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天才になりたかった変人  作者: 立花悠真
普通じゃない何か
3/15

小さな反抗

朝礼が終わり、1限目は英語。

私は立ち上がる。


「要人どこ行くの?」


「保健室、適当に言っといて〜」


「要人、本当に英語の先生嫌いよね」


「まあね、じゃあよろしく」


私は英語の授業を2年になってから

1度も出ていない。


理由はちっぽけな事だ。

英語の教師は私の名前を、1年半以上

立花タチバナ要人カナトだと思っている。


確かに私は名前を間違えられる事が多い。

むしろ初見の方の9割が間違える。


要人カナトと書いて要人カナメと読む。


確かに間違えられる事が多いので

高校生活が始まった頃は、ほとんどの先生に

訂正を入れていたものだ。


テストの返却時、名前を呼ばれ

前に取りに行く。


「たちばな かなと」


「はーい、かなめでーす」


これが、私のテスト返却のテンプレート。


私の訂正に慌てて謝る教師には

全くイラついたりはしない。

私がややこしい名前な事は、重々承知しているからだ。


しかし、英語の教師。

私のテンプレートを何度聞いたのだろうか

1年以上テンプレートを言い続けたが

あの教師は全くもって覚えない、謝罪しないの

ダブルパンチ。


テスト返却の度に間違った名前を訂正するのが

面倒になり、2年生に上がった時に訂正はしなくなった。


更に2年生の中間テストでも、改善されず

私は見切りをつけた。


その見切りの付け方が、授業のサボりとは

まあ何とも学生らしい。


ガラガラガラー


「あれ?立花さんどうしたの?」


若くて、優しくて、物腰柔らか

話し方も爽やかで、こういう男性がモテるんだろうな

の代表であろう保健師の先生。


「頭痛いので、ベッド貸して下さい。」


「最近頭痛多いね、何か薬飲んでる?」


「飲んでないです」


飲んでるわけない。

頭痛なんて全く無いのだから。


「オッケー、とりあえず熱測ろうか。」


体温計を渡されると、そのまま脇に挟んだ。

多分熱も無いだろうなと

ピピピッと鳴った体温計を確認する。


「36.9かーちょっと有るね、立花さん平熱低くなかったっけ?」


意外にも高くて驚いた。

私は普段35.6が平熱なので、36.0を超えること事態が

珍しい。


「ベッド使いな、ちょうど誰も居ないしゆっくりしたら?」


「ありがとうございます。」


何はともあれ、授業を受けずに済みそうなので一安心。

ちょうど昨日の夜、遅くまで漫画を読んでいたせいで

寝不足気味。

有難く睡眠を取らせてもらうことにした。


「立花さん教科の先生に伝えてきた?」


そうだった、本当は欠席する教科の教師に保健室に行く事を伝えてから来なくては行けないが

何せ、英語の先生とは因縁の中なので

話すらしたくない。


「言ってないです。友達には伝えてます。」


「そっか、一応先生に伝えてくるから教科教えて。」


「英語。」


教科を聞かれたのは、これで何度目だろうか。

答える教科が全てが英語なのは保健師も気付いている。


そろそろ感ずかれてもおかしくない。


「英語は担当、野村先生だったっけ?」


「はい。」


「了解、ちょっと伝えてくるから寝てていいよ」


保健師が好かれるのは、こういう所だろう。

安易に干渉してこない所だ。


正義感の強い教師ほど、こういう時

ズケズケと懐に入り込んでくる。


あたかもそれが、正義であるかの様に。


大人は勝手だ時間を守れ、化粧はするな、髪を切れ

ノートを取れ、提出物をしろ、忘れ物をするな。


授業に遅れてくる先生もいれば、無駄に濃い化粧の先生もいる。

テスト範囲が終わらなくて、最後にプリントを渡してくる先生もいる。

そんな先生に、直接文句を言ったり、怒ったりする生徒は居ない。


提出日に提出物を忘れると、生徒は成績を落とされる。


授業のプリントを職員室に忘れてきた先生は、クラス委員長にプリントを取りに行かせる。


教師とは、何ともお偉いお方なのだろう。


そういうお高くとまっている教師は

やはり生徒には好かれない。

影であだ名を付けられ、愚痴のオカズにされる。


逆に、生徒に優しく、甘い先生は

生徒には人気だが、同業には好かれない。


なんと不合理な。


男子に好かれるタイプの女子は

女子に嫌われると言った所だろうか。


ガラガラガラー


保健師が帰ってきたのか扉が開いた。


「あれ?先生居ないじゃん」


「じゃあなんで空いてんだよ。」


先生では、無いことが分かった途端

何故かバレないように息を潜める。

別にバレた所で悪い事をしている訳ではない。


いや、違った。

一応サボっている。

たまたま熱が少しあったから、忘れていたが

私は今絶賛サボり中だった。


と、そんな事はどうでも良くて。

もし私がいる事がバレて、覗かれでもしたら

寝たフリをした方がいいのか

起きていた方がいいのか

どちらにしろ、微妙な空気が流れるのは間違いない。



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