ついにこのときが来たのだ。
ついにこのときが来たのだ。
俺は長いこと宿屋ではたらいた。毎日料理を作り、それを下品に食べていく野郎どもの態度にも笑顔で耐えた。働き詰めの毎日でも欠かさず武術の訓練を怠らず、魔術について独学した。
そうして今、俺には決して少なくない金をもち、そこらの冒険者に劣らない実力も身に着けた。
これからは護衛を雇ってダンジョンにもぐろう。そして隠された財宝を見つけ今までバカにしてきた野郎どもに最高の仕返しをしてやろう。
「おい、お前」
目の前のひょろっとした冒険者がびくっとした。
「な、なんですか、いきなり」
「今日からお前は俺の護衛だ、いいな」
今までの鬱憤を晴らすべく、あえて言葉遣いを荒くする。
「え、い、いつまでですか」
「『愚者の穴』の財宝を見つけるまでだ」
ひょろっとした冒険者は少し考え、そして
「...わかりました。引き受けます。」と言った。
それから俺にとって理想的な生活が始まった。
ダンジョンに潜ってはひょろひょろ野郎に戦わせて、モンスターが落としたゴールドは俺が得る。それからというものの毎日ダンジョンに入った。なんて素晴らしい日々なんだろう。
ひょろひょろ野郎も何百回も戦ったからだろうか、以前よりも体つきがよくなり、何より強くなった。
重い盾を軽々と使い、右手に持つ剣は幾千ものモンスターたちの血を吸った。
俺は次第に戦わなくても済むようになった。
パーティーはひょろひょろ野郎と俺の二人だが、その方が行動も早い。
ついに誰もたどり着いたことのないと言われる「愚者のあな」の最深部にたどり着いた。
そこには伝説通り、黄金の財宝が眠っていた。
俺とひょろひょろ野郎は声を挙げて喜んだ。
「やったぞ!」
「やりましたね!」
「やっとこの財宝を手にすることができる...今までありがとな、ひょろひょろ野郎」
ひょろひょろ野郎は口角を挙げた。そして今まで一度も聞いたことのない高笑いをした。
そしてそのまま剣を持った手を挙げて、目と剣で俺の方をにらみつける。
「やっとだ。ついにこのときが来たのだ。この財宝を手にする日が。
なんせ、契約は『愚者の穴』の財宝を見つけるまで、ですもんね」




