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  作者: のぼり
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再会

 礼乃は重い足取りでホテルの喫茶室のドアを押した。見渡すと奥の席に独り男が座っている。礼乃をみて軽く手を挙げた。「やぁ久し振り。元気だった?やっと礼に会えたね」「…」礼乃はにこりともせずに「一体何ですか?どうして連絡なんか…」困った表情で男は「いきなりごめん。僕も迷ったんだ。こんなこと、礼に迷惑をかけるだけだって分かってる」黙ったまま二人は対面の席についた「アイスコーヒーを」男は近付いた店員に声をかけた。礼乃の席におしぼりと冷たい水をいれたグラス置いて頷いてテーブルから離れる「お義父さんやお義母さんも元気かい?」優しく落ち着いた声で尋ねた「それよりも何の用ですか?もう私たちは関わりはない筈です。どうして…」そこへアイスコーヒーをトレーに載せて店員がやって来た「ありがとうございます」礼乃はグラスを手元に引き寄せた「まあひとくち飲みなさいよ。美味しいよ」男は相変わらず冷静に礼乃を見つめる。礼はため息をついてグラスに口をつける「美味しいでしょう?」「正直、味がわからない位混乱しているんです」礼乃は律儀に返事をする「それは申し訳ない。落ち着いて話したかったんだ」「それで、用件はなんでしょうか?」先程までとは違って困った表情をした男は言い出しづらそうにやっと口を開いた「実は、公華が病気になったんだ」「えっ…。でも一体それが何ですか。病気はお気の毒ですが、私には係無いことでしょう?」「うん。そうなんだ。礼には、関係ないことなんだ。でも、公華が礼に謝りたいって言うんだ。」「…。」「礼なら分かることなのかい?僕も理解が出来ないんだ」「…私に聞くことですか?問い質したいなら奥様に直接尋ねるべきでしょう❗️私に尋ねる事じゃないわ。」「何度も聴いたよ。でも公華は泣いて謝るばかりで答えてくれないんだ。」「…それで?私なら何か答えると思ったんですか?呆れた。」「礼…。」「あなたと奥さまの問題ですよ?赤の他人の私に会って尋ねることじゃないでしょう?そんなことも分からない人だったんですか?情けないです。遅かれ早かれあなたとは一緒にいられなかったんだとつくづく感じました。くだらない事で私の生活を壊さないで下さい。二度と連絡して来ないで‼️」「礼…。君が言う通りお門違いだと分かっているんだ。しかし、君に僕を返したいと言うんだ」「…」「一体何があったんだ?礼と公華の間に教えてくれないか…。」「なんて事を言い出すの?お嬢ちゃん育ちでそのまま大人になった人が言いそうな事ね。本当に腹立たしい‼️もう話すことは有りません」礼乃は席を立ちさっさと出口で代金を払って出ていった。「礼…まってくれ」喫茶室から出てきた男は礼乃の手をどうにか掴んだ「離して下さい。もう話は清んだでしょう。手を離して❗️」言い合っている二人のなかに男が割って入ってきた「その手を離してもらえるかな?」「何ですか、あなたは」礼乃の手を掴んだ男が振り向いた「俺は、このあと礼乃さんと予定が有るんだ。だから手を離して貰おうか?」「成田、さん…。」「用があるって言ってたから時間潰してたんだよ。何だか面倒なことなの?」「礼…。知ってる人なのか…」「ええこのあと約束があるの」「そうなんだ。失礼しました。困らせてごめん。」男は一礼してホテルの方角へ立ち去った「大丈夫ですか?立花さん」「先生…ありがとうございました」礼は成田と言う男に礼をした「まあまあ大事無いなら良いんですけどね。意外な気がしたんですよ。立花さんの修羅場でも見ちゃった様な感じで…」「お恥ずかしいです。みっともないところをお見せして」「誰ですか?あの男。この辺じゃ見ない感じの人ですけど?」「分かります?」「結構良い身なりしてましたよね?」「成田先生もスーツよくお似合ですよ」「あー、今日は午後から学会で着なれないスーツで疲れちゃって、ハハ」苦笑いの男は頭を掻いている「そうだ。気分転換にお茶でも飲みませんか?」「気分転換?」「嫌な思いしたまま家に帰るのって辛いでしょう?僕に付き合って下さいよ」「そうですね。約束が有ることになっているし既成事実をつくっておきましょう。」「じゃあ、駅前のカフェへ行きましょうか」礼は成田と駅前のカフェへ入った。時間的にも客が少なくなる時間帯で奥まった席に二人で向かい合った「成田先生、先程は本当にありがとうございました。助かりました」礼乃は改めて成田に礼を言った「いやいや、そんなたいそうな事じゃ無いですよ」成田は笑って答えた

「あの人は…、元夫なんです」ポツリと呟いた「ええ、お、夫?立花さん結婚してたんですか?」「先生はご存じ無いですよ。私、これでも13年前に結婚してたことがあるんです」「そんなに前に…」「22歳でした。でも僅か1年半で離婚したんです。お恥ずかしい」「でも、13年前って、今更復縁でもないでしょう…」「…。」黙ってしまった礼乃を見「えっ図星ですか?」素直に驚く成田になんだか笑がこぼれて「正確には違います。でも当たらずも遠からずと言うところです。馬鹿馬鹿しい。もう悔しくて、情けなくて…悲しくて…」最後は言葉がつまって涙が落ちてしまった「立花さん…。」「ごめんなさい。成田先生関係ないのに…ごめんなさい。落ち着いたと思ったのにまだダメみたい」なんとか落ち着かなくてはと深呼吸してみたり礼乃が必死になると「謝らなくて良いですよ。今のうちにたくさん泣いちゃって下さい。この席目立たないですから…。俺は正直立花さんが結婚していた事に驚いています」「そうですか?」「たまにしかお会いしませんから正直俺はあなたの事をよく知らないです。プライベートなことだしねぇ」頷いて「関わりが無ければ興味もないですもの」「興味が無いわけでは無いんです」慌てて訂正した成田を「お気遣い戴いて恐縮です」礼乃は頭を下げた「本心です」成田はまた訂正した「俺は、余り恋愛に興味が無くて、他人をどうこう詮索する事をしないで来たので…。」「何か辛い恋愛でも?」「いやぁ懲りたのは事実ですけど勉強することが多すぎておざなりになっていたと言うことですかね。」「分かります。私も離婚してから誰かをきに掛けたことが無いので理解できます」「立花さん、落ち着いたところなのに聞いて良いのかわからないのですが、あの人は一体何のために此処へ?」成田は遠慮がちに礼乃に、尋ねた「今の奥さんが病気になってー自分が永く生きられそうもないので私に彼を返したいって言うんです」「ええと…?意味が良くわからないのですが。」成田は頭の上に大きなクエスチョンマークが3つ位のりそうな位首を傾げてわからない❗️という表情をしている「ぷっ成田先生、可愛い表情してますよ。アハハ」しばらく笑い転げた礼乃はスッキリした顔をしている「さっきよりサッパリした表情に見えますけどもう大丈夫そうですね。」「はい、あリがとうございます。成田先生に、救われた気分です」ニコニコして礼乃がお礼をいう「ではそろそろ出ましょうか…」成田は、先に席を立ってレジの方へいってしまう。慌てて礼乃が追うと「誘ったのは僕ですから今日は僕に払わせてください」ニッコリ笑って店を出た「次回は立花さんでお願いします。ではこれで」そう言うとさっさと歩いて行ってしまった「男前な人ね」礼乃は呟いた

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