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7/10

単純接触効果ってなんだっけ?



「アキラちゃんは、どこか目的地があったの?」


 ナムンから距離を取るため、30分ぐらい歩いていたら、大きな駅に着いた。

 駅前に高架建造物が網の目のように架けられていて、デパートとか企業ビルとかに直接行けるようになっているみたい。

 高架の下には、打ち捨てられたタクシーがいくつも見える。


「えっと、特には……」


 話を聞いてみると、アキラちゃんは私と同じで、フラジール・オンラインを始めたばかり。

 よく知らない場所に放り込まれて途方に暮れているうちに、幹線道路を見つけた。

 そこをたどっていけば大きな街に行けるかな、そう思って進む途中でナムンに遭遇したらしい。


「ふーん……私、渋谷に行ったことがないから、ちょっと行ってみようかなって」


 アキラちゃんは、田舎者が渋谷に憧れているのね、と蔑んだりしないだろうから言ってみた。

 予想通りに、そうなんですね、と言うかのように軽く頷く。

 それどころか。


「そこまで詳しくはありませんが、案内できると思います」


 恥ずかしそうに俯きながら、アキラちゃんは私に言う。


 もっとどや顔してもいいんだよ!? なんなら私をバカにしてほしい!


 アキラちゃんの聖人君子ぶりに、私の心中は乱れる。

 外には出さないけどね、引かれちゃうかもしれないし。


「……じゃあ、相互お気に……する?」


 平然を装おうとしたけど、ちょっと無理だった。


 このゲームは、基本的に一人プレイだ。

 しかし、他のプレイヤーを一人だけお気に入りに登録することができる。

 相手も自分をお気に入りに登録していると、相互お気に入りの状態になって、お互いの居場所がわかるのだ。


「相互お気に……?」


 アキラちゃんは不思議そうに首を傾げた。

 どうやら、お気に入りの機能を知らないようだ。


 私がアキラちゃんに説明すると。


「えっと……ふつつか者ですが、よろしくお願いします」


 そんなことを言って、アキラちゃんは私の手を両手で握ってきた。

 狙ってやっているのではないかと思うほど、純粋だな。

 実は、お腹の中では黒いことを考えていたりするのかな。


「……はい、登録完了みたいだね」


「あっ、マリアさんがどこにいるのか、わかるようになりましたっ」


 嬉しそうなアキラちゃんを見ていると、腹黒かどうかなんてどうでもよくなった。

 繋いでいた私の手を離して、アキラちゃんは私から距離を取ったり、私の周りをぐるぐる回ったりしている。

 ステータス画面を開くと、相互相手がどの方角のどのくらいの距離にいるのかがわかるのだ。


「えへへっ、すごいですね」


 私のところに戻ってきて、アキラちゃんは私にぎゅっと抱きついてきた。

 アキラちゃんの方が10センチぐらい背が高いから、私は美少女の顔を見上げる形になる。

 というか、まだ出会ってから一時間も経っていないのだけれど、一気に心を許しすぎなのではないだろうか。

 都会の子って、こんな感じなの?


「え、えっと……ごめんなさい、私……」


 私が戸惑っているのをどう思ったのか、アキラちゃんは私からそそくさと離れた。

 距離を取ろうとするアキラちゃんの手を掴んで、引き寄せる。


「ごめんごめん、急にぎゅってしてくるから驚いちゃった」


 仕返しに、私はアキラちゃんに抱きついた。

 わりと大きな胸はむかつくけれど、アキラちゃんの柔らかさは単純に気持ちいい。


 しばらくしてアキラちゃんを見上げると、顔を赤くして嬉しいのか恥ずかしいのかの中間のような表情を浮かべていた。

 それを見ると、なんだか私も恥ずかしくなってきて、アキラちゃんからそっと離れた。

 手は繋いだままだよ。


「……あっちに大きなビルがふたつあるから、行ってみよ?」


 私の問いに、アキラちゃんはこくっと頷く。

 ちょっと前まで孤独を満喫していたのに、我ながらゲンキンなものだな。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【名前】マリア

【レベル】3

【HP】22


【ステータス】

最大HP:34

筋力:7

敏捷:7

幸運:7

【持ち物】アニマルハグリュック(パンダ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【後書き】

お読みいただき、ありがとうございます。

ブクマと評価、そして感想がなによりの回復薬となります。

作者がゲームオーバーにならないように、なにとぞよろしくお願いいたします。

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