男心
ルールの追加がされたその日の放課後。
「あの、付き合ってる事隠すルールなのでは…」
何故か一緒に隣を歩く彼。
「ん?付き合ってる事は隠すけど、友達でも一緒に帰っちゃだめなの〜?」
「女友達と一緒に2人で帰るのは普通なのか?」
「う〜ん…まあいいじゃん、細かい事は!」
誤魔化した…
私は今まで、登下校は一人がいい派で
高校の1年半、一切誰とも登下校を共にした事がないので、普通が分からない。
考えるだけ無駄なので、流される事にした。
それより、重大な事に私は気づいてしまったのだ。
「そういえば、部活は???」
そう、私の記憶が正しければ
彼は野球部だったはず。
野球部はテスト期間意外、基本休みなく部活をするほど、真面目な部活動なので休みなわけは無い。
「あ〜、辞めた〜」
「辞めた??」
「うん、今日辞めてきた〜」
「うそ、何で?」
そんな、急に辞めるなんてありなのか?
私が退部する時は、相当先輩と顧問と揉めた。
辞めないで欲しい、考え直してくれ。
せめて次の大会まで。
結局、退部届けを提出してから、受理されるまで半月はかかった。
「ん〜?前々からお金欲しいからバイトしたいとは思ってたし〜、うちの部バイト禁止だし〜」
「だとしても、急すぎるんじゃ…」
「あとは〜…」
何故か言葉が止まる彼は、さっきまで隣を歩いていたはずなのに、少し早足になり1歩先を歩く。
後ろを振り返って彼は言う。
「要人との時間欲しいじゃん?」
私は目が点になり、足が止まる。
人生において初めて言われた言葉に、困惑する。
彼女としては喜ぶ所なのだろう、だがどう反応していいか分からず、返事に困る。
「俺が勝手にしてる事だから、気にしなくていいよ」
困っている事に気づいたのか、彼からフォローが入る。
「いや、なんていうか、初めて言われたから
どうやって返事するのか分からなくて」
さっきまで1歩先を歩いていた距離は
いつの間にか元の横並びに戻り、
さっきより距離が近く感じる。
「何それ〜」
と、吹き出しながら笑う彼はさっきの大人びた面影はなく、無邪気な子供に見える。
「そんなの、思った事そのまま口に出せばいいんだよ〜。要人はどう思った?」
「どう思った…上手く言えないし、よく分からなかったけど…」
少し考えて
「嫌ではなかった…」
そう私は答えた。
そんな私を見て、彼は無邪気にこっちを見て笑った。大人になってみたり、おもちゃを買ってもらった子供になってみたり。
彼は出会った時から、そうだったなー。
と初めて一緒に下校した日を思い出したりしている
自分に驚いた。
「その調子で、ちょっとずつ分かってくるといいね〜。
要人の思う好きってのが」
何か、心を読まれたかのようだった。
彼はいつもの満足気な顔で、いつもの在り来りな会話が続く。
駅が近づき、そろそろ分かれ道という時に
思い出したかのように彼は話し出す。
「明日から駅で待ってて欲しいんだけど、いい?」
「別にいいけど」
「じゃあ、電車着く時間LINEで教えて〜って
事でLINE交換しよ。まだしてなかったでしょ?」
「あ、はい」
ポケットからスマホを出して連絡先を交換する。
友達が増えたのなんて、いつぶりだろうか…。
「ってか、お互いLINEまだ知らなかった事にビックリするよね」
「そーなの?」
「そーだよ!普通は仲良くなりたてで交換してるよ〜」
「だって、前までは仲良かった覚えはないから…」
「…それ、結構ショックよ?」
「ごめん…」
仲良くなかったと言うか、騒ぎの中心になりたくなくて
彼の事を避けてた感じだから
仲良くならないようにしてたが正しいのだけれど
それもそれで、彼的には不満そうだし、言わなかった。
「別にいいよ〜、形は普通じゃないかもしれないけど
今は彼女だし!」
さっきまでの、小動物の様な顔が嘘のように、自慢げな笑顔。
本当に彼は反応がわかりやすい。
「じゃあ、また明日〜」
「うん、送ってくれてありがとう」
そう言って別れた後、直ぐにメッセージが
送られてきた。
その日は夜まで何通もやり取りして
久しぶりに誰かと長時間連絡をとったせいか
疲れて気づかない間に寝てしまっていた。




