可愛いアイテムは気後れします
大人が見ていたら眉をひそめるぐらいの奇声を上げながら、私はログハウス内のアスレチックを遊びきった。
子どもの時でも、こんなにはしゃいだことはなかったかもしれない。
現実と同じように、運動したら身体が熱くなるみたいだ。
私は着ていたワンピースとショートブーツを脱いで、地下にあったマットスペースに寝転がる。
少しぐらい埃っぽいのは、もう気にならなくなっていた。
ちなみに、下には白いスポブラとショーツを着けていた。
倫理的にセーフっぽい、エッチではないものだ。
試しに脱ごうとしたが、見えない力に阻まれてダメだった。
いや、露出狂とかではないよ?
ゲーム好きとして、いろいろやってみたくなるだけ。
「体つきも変えられればよかったのになぁ……」
ゲームの初期設定では、名前と顔ぐらいしかエディットできなかった。
なんか、身体感覚の適合のために、身体は現実世界と変えられないんだって。
私は、18歳という年齢のわりには、すとーんと平らな胸を見下ろす。
「まあ、誰に見られるでもないからいいけど」
それにしても、少し胸を大きくするぐらいしてくれてもいいんじゃないのかな。
ぶつぶつと文句を言いながら、私は火照った身体が冷めるのを待って、脱いでいた服を着た。
「そういえば……」
遊ぶのに夢中で後回しにしていたが、ロストメモリーを見つけたことでレベルが上がっていた。
フラジール・オンラインでは、レベルアップすると自動的に最大HPが2だけ上昇する。
そして、それとは別にステータスポイントという、筋力、敏捷、幸運のいずれかを上げられるポイントが3だけ付与される。
「とりあえず、均等に振っておこう」
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【名前】マリア
【レベル】2
【HP】30
【ステータス】
最大HP:32
筋力:6
敏捷:6
幸運:6
【持ち物】なし
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うん、いいんじゃないかな。
基本的に敵は躱すものらしいから、そこまで筋力はいらないかもしれないけど。
というか、説明書には出るって書いてあったけど、ここまで現実世界と変わらない世界で、モンスターなんか出てくるのだろうか。
ちょっと見てみたいような気もする。
「いや、遭遇しないならその方がいいか」
このゲームではHPがゼロになったら、初めからやり直しらしい。
つまり、国を選択してランダムに飛ばされるところからだ。
せっかく街中からスタートできたのだから、なるべくやり直しは避けたい。
「よし、ちゃんと探索しましょう!」
私は地下から這い出て、このログハウス内をしっかりと見て回る。
さっきまでは、アスレチックとか滑り台とかに目がいっていたからね。
ロストメモリーが存在している場所には、良いアイテムがある可能性もある。
けっきょく電気は通っていないようで、薄暗くて探索しづらかった。
でも、一階にあった図書室のようなスペースに鞄が、二階のテラスにHP回復薬があった。
鞄は、背負うとパンダにハグされている見た目になる子供用のもので少し恥ずかしかったが、誰に見られるわけでもないから、持っていくことにした。
HP回復薬は、試験管サイズの容器に入った緑の液体で、腕に刺して使うようだ。
容器に10と刻印されているので、おそらくHPが10だけ回復するのだろう。
レベルアップ時の自動回復はしないまでも、まだHPは減っていないので、後で使うことにしよう。
「こんなものかな……」
遊び道具はたくさんあったけど、武器になるようなものはなかった。
まあ、子どもの遊び場だったところだから、当たり前ではあるけど。
なんとなく、散らかっていたウレタンの大型積み木を片付けてから、私はログハウスを後にした。
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【名前】マリア
【レベル】2
【HP】30
【ステータス】
最大HP:32
筋力:6
敏捷:6
幸運:6
【持ち物】アニマルハグリュック(パンダ)
HP回復薬《10》
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