悲しい過去
家に着いた礼乃は母親に「ただいま」と声をかけて自室へ戻った「おかえり」母親は、いつも通りだったどうやら彼は、約束を守った様だ。一息着いて、着替えを済ませ居間に戻った「礼乃、お父さん来週退院出来るそうよ。」佳子は、夕食の仕度をしながら声を掛けた「お母さん、今日病院へ行ってきたの?」側で小鉢にキュウリのあえ物をよそいながら礼乃が尋ねた「着替えを持っていったのよ。先生は、いらっしゃらなかったのだけど看護師さんがそろそろ帰りますか?って言ってたのよ」「ふーん、まぁ父さんは、足以外は元気だものね」「病室でも声が大きくて迷惑かけてないかしら…。」「いくらなんでも道場とは違うでしょう」「だと良いけど
」佳子は、微笑む「お父さんは、他人に迷惑掛けるのを嫌がる人だもの。大丈夫よ」「そうよね。普段から大きな声を出している人でしょう?つい心配しちゃった」昔から佳子は、心配性であった。礼乃が離婚すると13年前に家を出たときはやつれてしまった程だ。だから、決して彼と会わせる訳には、いかないのだ」食事を済ませて礼乃は風呂を済ます「今日はなんだか疲れちゃった先に休むわ。おやすみなさい」佳子に声を掛けて部屋へ戻った
さっきの事を考える
元夫滝本紀彦は、13年前に離婚した相手だ礼乃が大学生の時に知り合い卒業して2年で結婚した。礼乃はもっと時間をおきたいと思っていたが滝本の積極的な推しにおれたのだ。滝本の両親も優しい人物で礼乃をとても大事にしてくれた。礼乃の両親とも気が合うと懇意にしてくれた。ある日、夫の紀彦が海外へ長期の出張へ出掛けた午後礼乃は紀彦の母と出掛ける予定だった
そこへ、突然三田公華とその母親が訪ねてきた「せっかくですが、これから出掛けるところなので」通せんぼでするように「行かせないわ」と公華の母貴子が睨む「あの、何事でしょうか?」「今日は紀彦さんは?」公華が尋ねる「今日から海外へ長期出張に出掛けました。」「まぁ酷いわ紀彦さんたら」「どういう事ですか?」「あなたは知らないでしょうけど紀彦さんは公華とずっと付き合いがあったのよ‼️」「子供の頃からの付き合いと聞いています。兄妹みたいな関係だと」「兄妹ですって?兄妹の付き合いで子供ができるかしら?」「子供?」「そうよ。あなたとはまだのようだけど?」「そんな筈は…。」「あら、ではこれを❗️」見せられたのは母子手帳、母親の名前は、正に公華であった「妊娠14週と記入されていた」「紀彦さんが父親とは書いてありません」礼乃がなけなしの意地で答えると[何も知らないのね。紀彦さんと私はあなたと出会う前から愛し合ってたわ。そのまま結婚するはずだったのに」「ではなぜ私と結婚をしたんですか?」「あの頃、喧嘩して自棄になってあなたと一緒になるって」「嘘です。そんなの嘘です。紀彦さんはそんな事する人じゃないわ」「あらこの母子手帳みてもわからない?」「…。信じられない。そんな事。」「あなたには気の毒だけどこの家から出ていって欲しいわ」「籍なんて抜けばいいじゃない、お腹の子が可哀想でしょう?あなたは子供がいないんだから」「本当の事なんですね?公華さんと子供が出来る関係だったことも」「そうよ。あなたの知らないところで紀彦さんと公華は愛し合ってたわ」「酷いわ。紀彦さんもう何も信じられない❗️」「遅かれ早かれあなたはこの家を出ていくしかないのよ」「どうして。どうしてなの?紀彦さん」礼乃はただ泣くしかなかった。今朝が出かける前の優しい言葉も寂しそうな瞳も嘘だったのか。信じられないの一言である
嵐を起こして公華達は帰って行った
その日の約束をキャンセルして礼乃は独り悩んだ。三田親子は、今までにも時々やって来たが特に意地悪をされたことも無い。紀彦と昔話で盛り上がることがあっても意地悪な事はなかった。だからこそ今朝の話しは、本当の事なのか?紀彦は、まだ移動中で連絡がとれない。滝本の両親に相談しようか?もし、真実なら紀彦は、公華と一緒に私の事を笑い者にしてたということ?そんな筈は無い、ずっと優しく愛してくれた。信じよう。紀彦さんから連絡が来るのを待とう。
だが紀彦は、連絡ができなかった。カナダに到着した後、取引先から招待されて、電話を掛けられない程ハードなスケジュールになったのだ。結局、時差ボケもあり礼乃へ連絡出来たのは、既に礼乃が家を出た後だった。




