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毒味

殺した命を食べるために調理する。

首を切り落とし血を抜いて毛皮を剥いで、肉から骨を外すこの作業はセリスも片手で出来る限り手伝った。


魔物と言えども身体の構造は普通の獣とそう変わらない様子だった。

温かくて、血管が走っていて、肉はやはり薄赤い。


見た事もない生き物なので申し訳ない気持ちを圧して内臓等は遠慮した。


そもそも


「こいつって毒とか無いんでしょうね?」


「……大丈夫だろ」

一瞬の沈黙の後、魔王が答えた。


「何よ…その間」


金属で出来た盾の内側を鉄板がわりに、魔物の肉を魔力で出した炎で焼きながら今更の話をしだして二人で顔を見合わせる。


「いや、大丈夫だこいつが毒を使うのを見た事は無いし、前に来た冒険者がこいつを食ってたからな」


魔王は見掛けはうさぎに似ているが、味は鳥に近いとそいつらが言っていたと説明した。


冒険者の話をする時、何故か少し懐かしそうに思い出しているのがセリスには不思議だった。


「まぁうさぎも鳥も此処には居ないから俺は知らないがな」


うさぎや鳥が居るのならそれを捕まえて来いと言う話になる。


そもそもこんな過酷な迷宮で普通の動物は生き残れない。

生き残れたとしても高い魔力濃度により変質して、元の姿ではいれないと言う。

変質したそれが世代を繋ぎ、種として確立したモノも魔物と言うのだ。

それよりもセリスには、今の話に聞き捨てなら無い事があった。


「その冒険者はどうしたのよ?」


「死んだ」

魔王はあっけらかんと言ってのけた。


「駄目じゃない」

セリスは怒鳴り、美味しそうな香りを放つ様になった肉から恐々と、身体を離した。


もしかして、果てしなく無駄な事をさせられたのでは、と白い目で魔王を見るが、当の本人は何がなにやら解らぬ様子で首を傾げる。


「人間は何時か死ぬだろ?」


セリスは問答の様なこのやり取りにもう数日晒されていい加減辟易していた。


「そう言う意味じゃないわよ!あーもういいわこれ責任もってあんたが味見しなさいよ」


お腹が空いていて目の前に美味しく焼けたお肉があるのにかぶりつけない苛立ち紛れにそう提案してみる。


「味見?」


「毒見とも言うわね」


しれっとセリスが言うので、魔王はとても嫌そうに顔をしかめる。


「無いとは思うがもしも毒が有ったらどうする気だよ?」


「喜ぶわ、むしろ餓死しても良いからあんたが一口で死ぬような毒が有ればいい」


セリスは肉を摘まみ上げると魔王の口許に突き付けた。


「ほら食べなさい」


「ちょっやめろ」


さあっと迫り来る肉に魔王は困惑した様に身体を退いた。

魔王があからさまに嫌がるのにセリスは少し愉しくなり身を乗り出す。


「食べられないの?やっぱり毒?」


「チッ」


挑発する様にセリスが笑うと、苦々しい舌打ちが聞こえて肉を持つ手が掴まれる。

二人の間にはパチパチと音を立てる炎が燃えていた。


「…ぁ」


料理してイチャイチャしてるだけですな

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