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天才になりたかった変人  作者: 立花悠真
普通じゃない何か
7/15

都合がいい

そういって立ち去った男は

残り20分しかない授業に戻る程真面目らしい。


「香澄か…綺麗な名前」


綺麗と思ったのと同時に

可哀想な名前だとも思った。


「…寝よ」


寝て起きれば、今あった事も

感じた事も8割り忘れている。


寝れば大体の事は忘れられる。


特にこの能力が重宝するのは

イラついた時だ。

友達に教師に先輩に親に、イラついたとしても

寝れば忘れられる。


この能力のおかげで今では

『怒ったことある?』と言われ

怒ったことがない人とまで言われるようのなった。


その方が都合がいいので、もちろん否定はしない。


人の愚痴も言わなければ

基本イエスマン

我儘は言わないが、相手の我儘は聞く

嫌いな人も居ない。

逆に好きな人も居ないが、好きな振りは得意である。


究極の面倒くさがり。

最近は咀嚼を面倒だと思うようになり

硬くよく噛むものは避けるようになった。


トイレまで歩くのを面倒くさがり

半日トイレを我慢した事もある。


流石に生理現象には勝てず

トイレに駆け込む羽目になった1件から

トイレは行くようになった。


ただし、食事に関しては拍車がかかり

面倒だという理由で1日何も食べない日があったりする。


そうこうしてる間に時計を見ると

もう15分しか残されていない事に気付き

寝る事を諦めた私は

ポケットに忍び込ませていたケータイを取り出す。


Twitterの巡回を済ませ

母にメッセージを送る。


(しんどいから保健室に行ったら、少しだけ熱があった。早退したら迎えに来れる?)


送って1分たたない程度で返信が来る。


(無理、電車で帰り)


返信は予想どうりで。

母は仕事人間。

娘が体調不良となれば帰れるだろうが、何せ仕事に生きている人なので

私の為に仕事を中断するような人ではない。


では、何の為に連絡をとったのか。

それは


「立花さん大丈夫?熱あるし早退する?」


保健師が帰ってきて予想どうりのセリフを言う。

この為だ!


「そうします。」


「親は連絡とれる?」


「さっき連絡したんですけど、迎えに来れない見たいなので自分で帰ります。」


「分かった。じゃあ学校からもお母様に電話しておくから、気をつけて帰ってね。荷物教室に取りに行ける?」


「はい、大丈夫です。ありがとうございました。」


シナリオ通りに事が進みすぎて、怖いぐらいだ。


男子2人が保健室に来て

話しかけた時くらいから、考えていた手。


寝る時間が無いという最悪の事態を

想定していて正解だった。


「失礼します」


そう言って私はそそくさと保健室を後にする。

帰れると決まったのに、ここに長居する必要は無い。


授業はまだ10分程度残っているので

廊下には誰1人居ない。

少し悪い事をしている様で気持ちが良かった。


教室の手前で、今はいるか、終わってから入るかの

2択を迫られる。


しかし、目的は単純だ。

いかに早く帰宅するか

それが最重要項目であり

今、嫌いな英語の教師と合わなければいけないという

マイナス要素はそれに匹敵する項目ではない。


従って私は、堂々と教室のドアを開ける。


ガラッ


一気に教室の視線を独り占めする。


淡々と自分の机まで向かう私に


「立花どこに行く」


怒りたい衝動を堪えた声で英語の教師が

そう私に問いかける。


「帰る」


そう言って私は財布と定期とイヤホンしか

入っていない鞄を持ち、教室を出ようとする。


「待て!待て立花、話を聞きなさい」


そう言う教師の言葉を無視して

教室を後にする私は

さっきした自分の選択を大いに賞賛した。


直接、嫌いな教師に嫌がらせをするのも

悪くないとまで思った。


そんな事より、家に帰ってからの

自分の時間をどう使うかで今は

頭がいっぱいだ。


ゲームする?漫画読む?それとも買い物?


そんな幸せを噛み締めていた矢先。

今日1番聞きたくないであろう声が

聞こえてくる。


「あれ?要人さーん」


遠くからまだ記憶に新しい声が聞こえる。


「要人さんどうしたのー?」


幻聴にしようかと思ったが、チラッと見ると

既に小走りでこちらに向かってくるそれは

確実に私をロックオンする。


「要人さんどうしたの?帰るの?」


そうやって、そっぽ向いていた私の顔を

覗き込むのは、


「香澄さん近いです」


「あ、ごめん。こっち向いてくれないからさ」


体育終わりの彼と、ばったり靴箱で鉢合わせてしまった。


「要人さん体調悪いの?大丈夫?」


「はぁ、まあ…」


適当な返事で交わそうとするが

なにせ、先輩が私の向かう先を邪魔するせいで

全く進めない。


どうにかならないかと

困っていると。


「じゃあ、俺も帰ろっと」


予想だにしない言葉が聞こえる。


「はい?」


「俺も帰るから、門のところで待ってて」


「別にかえ…」


「待っててよー?」


そう言って走り去って行った。


断る余裕すら貰えなかった私は

仕方なく門で、待たざるを得なくなってしまった。


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