは叫び声だった。 それは……私を食べようとしていたガーゴイルの叫び声だった。



― 間に合った ―



「……え……?」


声はしなかったけど、何故かそんな言葉が聞こえた気がした。


(お、にい……ちゃん……?)


それは天国にいる兄の声がしたのかと思った。 でも違う、だってその声は女の子だったから。 いや声は聞こえなかったのだけど……それでも何故か、女の子の声が私には聞こえた気がしたんだ。


私は朦朧としながらも、ゆっくりと目を開けた。


「……あ、れ……?」


私の目の前にいたはずのガーゴイルがいなくなっていた。


ガーゴイルは私から少し離れた場所で崩れ倒れていた。 石で出来ていた体が粉々に崩れていた。 何かとても強い力で吹き飛ばされたようだった。


「……あ……」


そして、私の目の前にはとある人物が立っていた……その人物は……いや、その子は、私の姿を見た瞬間に泣きそうな顔をしていた。


「……な……ん、で……?」


そこにはローブを羽織った女の子が……私の前に立っていたのだった。

ということで長くなってしまったがこれがソフィア視点のラストでした。


次回いよいよエステルが喋れるように!? ようやくここからエステルの冒険が始まります!

そして明日から3日間程外部出張があるので、その間は投稿出来ません……すいません!

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