前置きと外食の話
僕は運がいい。くじをやると1等以外出たことないし選択肢問題を適当に書いても全てあたっている。たまたま拾った宝くじが1等でその上キャリーオーバーを起こしていて合計10億が当たったこともある。そのため我が家は金持ちである。今は一人暮らしだが。もう嫌になるほど運がいい。ある日を境に急に運が良くなったのだ。運がよすきて大変である。そんな時僕の元に都合のいい神様が現れた。その神様こそがボンビちゃんである。ボンビちゃんはその名前の通り貧乏神なのである。しかもボンビちゃんは超優秀なのである。今まで取り付いた人間は1年も持たなかったらしい。そんなこと言われたら僕も.....
「前置き長ない?」
ボンビちゃんがひょっこり顔を覗かせる。
「まぁ確かに僕は喋り過ぎるところがあるのは認めるけれど今回の前置きに関しては短くまとめた気でいたんだけどな。」
「どこが”短くまとめた気でいた"じゃよ。あの調子だと後400文字はいっとたろ。」
「いってたけど、足したところで大した長さじゃないだろ。」
「いやいや、長いしつまんないしグダグダだしで見るに耐えないからやめてくれんか?」
「流石に言い過ぎだろ...」
辛辣なことを言われたのでもう前置きはやめよう。
もうやらないぞ。二度とやらないからな。後悔しても遅いからな。
「そんなことより幸多よ今日は出掛けんで良いのか?」
「ん?なんでそんなこと聞くんだよ。」
「いやなんかさ外に出てる方が幸多に不運なこと起こさせやすいかなーって思ってさ。」
「そうだなー買い物には昨日行ったし外に出る用事はないんだよな.........ってイタいイタいイタい!」
ボンビちゃんがその華奢な腕からは想像もつかない程の馬鹿力で頬をつねってきた。
「行くって言え!」
「ふぁかったから離して」
「やった!!」
ボンビちゃんはぴょんひょこはねながら喜んでいる。コイツ絶対ろくな死に方しないだろ。ん?神様って死ぬのか?ま、いっか。そうしょうもない事を思いつつ僕は出かける準備をした。
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「幸多よ今から何処へ向かうのだ?」
「何処ってお前に強制的に外出されただけだからな計画なんて何も無いぞ。」
「なんじゃそれ。そんなんだから19になっても彼女の一人も出来んのじゃ。」
「関係ないだろ!!」
「幸多よお前は運がいいのに彼女は出来んな。」
「運じゃ彼女は出来ないんだよ。」
「そんなことないとおもうぞ。たまたま告った相手がたまたま自分の事を好きだったーとかさ...なんかごめん。」
「いやいいんだもういいんだ。」
ボンビちゃんはたまに僕の黒歴史を全力で掘り下げる時がある。あの頃はまだ運が良くなかったんだよ。というかボンビちゃんに謝らせるほどの顔してたのか...かなり恥ずかしいな。
「そうじゃ!あそこにしよう!」
ボンビちゃんの指さした先にはハンバーガー屋があった。ちょうど昼過ぎぐらいでお昼食べてなかったので「そうだな」とさっき受けたダメージをなるべく感じさせない様に最低限度の返しをして店に入った。
「2階のテラス席に行くぞ!」
そう言ってボンビちゃんはふかふか2階に上がっていった。そういえば言い忘れていたボンビちゃんは浮いている。その上若干透けている。あと、僕以外の人間には見えないし聞こえないし触れれない。そもそも見えたら大変である。何故かってそれは、ボンビちゃんが可愛い過ぎるのだ。グレーのベリーショートにくりくりっとした大きい黒目、整った顔立ち見た目は完璧美少女なのだ。ちなみに身長は155ぐらい。そんなのが見えていたらすぐ撮影会がはじまってしまいそうである。後男性陣の姿勢が悪くなる。前かがみになる。僕も初めて会ったときはそうだった.....
「また長々と説明事か?」
ボンビちゃんが天井から顔だけを出して話しかけてくる。壁などはすり抜けることが出来るらしい。怖いからやめて欲しい。僕は軽く頷きハンバーガーのセットを注文した後それを持って2階のテラス席に向かった。
「よう食べるな。」
「いやセット1つは普通だろ。」
「そんなもんなのか。」
「そんなもんだよ。」
「そうだ!!幸多に見せたいものがあるんじゃよ。」
そう言ってボンビちゃんはポケットから宇宙人が持ってそうな銃を取り出した。
「なんだそれ?」
「不幸増幅銃だ!!」
「撃った人の運を減らすみたいなやつ?」
「大雑把に言えばな。これを使えばいくら幸多でも...」
「やめろよ。」
「なんでじゃ!.....そうか!負けを認めるのだな!流石の幸多でもこの銃には勝てんと認めるのか!!」
「違う。お前なこの前の不幸増幅球で大事故起こしたろ。またあんな事件起こす気か。」
そうなのだ。1回ボンビちゃんは不幸増幅球という物を使って大事故を起こしたことがある。あれは大変だった。話す機会があればじっくり話したい程に印象に残った出来事である。あの時は警察や自衛隊も出動する羽目になっていたのた。繰り返す訳にはいかない。
「だけど...ちょっとだけ.....試し打ちを.......」
「絶対駄目」
僕は黙々とハンバーガーを食べた。その横でボンビちゃんは不幸なんちゃら銃を撫で撫でしながら「今回は大丈夫なのに...」とかブツブツ言っていた。
「ほらブツブツ言ってないで帰るぞ。」
「う、うん。」
「何笑ってんだよ。」
「笑ってないぞ。」
その時は気づかなかったが1階に降りて店から出ようとしてる時にふと定員からの冷めた視線に気づいた。
そうだ、よくよく考えると僕以外にはボンビちゃんは見えないし聞こえない。ということは僕は店にいる間はたから見たら虚空に話しかけ続けていたイタい人だったのだ。すっとボンビちゃんの方を見てみると小刻みに震えながら笑いを堪えていた。
「もしかしてこれを狙ってたのか。」
「ぷっ...ふふふ」
もうこいつとは出かけないことにしようと心に決めた瞬間だった。